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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第7章 大陸暦1153年
101/160

101 リズ

 悲鳴と大きな物音に驚いてやってきた野次馬の一人にお願いして、警察を呼んできてもらった。

 警察の取り調べの結果、どうやらこの浮浪者っぽい男はかなり大きな()りグループの元締めで、巨漢は用心棒だったらしい。

 グループに所属する()りはこの男の子以外は全員大人で、芋づる式に逮捕できると担当警察官が喜んでいたよ。問題はこの子供の扱いなんだけど、未成年だし、無理やり()りをやらされていたらしいので、身元保証人がいれば釈放しても良いと言われた。

「おいら孤児だから、そんな人いるわけないよ」

 (うつむ)いてぼそぼそしゃべる子に同情したのか、アリスが申し出た。

「マークさえ良ければ、私がこの子の身元を保証しても良いよ」

「ちょっとアリス、優しさアピールなの?だったら私も立候補するわよ」

 いや、エリカさん。そういう意図は無いと思うよ。

「俺がいったん引き受けて、あとはこの国の教会に預けたら良いんじゃないかな?旅に連れて行くわけにもいかないしね」

「そうしていただけると我々としても助かります」

 担当警察官も了承してくれた。教会には孤児院があるだろうし、孤児ならそこで引き取ってもらえるに違いない。


 俺はしゃがんで男の子と目線を合わせ、話しかけた。

「俺はマークという旅の者だけど、一緒に教会へ行こうか」

「教会には行ったことがあるよ。でもおいらは入れないって言われた」

 え?孤児だったら保護してもらえると思うんだけどな。少なくともフルルーフ王国の教会はそうだった。

「犯罪者の子供は引き取れないってさ。おいらの父ちゃん、泥棒して捕まって牢屋の中で死んじゃったんだ」

「お母ちゃんはどうした?」

「おいらが小さいときに病気で死んじゃった」

 うーん、どうしたものか。俺の『女神の使徒』権限でごり押しすることもできなくはないだろうけど、あまり目立ちたくないしな。


 エリカが男の子に問いかけた。

「ねえ、僕。今は何歳なの?」

「この前、10歳になったよ」

「誕生日に教会で【恩恵(ギフト)】を貰わなかったの?」

「うん、行ってない」

 これを聞いたエリカが俺に言った。

「ねえ、マーク。この子の貰う【恩恵(ギフト)】が有用でさえあれば、一人でも生きていけるんじゃないかしら」

「ああ、確かに。孤児院に入るのは無理としても、教会の【恩恵(ギフト)】の()には行ってみるべきだな」


 こうして俺達四人は教会へと向かった。俺が昨日、大聖堂で祈って(正確に言えば、女神と雑談して)かなりの寄進を行ったので、神父さんやシスターさんが憶えていてくれた。

「こんにちは。また来ました」

「おや、旅人さん。二日連続でお祈りですか?なんという信心の(あつ)さでしょう」

「いえいえ、今日はこの子の【恩恵(ギフト)】をいただきたくて…。10歳になったばかりなんですよ」

「そうですか。それでは君、こちらへどうぞ」

「良い【恩恵(ギフト)】を貰えることを祈っているよ。あれ?そう言えば君の名前を聞いてなかったな」

「おいら、リズだよ。マーク兄ちゃん、行ってくるね」

 なんだか女の子みたいな名前だな。ん?いや、まさかな。


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