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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第7章 大陸暦1153年
116/160

116 入国

 俺は、一応エリカに聞いてみた。

「こいつらを許す余地は無いってことかな?」

「そうね。今まで奴隷商に売り払った女性達を全員買い戻して、その子達がこいつらを許すと言えば許してあげても良いわ。どう考えても無理でしょうけど」

 男達は絶望の表情になっている。いっそ殺してくれって思ってるのかもしれない。ちなみに、治癒魔法では失った器官は復元できないよ。したがって、これから行う刑罰は不可逆的だ。

「あ、二択のどちらかを選択しなかった者については、両方を実行するからね。(すみ)やかに選択しなさい」

 そして、男達全員が陰茎切断を選択した。睾丸潰しって、下手したらショック死するおそれがあるからね。でも、性欲はあるのに解消手段が無いってのも、将来的には地獄だと思うんだけどな。まぁ、被害者のことを考えると、当然受けるべき苦しみだろう。

 で、まじで(いや)だったのが、それを俺がやらなければならなかったことだ。

「あんたは毒で殺されそうになったのよ。当然の権利よね」

 うう、確かにそうなんですが、かなり精神的にクルものがあります。


 俺は男達の下半身を露出させ、陰茎の根元を紐で縛ってまずは血行を止めた。しばらくしてから、魔力付与した手刀で縛ったところの近くを一刀両断した。せめて、一瞬で切り落としてやるのが慈悲ってものだ。そんなに痛くは無かったと思うよ。玉潰しよりはずっと楽だよね。

 あとで洗い流せるように甲板でこの作業を行ったんだけど、アリスとリズには離れていてもらった。エリカだけは俺が手を抜かないように監視していたよ。怖いよ、エリカさん。

 下半身を血に染めて(うずくま)る男達にエリカが言った。

「この程度で済んでありがたく思いなさい。まったくマークもお優しいことね」

 船長の思考を読み取ったのはエリカだけだから、こいつらの悪行(あくぎょう)を知るのもエリカだけだ。そのエリカがここまで苛烈(かれつ)な態度を見せるのは、それだけのことをこいつらがやってきたってことだろう。まさに自業自得だ。

 余談だけど、切り取ったモノは海に放り投げた。きっと、魚の餌になるだろう。


「さて、お前ら。船を操って俺達を目的地まで運んでくれるかな?あー、別に反抗しても良いけど、次は玉を潰すぞ」

 まだ痛みで動けなくなるということはないはずだ。熱さとジンジンとした鈍痛くらいだろう。明日になればズキズキと痛みだすかもしれないけどね。

 男達はのろのろと動き出した。もう縛っていたロープもほどいてあげている。仕返しを考えるなら今度こそ容赦しないけど、どうだろうね?


 結局、おとなしく男達は働き、船は目的地に到着した。

 断崖絶壁の中に洞窟状になっている個所があり、そこへ船を進ませていった。奥にある船溜まりに停泊した船から縄梯子(なわばしご)を降ろし、それを使って俺達は下船した。ここから階段で、崖の上へと続いているらしい。

「じゃあな。これからは真面目(まじめ)に働けよ」

 俺の言葉にうらめしそうな視線を向けられたけど、俺のせいじゃないぞ。恨むなら自分自身を恨め。なお、密入国という犯罪に対して『真面目に働く』ってのは皮肉が()いているような気もするけど、まぁ良いか。


 俺達四人は階段を昇り、開けた空間に出た。片側は海で崖になっており、反対側は木々が生い茂って林のようになっている。

 奴隷商やその護衛が待ち構えている可能性も考慮していたけど、そこには誰もいなかった。

「さて、ここからどう進むのかはさっき船長に教わったけど、本当のことをしゃべったのかな?」

「大丈夫よ。この林を抜けると小さな村があるわ。そこで大きな街への道筋を聞きましょう」

 エリカが言うのなら確かだな。俺達は警戒態勢を維持しながらも、ちょっとしたピクニック気分で歩き出した。もっとも、俺だけは吐きそうなんだけど、毒入りの朝食を食べてないので吐くものが無い。

「お腹減ったね。マーク兄ちゃん、何か食べようよ」

 リズが俺に提案したけど、兄ちゃんは食べると吐くかもしれないよ。なお、食べ物はマジックバッグに大量に確保されているから、いつでも食べられるんだけどね。

「そうね。私は食べないけど、アリスとリズは食べても良いわよ。マーク、あんたも食欲無いでしょ?」

 おお、エリカさんも吐きそうなんですね。そりゃ、去勢作業のあとで食欲があったら、そいつはサイコパスだよな。

「俺も今は何も食べられないよ。特に、ソーセージなんかは見たくもない…」

 連想しちゃうからね。


 で、リズだけが歩きながらパンをもぐもぐ食べているという状況だ。まぁ、育ち盛りだしな。

 しばらく歩くと、いくつかの家らしきものが見えてきた。村人が良い人だと良いんだけど。


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