森田の策略
さて本日は森田との約束した日曜日。
そして今、時間は十二時。
二度寝を終え部屋でうーんと気持ちよく伸びをしていると、飯の良い匂いが部屋の中まで入ってくる。
今日はチャーハンかな? ごはんを炒めた匂いがする。
ふあっと欠伸をしながら僕は部屋を出てダイニングに行くと森田が居た。
ついずるっとなってしまった。
「え? も、森田。なんで⁉」
「だって優人、ご飯は家で食べたいって」
「そういう意味じゃねーよ」
「あらそうなの?」
ひょっとこみたいな顔しやがって。服はなに? 黒のTシャツに白のミニスカートか。いっちょ前に可愛い恰好しやがって。
「どっちにしても、お前まで一緒にうちでご飯食べることないだろ⁉」
「まあ、良いじゃない。折角、玲ちゃんが来てくれたんだから。ねーー」
「ですよね。おばさん」
「おばさんなんて仰々しい。お母様でいいわよ」
「やだ、そんなっ♪」
何満更でもない顔してんだよ!
「あ、れいおねえちゃんだ」
「あ、由美ちゃん元気にしてたー?」
由美は森田に小さい時から可愛がられているのでとっても懐く。
「おねーちゃん、おねーちゃん」
森田の体にくっ付いては頭をうずめるようにぐりぐりする。
「あはは、由美ちゃんくすぐったいよ~」
はあと僕はため息をついて席に着く。
「皆さん仲の良いことで」
「女同士水入らずでねーー」
「ねーー」
「はい!」
「さいで」
「さ、ご飯を食べましょう」
そして、ご飯を食べていると、由美がおねーちゃん、おねーちゃんと森田を呼ぶ。
「どうしたの由美ちゃん?」
「さいきん、お兄ちゃんがしらないおんなをおうちにつれてくるの」
僕はぶーと吐いてしまった。
(一応皿の中へ)
「ちょっと優ちゃん汚いわ‼」
「由美がいきなり変なこと言うから」
「へんなことじゃないもん。ほんとうのことだもん」
「そうなんだ。へえ、家にまでねえ……」
「ん?」
森田は黒いオーラを身に纏った雰囲気でこっちを見ていた。
なんだ、この負のオーラは? 少し怖いぞ?
さてご飯を食べ終え、由美がお兄ちゃん達と一緒に付いて行きたいとねだったから、三人で駅前に向かった。駅に着くと森田が時計を見ながら、
「おー、予定通り十三時半ね」
「え? ああ、うん」
「さて行きましょーか」
「おう」
「おー」
そして我々(というか森田主体の)買い物をする。彼女はバレーボール部なので、スポーツ用品に行って練習着やユニフォームを買ったり、服屋に行っては洋服を選ぶ。
「どう、綺麗?」
中学生のやんちゃな頃とは打って変わって可愛いくなりやがって。
「ま、まあまあじゃね?」
「もう、つれないまね。どう由美ちゃんは?」
「れいねーちゃんとっても可愛いよ」
由美は目をキラキラさせて森田を見ていた。
一着選んで試着するごとに僕達は彼女の服装チェックの審査員になるのだが、妹はずっとべた褒めだ。
まあ、確かに悪くはないんだが……、もう由美は森田の虜になっているな。
「お、重い……」
「男子頑張れー」
「お兄ちゃん、がんば」
僕は荷物運びになるので、由美の手は森田に繋いでもらっている。
「楽しかったねえ由美ちゃん」
「うん」
「さて、帰りますか」
「そうそう。さっさと帰ろう帰ろう」
そして、自宅に由美を送った後、僕はしぶしぶ荷物を彼女の家に運ぶ。
なんで、僕がそこまでこんなことを……。
僕の家から歩いて十分はかかるが、僕がぶつくさ言っている間に森田の家に着く。
相変わらずデカいなあ。
「はい、中に入ってー」
「え? 玄関じゃ駄目なのか?」
「もう少しこっちに持って来て」
んしょんしょと僕は持って行くと、森田はドアを開け部屋に誘った。
あれ? この部屋って……。
「はい、ありがとう。ここに置いてね」
「へいへい」
荷物を置いた僕はさっさと家に帰ろうとした。
「じゃあ、僕は帰るから」
しかし森田は無言でドアを閉めてそれの前に立っている。
「え? 森田……?」
「あのさ、優人?」
「な、なんだよ?」
なんだ? 森田の雰囲気が一変したぞ?
「最近、八組の河野美登って子と仲良く話しているわよね?」
僕はドキッとした。
ど、どうしてそれを?
「いや、別に仲良くってわけじゃあ……」
少しテレテレしながら言ってしまう。
「あの子、外見は地味にしているけど、可愛い顔しているわね?」
「え? どうしてそんなこと分かるんだよ?」
「そりゃあ化粧してもすっぴんの顔が分かる人がいるように、外見を誤魔化しても隠し切れない素顔が分かる人はいるもんよ。特に女同士だと分かる人には分かるわ」
女すげー、つーか怖ーー。
「で、河野さんはかなりの美貌ね」
「……」
「で、彼女とはどういう関係なの?」
森田は真顔で僕にじわじわと寄ってくる。
「子供の時の幼馴染です……」
「中学校の時はあんな子いなかったわね?」
「小学校の時までの幼馴染。そして大阪に引越ししたんだ……」
「……」
森田は考えていた。
「ふーん。だからか……」
「?」
「兎に角、優人」
「な、何?」
「今日は逃がさないんだから」
森田は突然僕に迫ったと思えば、おもむろに僕の脚へと抱き着いてすりすりして来た。
え~~~⁉ 何この状況⁉⁉⁉⁉
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