101 リズ
悲鳴と大きな物音に驚いてやってきた野次馬の一人にお願いして、警察を呼んできてもらった。
警察の取り調べの結果、どうやらこの浮浪者っぽい男はかなり大きな掏りグループの元締めで、巨漢は用心棒だったらしい。
グループに所属する掏りはこの男の子以外は全員大人で、芋づる式に逮捕できると担当警察官が喜んでいたよ。問題はこの子供の扱いなんだけど、未成年だし、無理やり掏りをやらされていたらしいので、身元保証人がいれば釈放しても良いと言われた。
「おいら孤児だから、そんな人いるわけないよ」
俯いてぼそぼそしゃべる子に同情したのか、アリスが申し出た。
「マークさえ良ければ、私がこの子の身元を保証しても良いよ」
「ちょっとアリス、優しさアピールなの?だったら私も立候補するわよ」
いや、エリカさん。そういう意図は無いと思うよ。
「俺がいったん引き受けて、あとはこの国の教会に預けたら良いんじゃないかな?旅に連れて行くわけにもいかないしね」
「そうしていただけると我々としても助かります」
担当警察官も了承してくれた。教会には孤児院があるだろうし、孤児ならそこで引き取ってもらえるに違いない。
俺はしゃがんで男の子と目線を合わせ、話しかけた。
「俺はマークという旅の者だけど、一緒に教会へ行こうか」
「教会には行ったことがあるよ。でもおいらは入れないって言われた」
え?孤児だったら保護してもらえると思うんだけどな。少なくともフルルーフ王国の教会はそうだった。
「犯罪者の子供は引き取れないってさ。おいらの父ちゃん、泥棒して捕まって牢屋の中で死んじゃったんだ」
「お母ちゃんはどうした?」
「おいらが小さいときに病気で死んじゃった」
うーん、どうしたものか。俺の『女神の使徒』権限でごり押しすることもできなくはないだろうけど、あまり目立ちたくないしな。
エリカが男の子に問いかけた。
「ねえ、僕。今は何歳なの?」
「この前、10歳になったよ」
「誕生日に教会で【恩恵】を貰わなかったの?」
「うん、行ってない」
これを聞いたエリカが俺に言った。
「ねえ、マーク。この子の貰う【恩恵】が有用でさえあれば、一人でも生きていけるんじゃないかしら」
「ああ、確かに。孤児院に入るのは無理としても、教会の【恩恵】の間には行ってみるべきだな」
こうして俺達四人は教会へと向かった。俺が昨日、大聖堂で祈って(正確に言えば、女神と雑談して)かなりの寄進を行ったので、神父さんやシスターさんが憶えていてくれた。
「こんにちは。また来ました」
「おや、旅人さん。二日連続でお祈りですか?なんという信心の篤さでしょう」
「いえいえ、今日はこの子の【恩恵】をいただきたくて…。10歳になったばかりなんですよ」
「そうですか。それでは君、こちらへどうぞ」
「良い【恩恵】を貰えることを祈っているよ。あれ?そう言えば君の名前を聞いてなかったな」
「おいら、リズだよ。マーク兄ちゃん、行ってくるね」
なんだか女の子みたいな名前だな。ん?いや、まさかな。




