103 鑑定という恩恵
教会の中がなにやら騒がしくなってきた。この雰囲気は覚えがあるな。ソフィアちゃんが【マジックバッグ生成】の【恩恵】を貰ったときと似ている。
リズって子の【恩恵】が希少なものだったのに違いない。
シスターさんと一緒に戻ってきたリズは、ちょっと戸惑っているように見える。その反面、シスターさんは大興奮だ。
「マーク兄ちゃん、おいらの【恩恵】は【鑑定】だってさ」
な、何ぃぃぃ!初めて【鑑定】持ちに出会ったよ。【鑑定】って超希少な【恩恵】で、商人として将来の成功が約束されたも同然だ。そりゃモノの価値がすぐに分かれば、良い物を安く買って高く売ることができるからね。特に骨董品の世界では…。
「魔法とか武術の【恩恵】が良かったんだけどな」
「リズ、【鑑定】はすごいんだぞ。鑑定スキルだけで成り上がっていく異世界モノも多いしな」
「スキル?異世界?ちょっと何言ってるか分かんないよ」
「おっと、ごめんごめん。ちょっと興奮した。とにかく、良い【恩恵】をいただいたね。俺も嬉しいよ」
この国にも恩恵管理局みたいな部署があるのだろうか?シスターさんに聞いてみたら、そういう部署はあるけど、【鑑定】は報告義務のある【恩恵】では無いらしい。うーん、この国の王宮に保護してもらえば俺達も安心できたんだけどな。
「マーク、それでこれからどうするの?私達は明日にはここを出発するのよ。でも、この子をこのまま放ってはおけないわ」
「そうですよ、マーク。最後まで面倒を見ましょう」
エリカとアリスからそう言われたけど、本当にどうするべきか?
「俺は上司にちょっと相談してみるよ。君達はリズを連れて先に宿屋へ戻っていてくれないか。あ、途中でリズの服とか靴を買ってあげると良いかもね」
うん、女神に聞いてみよう。何となくリズの【鑑定】は女神の意思のような気もするし…。
「分かったわ。さぁリズ、私達と一緒に行きましょう。私はエリカ、こっちはアリスだからね」
「う、うん。じゃあね、マーク兄ちゃん」
「ああ、また後でな」
俺はこのまま大聖堂へと向かい、昨日と同じように祈りの体勢に入った。
『私の恣意的なものではありませんよ』
いきなり、女神の第一声がこれだよ。え?作為は無かったってこと?
『ええ、彼女の【恩恵】は彼女自身が引き当てたものです。私は見ていただけ』
そうですか。…って彼女?やはり、リズは女の子だったんですか?
『当たり前でしょ。あんな可愛い男の子がいますか。いや、いるかもしれないけど…ジュルリ…』
なんかダメな性癖が暴露されそうな感じになってますけど、やめてくださいね。対応に困るので…。
『あなたが聞きたいのは、リズの今後でしょう?道は二つあります。一つはこの国の孤児院に保護してもらう。【鑑定】持ちと分かったからには、犯罪者の子供だろうが問題なく保護してもらえるでしょう』
もう一つの道は?
『あなたがたと一緒に旅に出ることですね。リズが同行することによってあなたの生存確率は変化しませんが、【鑑定】の【恩恵】はとても便利ですよ。そう「なろう」系で成り上がれるくらい』
…って、俺と同じようなことを言ってるよ、この人。あ、人じゃなくて神だった。
『要するに、あなたの好きなようにしなさい…ってことですね』
うーん、分かりました。エリカやアリス、それにリズ本人と話し合って決めたいと思います。
『ふふ、それで良いですよ。そう言えばショタの話題が出ましたけど、私の一推しはエル君、エ○ネスティ・エチェバ○リア(一部、伏字)ですね。あなたの推しは?』
いや、別にショタコンの話題なんか出てませんし、なぜ俺の一推しを聞く?男の子の推しなんていませんから。まぁエル君が可愛いのは認めますが…。
『くぅー、やはりあなたとは話が合いますね。あとはですね…』
…って感じで、またもや長い祈り(雑談)の時間になってしまった俺は、今日も多額の寄進を行わざるを得なくなった。まぁ、リズの【鑑定】のご祝儀と思えば良いか。




