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みっちゃんの正体

ga文庫……

 え? どうなってるんだ?


「私の芸名知ってたんだ」


 え? 芸名? え、もしかして……。


「みっちゃんが霧島凛香?」

「はい、そうでーす」

「えーーー????」


 そうなの⁉ みっちゃんが霧島凛香なのか⁉


「まじで?」

「まじでっ♪」


 まじか。急になんか顔が熱くなってきた。

 僕がオロオロし始めると、


「大丈夫?」


 みっちゃんは声をかけて立ち上がろとした。


「だ、大丈夫だよ‼」


 僕は慌てたせいか自分の足に躓いてみっちゃんの方に倒れた。


「わ」

「きゃっ」


 そして彼女を巻き添えにしてしまった。


「あっ、ゴメン。大丈夫⁉」


 彼女を見ると、少し恥じらった顔で僕を見つめてきた。


「う、うん。大丈夫……」


 大丈夫じゃない! 顔が近い近い近い!

 ドアの方がぎしっと鳴った感じに聞こえたから見てみると、母さんと由美がこっちを見ていた。

 母はあらあら~とにやけながら言って、由美は嫌悪の顔だった。


「あの、これは誤解で……」

「大丈夫よ~。気にしないで~~」

「そんなことするお兄ちゃん嫌い」


 そしてドアをそっと閉めた。

 由美~~。これは誤解だよーー。


「あのゆっちゃん?」

「はい……」

「ど、どいてくれる?」

「ああ、ごめん」


 彼女は起き上がると、倒れた拍子に少しはだけていた白のワンピースを恥じらいながら整えた。

 それから少し気まずい空気になった。

 あ、あの……と彼女が言った。


「驚いた……よね?」

「ま、まあな」

「大阪に行ってから、きらびやかなことに憧れてモデル始めたんだ」

「そうなのか」

「そしたら、最近はグラビアの仕事が増えてさ、気づいたら世間的にはグラビアアイドルになったの」

「なるほど」

「あまりグラビアは少し恥ずかしいからしたい訳ではないんだけどねえ」

「ああ、そうなのか」

「うん、あ、それと後ね……」

「何?」

「霧島凛香として分からないことがあれば、最近はウィキ〇ディアにまとめられているから。だいたいのことは正しいと思う」

「お、おう……」


 まさかのウィ〇を言ってくるとは。本人から訊くのは駄目なのか?


「あ、あのさ」

「何?」

「いちいち地味な格好をせずにそのままじゃ駄目なのか?」

「え?」

「今の方が断然良いと思うけど」

「ありがとう。でもね。そういう訳にはいかないんだ」

「なんで?」

「そうすると男子も女子も黙っていないわ」

「え?」

「男子からは毎日のように告白されて、女子からはほぼ毎日のようにいじめられる」

「……」

「大阪の中学の時はそうだったの」

「……」

「だから私、心機一転して故郷に戻って来たというのもあるの」


 そうだったのか。だから正体を隠して戻って来たのか。確かに彼女の正体が霧島凛香だと分かれば学校は大騒ぎだな。


「分かった。秘密にするよ」

「ありがとう」


 彼女は帽子とメガネを付け、僕の部屋から出た。

 メガネかけるだけでも彼女があの霧島凛香とは思いにくいな。


「家まで送るよ」

「本当?」

「ああ」

「あ、ありがとう」


 そして彼女が住んでいる所に着いた。


「な、なんだここは……」


 とても古びたマンションだった。


「み、みっちゃんだったらこんな古いマンションよりももっといいとこ住めるんじゃないか?」

「うーん。それはそうなんだけど……」


 彼女はにやっとして、


「家賃は安いし、まさか霧島凛香がこんなマンションに住んでいると思わないでしょ?」

「まあ、確かに」


 彼女なりの考えがあるなら仕方ない。


「三人で住むには狭くないか?」

「ああ、言い忘れてたけど、両親は大阪に住んでいるわ」

「え⁉」


 僕は拍子抜けをした。

 な、なんだって?? 両親は大阪に???


「え、じゃあ、一人暮らし? なんで?」

「二人とも大阪で仕事しているから、そう易々と辞められないわよ」


 それはそうかもしれんが、


「女子高生で一人身じゃあ危なくないか? 例えば、市内マンションとかだったらそこそこの防犯設備はあるだろ?」


 うーんと彼女は言って、


「ま、それより知り合いが近くにいる方が安心するから」

そんなものなのか? 本当に?

「大丈夫なのか?」

「だから困ったら宜しくね。ゆっちゃん♪」

「それって大丈夫じゃなくね?」

「けどそれはどこに住んでも万が一はあるわ」

「そりゃあそうかもだけど」

「宜しくね♪」

「え? ああ、うん」

「何~? 何か心許ない返事ね~。分かった? ゆっちゃん?」

「分かった。分かった」

「ふふ。ありがとう」


 自分の部屋に戻ったみっちゃんを確認してから、僕は家に戻った。

 帰ると、玄関に冷たい目で見てくる由美がいた。


「ゆ、由美ちゃん?」

「……」


 なんだろうなあ。妹から何か圧を感じるなあ。


「ゆ~みちゃん」

「おにいちゃん」

「はい」

「ごはんもうできているってママが言っていたよ」

「お、おう」


 由美はそのまま自分の部屋に入って行った。

 最近由美の対応が冷ややかだな。

 僕はご飯を食べ一人でくつろいでいると森田からラインが来た。


『優人』

『どうした森田?』

『明日、一緒に買い物に行かない?』

『何の?』

『色々買い出しがあるから荷物運びに』

『なんで僕が』

『男の力を借りたくて』

僕はため息をついて、

『分かったよ。何時に行けばいいんだ?』

『十三時に市内の駅前に集合ね』

『へいへい』

『あと、ご飯付きだから』

『え? 一緒に食べるのか?』

『そうよ。駄目?』

『ご飯は家で食べたい』

『分かったわ。それなら十三時半ね』

『了解』


 って、明日は荷物運びだけじゃ終わらないじゃないか森田!!

最後まで読んで頂きありがとうございます

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