第4話 アルトレーザ?
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■アルトレーザ?視点
「ふう、ご馳走さまでした」
満足そうな表情で、椅子にもたれかかるジルベルト。
だが。
「ジルベルト、行儀が悪い」
ボクはピシャリ、と言い放つと、ジルベルトは慌てて姿勢を正した。
うん、それでいい……んだけど、彼はこんなボクを鬱陶しいと思ったりはしていないだろうか……。
うう……ボクがもう少し上手く話せればいいんだけどなあ……。
「さ、さあて、それでは部屋に戻りますね」
気まずさからか、ジルベルトがそそくさと席を立つけど……あれ? ボクをジッと見て、どうしたんだろう……。
「そ、そのー……アルトレーザ様は部屋に戻られないのですか?」
「え、ボ、ボク!?」
意外だった。
面倒くさいことばかり言って、絶対にジルベルトに煙たがられていると思っていたのに。
でも、ジルベルトがそう言ってくれたことにボクは嬉しくて。
だけど。
「……いや、イザベルと少し話があるから、キミは先に部屋に戻っていてくれ」
「あ、そ、そうですか……」
渋々そう告げると、ジルベルトは少しだけ寂しそうな表情を見せた。
そ、そんなにボクと一緒に部屋に戻りたかったのかな……。
「で、では、失礼します」
そう言うと、ジルベルトは食堂を出て自分の部屋に戻って行った。
さて。
「……イザベル、分かってるよね……?」
「ええと……なんでしょうか、“お嬢様”?」
「もう! 『なんでしょうか』じゃないよ! どうしてボクと彼が同じ部屋なのさ!」
そう! 部屋はたくさん余っているのに、なんでわざわざジルベルトと同室にしたんだよ!
これじゃ、ゆっくり着替えもできないよ!
「えー、ですが“お嬢様”がジルベルト様と同じ寮で住みたいと仰ったので」
「言った! 確かに言ったよ!? だけど“同じ部屋で”だなんて、一言も言ってないよね!?」
ボクはイザベルに詰め寄るけど、彼女は素知らぬ顔でテキパキとテーブルの後片づけをする。
チクショウ、ボクは雇い主なんだぞ……!
「まあまあ、よく考えてみてください。“お嬢様”は今日この日から、“あの”ジルベルト様と同じ屋根の下で暮らすんですよ? しかも、超至近距離で」
「え、い、いや、そそそうなんだけどね……」
ああもう! そうだよ! ボクはジルベルトと一緒に生活するんだ!
そ、そう考えると……え、えへへ、嬉しいんだけど……うん。
「やっぱり恥ずかしい!」
「“お嬢様”!」
僕はすごく恥ずかしい気持ちになって、思わず両手で顔を覆い隠す。
するとイザベルが急に居住まいを正して、真剣な表情で僕を見つめる。
「ですが、この学園での“三年間”……いえ、ひょっとしたらもっと短くなる可能性もございます。であれば、この残り少ない時間、どうかせめて、せめてご自身の幸せを……」
「……分かっているよ」
そう……ボクには時間がない。
この学園にいるのだって……。
「“お嬢様”……」
ボクが幼いころから傍で仕えてくれた、姉のような存在であるイザベルが、心配そうな表情でボクを見つめる。
ああ、いけない。
ちゃんと仮面を被り直さないと。
「ふふ、大丈夫だよ。ちゃんと“スペア”としてやり遂げてみせるから」
「“お嬢様”!」
ボクの言葉に、イザベルが何か言いたそうに僕を呼ぶ。
だけど。
「……そろそろボクも部屋に戻るよ」
「……かしこまりました」
深々と頭を下げるイザベルの前を通り、ボクは食堂を出た。
「ふう……よし!」
ボクは両頬を叩いて気持ちを入れ直すと、ジルベルトがいる部屋へと戻る。
——ガチャリ。
扉を開けて中に入ると。
「ふあああああああああ!?」
「あ、アルトレーザ様、お帰りなさい」
なんで!? なんでジルベルトは上半身裸でいるの!?
「いいいい、一体何をしているんだ!?」
「え? あ、はあ、少々汗をかいてしまったので、着替えを……」
「そそそそ、そう! そうか! うん!?」
おおお、同じ部屋に住むんだから、ここ、こんなこと日常茶飯事だよね? ね!?
と、とにかく!
「こ、これからはこのボクと同居するんだ、きき、着替えはベッドの上でカーテンを閉めてしてくれ!」
「え? は、はあ……」
ボクがジルベルトから目を逸らしながらそう言うと、彼は首を傾げながら曖昧な返事をしたので。
「ぜ、絶対だぞ!」
「っ! はい!」
念押しのために少しきつめに言うと、ジルベルトはものすごくキレのいい返事をした。
あ……強く言い過ぎちゃったかな……。
だ、だけどしょうがないよね!? ボクが一緒にいるのに、そ、そんな恰好をしているジルベルトがいけないんだ! うん、そうだよ!
ボクはジルベルトと視線を合わさないまま、そそくさと自分のベッドへと上がり、頭からシーツを被った。
だけど……ジルベルトの身体、すごく引き締まっていて、カッコ良かったなあ……って、何考えてるんだよボク!?
ボクは先程の光景……ジルベルトの裸が頭から離れないまま、悶々としながら夜を過ごした。
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次話は明日の朝投稿予定です!
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