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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第7章 大陸暦1153年
114/160

114 密入国準備

 ゾーリン商会への最初の訪問から三週間後、宿のほうへ商会から連絡が来た。身分証が完成し、100万モンも用意できたとのことだった。

 それまでは首都を観光したり、宿の裏庭で鍛錬を積むだけで、特筆すべきことはほとんど無かった。あ、リズへの剣の修行は順調で、一通りの型は伝授し終えたよ。てか、彼女は()りをやっていただけあって、目と体のキレがめちゃくちゃ良い。半年も鍛錬すれば俺を超える剣士になるかもしれないな。師は嬉しいぞよ。


 それはともかく、俺だけがゾーリン商会を訪れて、今後の行動指針を受け取ることになった。

「いらっしゃいませ。お久しぶりでございます。どうぞこちらへ」

 以前にも通された応接室へ案内され、さっそく本題に入った。

「この都を南下して海側に出ると小さな漁村があります。そこから漁船で例の国へ入国することになりますので、事前に移動していただきたくお願い申し上げます」

「ここからの案内人は付くのでしょうか?」

「はい、我が商会の裏仕事担当が一人付き添いまして、皆様をご案内致します」

 紹介された担当者は裏の担当という割には、全く記憶に残らないような平凡な容姿の若い男性だった。いや、だからこそ良いのか。

「皆様を船へ乗せるまでが私の担当でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。で、出発はいつ頃になりますか?こちらとしてはすぐにでも出発できますが…」

 俺の質問に対して、三日後の出発だと返答された。その漁村までは50kmくらい離れているそうなので、馬ならその日のうちに着けるそうだ。


 俺は宿へ戻る前に、女神への報告を行うべく教会へ向かった。アルトンヴィッヒ共和国に入ったあとは、もはや女神に連絡できなくなるからね。

『はぁー、しばしのお別れですね。しばらくの間、アニメや漫画の話ができなくなると思うと悲しいです』

 …って、そっちかい!

『あ、そうそう、あなたのことですからまず抜かりはないでしょうけど、船上で出される飲食物には手を付けないように』

 ああ、そういう手合いですか…。面倒くさいなぁ。

 きっと、睡眠薬やしびれ薬で動けなくしてから女性達に乱暴するような破落戸(ごろつき)どもが操船してるんだろう。どうしてくれようか?

『今後の犠牲者を出さないためにも去勢しておくことをお(すす)めします。エリカとアリスなら嬉々としてやってくれますよ』

 (こわ)っ!エリカはともかく、アリスは嫌がるでしょう?

『ふっふっふ、彼女は自分の貞操をあなたのために守っていますからね。それを奪おうとする者には容赦ありませんよ。もちろん、エリカもね』

 ええ?また重い情報を…。

 まぁ、俺達が動けなくならなければ、そういうことを仕掛けてはこないでしょう?そのときになって考えますよ。そいつらの理性を信じましょう。いや、俺は信じてますよ、会ったことないけど。


『ちなみに、あなたを狙ってくる者もいますから気を付けて。キャー、BLよ、BLだわ』

 じょ、冗談ですよね?ね?ね?…い、(いや)過ぎる。そんな船、乗りたくねぇ!

『まぁ、冗談なんですけどね。でも、これで分かったでしょう?女性にとって彼らがどんなに有害なのか…』

 十分に分かりましたよ。さっくりと玉を(つぶ)しておきましょう。俺はやりたくないけど…。

 おそらく、女神がこれほど言うってことは、すでに被害者が何人も発生しているってことだろうな。まだ会ったこともない彼らだけど、少しだけ(あわ)れみを感じるよ。まぁ、自業自得なんだけど…。


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