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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第1章 大陸暦1146年
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011 エリカ視点①

 私はエリカ・アトキンス。今日は私の10歳の誕生日です。

 今はアトキンス子爵家当主であるお父様に連れられて教会に来ています。フルルーフ王国の国民は全員、10歳になったら【恩恵(ギフト)】を(さず)かることになっていて、それは教会で行われるからです。

 近所に住む幼馴染のマークが一足先に10歳になって、よく分からない生産系の【恩恵(ギフト)】を貰ったそうです。なので、できれば私も生産系の【恩恵(ギフト)】が欲しいなぁと思っていました。将来、同じ学校に通えるからです。

 【恩恵(ギフト)】の()に入ってからシスターの指示に従って、金属板に右の手の平を押し当てて女神様に祈りました。


 少ししてからシスターが言いました。

「あなたの【恩恵(ギフト)】は【死霊魔法】です。魔法系の中では希少で、特に女性では珍しいですが、良い【恩恵(ギフト)】ですよ。おめでとうございます」

 シスターは祝福してくれたけど、私はショックでした。魔法系であっても四大属性魔法(火・水・風・土)や治癒魔法なら良いのですが、よりにもよって【死霊魔法】とは…。

「エリカ、どうだったかね?」

 お父様から聞かれたので正直に答えました。

「はい、【死霊魔法】だそうです」

 突然、にこやかな顔から苦虫を噛み潰したような顔に変わったお父様が言いました。

「なに?死霊魔法だと?それを家族以外の人間に言うんじゃないぞ。全く気色悪い!」

 私自身もショックを受けているのに、実の父親からそんな言葉をかけられるとは思ってもみませんでした。さらに屋敷に帰ってからもお母様やお兄様、お姉様達から気味悪がられました。

 極めつけはメイド達です。一人を除いてほぼ全員が私の顔色を(うかが)っておどおどしています。

 次第に自分の部屋から出るのも億劫(おっくう)になりました。家族は気持ち悪いものを見るように、メイド達は恐ろしいものを見るように私のことを見るのです。

 食堂で皆と一緒に食事をとることもできなくなり、さらに食欲も落ちてしまいました。

 マークが来たと唯一の味方であるメイドのマーサから聞いたときも『会いたくない』と伝言しました。マークからも家族と同じような態度をとられたら、きっと私の心は壊れてしまいます。


 そんなときです。マークが部屋の外から声をかけてきたのは。

「エリカ、マークだよ。部屋に入れて欲しいんだけど良いかな?」

 正直、会わずにこのまま帰ってほしかった。大好きなマークに嫌われるくらいなら、このまま部屋に引きこもっているほうが良いと思ったのです。

 でもマークは諦めませんでした。

「ねぇ何があったのか、聞かせてくれないか?俺達友達だろ?」

「あんただけには話せない。聞けば私のことを嫌いになるもの」

「そんなことがあるものか。何があっても嫌いになることはないと女神様に誓うよ。だから部屋に入れて欲しい」

 本当に嫌われないでしょうか?自信がありません。でも『女神様に誓う』とまで言ってくれたマークを信じてみたい気持ちもあり、私は恐る恐るドアを開けました。


 マークが微笑んで挨拶してきました。

「久しぶりだね。元気そうで安心したよ」

 でも、その微笑みがお父様のようにすぐに変貌(へんぼう)するかもしれない。いえ、そこまで露骨じゃなくても、目の奥に恐れが見えるかもしれない。

「エリカの【恩恵(ギフト)】に何か問題があったのかい?できれば俺に教えてくれないか?」

 私はもうどうにでもなれって感じで、正直に【死霊魔法】を頂いたことを打ち明けました。もちろん、マークがどのような反応をするのか…、内心ビクビクしていたのです。

 ところが…。

「は?なーんだ、かっこ良いじゃん。そうかネクロマンサーか、良いなー。俺の【車輪生成】と交換してもらいたいくらいだ」

 え?かっこいい?気味が悪くないの?あまりにも予想外の反応に私のほうが面食らってしまいました。しかも続けて言われた言葉に心底救われたと思ったのです。

「女神様が役に立たない【恩恵(ギフト)】を与えることは無いよ。ん?というか、俺の【恩恵(ギフト)】と相性が良いかもしれないな」

 マークに嫌われなかった…そのことが私の生きる活力となりました。本人に対して面と向かっては絶対に言えないけど、私は心の中で叫びました。マーク、大好き!


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