104 同行決定
宿屋に戻った俺はエリカの部屋とアリスの部屋を順に訪ねたけど、ノックには何の応答も無かった。フロントの人に聞いたら、すでにここには戻ってきているって言ってたけどな。
ああ、お風呂かもしれない。
この宿の大浴場で女性同士、キャッキャウフフしているのかも。
俺がしばらく自室で待っていると、部屋の外からドアがノックされた。
「マーク、帰ってる?」
ドアを開けるとエリカとアリス、リズの三人が立っていた。俺は部屋の中に招き入れ、応接セットのほうを勧めた。さすがに高い宿屋だけあって、部屋の中にはベッドのほかに応接セットもあるのだ。
てか、やはりお風呂だったのか、皆からほんのり良い匂いが漂ってきているし、なんだかちょっと色っぽくなっている。
そして、驚いたのがリズだ。女神は可愛いと言ってたけど、少年のような格好をしていたときにはそうでもなかった。ところが、風呂上りの彼女は確かに可愛かったよ。いわゆる磨けば光るってやつかもしれない。
「マーク兄ちゃん、あまりじろじろ見ないで欲しいんだけど」
おっと、少し凝視しすぎたか。失敬失敬。
「変態ね」
「最低です」
えええ?最近、エリカとアリスの俺への評価が酷い。焦って言い訳をする俺を見て、リズが面白そうに笑い始めた。うん、喜んでもらえたようでなによりです。
どうもこのところの俺は二枚目じゃなく、三枚目キャラになっている気がするんだけど、なぜだろう?残念イケメンってやつかな?…って自分でイケメン言うなや(ノリツッコミ)。
「えっと、俺は小さい女の子が好きな変態じゃないからね。とにかく、これからのことを話し合いたいんだけど…」
俺が議題として出したのは、リズの今後についてだ。
「え?当然、旅に連れて行くわよ」
「そうですよ、マーク。そのための買い物もしてきたよ」
あれ?すでに旅に連れていくのは決定事項みたいになってるけど、俺の意見は?
「リズの鑑定はすごく便利なんだよ。観光客だと思って商品の値段を高く吹っ掛けようとした店なんか、すぐに分かっちゃったからね」
アリスの言葉に10歳のときの記憶が甦る。【鑑定】、俺も欲しかったよ。
てか、そんなことよりリズを同行させるかどうかだよ。リズの希望はどうなんだろう?
「リズ自身はどうなんだい?俺達と一緒に旅に出たいかい?言っておくけど危険な旅になるかもしれないよ」
「あの、もし迷惑じゃなかったら、おいら一緒に行きたいな。エリカ姉ちゃんとアリス姉ちゃんは優しくて好きだし、おいらも皆の役に立ってみせるからさ」
俺は腕組みして、少しの時間黙考した。本当に危険なんだけどな…。どうするよ。
「うーん、分かったよ。リズのことは絶対に俺が守るから。その代わり、リズも【鑑定】の能力で俺達を助けてくれよ」
「うん、分かった!」
リズが満面の笑顔で答えたのを見て、ちょっとほっこりした。
「あ、でも次の目的地であるテトレドニア公国へは徒歩移動になるよ。一か月くらい歩き続けることになるけど、大丈夫かな?」
「こう見えて体力はあるんだよ、おいら。絶対に迷惑はかけないから」
ここでエリカが焦りだした。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って、マーク。そんな強行軍、私は無理よ」
「ああ、エリカだけには馬を用意してもらってるよ。アリスには申し訳ないけど、俺と一緒に歩いてもらうことになるんだけど、良いかな?」
「もちろん!マークと並んで歩くよ。リズも一緒に歩こうね」
「うん!アリス姉ちゃん」
エリカが少し寂しそうだけど、馬車が用意できなかったんだから仕方ない。あと、リズ一人くらいなら俺がおぶってあげても良いかな。軽そうだし。




