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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第7章 大陸暦1153年
102/160

102 リズ視点

 おいらが6歳のときに優しかった母ちゃんが死んだ。流行(はや)(やまい)だった。

 父ちゃんはそれから落ち込んで仕事も手に付かなくなって、結局仕事を首になった。生きるために泥棒をするようになって、でもほどなくして警察に捕まった。

 牢屋に入れられた父ちゃんは冬の寒さで体調を崩して、牢屋の中で死んだそうだ。おいらが8歳のときの話だ。

 親戚もいなかったので、孤児院に送られたんだけど、引き取りを断られた。犯罪者の子供は引き取れないってさ。

 結局、たらい回しされた挙句(あげく)、最終的に()りの親方のもとで生活することになった。泥棒だった父ちゃんの子供だから、おいらにふさわしい仕事だな。

 親方から掏りの技能を仕込まれて、でも稼ぎが悪いと殴られるのはしょっちゅうだった。生きていられるのは親方のおかげだから感謝はしているけど、それでもできれば掏りはしたくない。人様のお金を盗むのは悪いことだと分かっているんだ。でも生きていくにはこれしか無いんだよ。将来はきっと警察に捕まって、父ちゃんみたいに野垂れ死ぬことになるんだろうな。


 そんなある日、裕福そうな身なりをした男の人と女の人二人が裏通りを歩いてきた。一番とろくさそうな女の人に狙いを定めて、ぶつかりざまに財布を()った。大成功だった。

 おいらは中身も確認せずに親方のもとへ意気揚々と戦果報告に戻った。まさか2千エンぽっちしか入っていないなんて…。

 親方から無能呼ばわりされたけど、確かに裕福そうだったんだ。言い訳しようとしたおいらは親方から平手打ちをくらって、倒れた拍子に椅子も一緒に倒れたため大きな音がしたと思う。

 突然、ドアが開いて女の人が入ってきた。後ろからは男の人ともう一人の女の人が続けて入ってきたけど、おいらが財布を()った人だった。つけられてたのかな?

 親方がナイフを取り出して突き付けていたけど、すぐに取り落とした。驚いたことに親方の右腕がねじれていたよ。魔法かな?

 親方の側近の用心棒の男(いやな奴)が棒を振り上げて女の人に振り下ろそうとしてたので、思わず叫んでしまった。

「姉ちゃん、後ろ!」

 そこで信じられないことが起こった。一番とろそうだと思った女の人が消えたと思ったら、用心棒の前に現れてパンチを繰り出した。でも体格が違い過ぎて()かないだろうな。…って思ったら、なんと用心棒が壁際まで吹っ飛んで気絶した。この目で見たことが信じられないよ。


 そのあと警察の人が来たので、てっきり牢屋に入れられるものだと思っていたら、なぜか分からないけど釈放された。男の人(マーク兄ちゃんというらしい)がおいらの身元保証人(?)になってくれたのだ。

 さらに教会で【恩恵(ギフト)】まで貰えることになったのには驚いた。あまりの驚きに言われるがままになっていたんだけど、マーク兄ちゃんに名前を聞かれたので答えたら、なんだか微妙な顔をされた。子供心にもなんだか失礼なことを考えているような気配は感じたんだけど、きっと気のせいだと思う。だって、見ず知らずの()りの子供にこんなに親切にしてくれたんだもん。きっと良い人に違いないよ。


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