彼女の秘密
本日は土曜日でもう十二時だ。
久しぶりの休日。誰にも邪魔されないぞ。
うーんと伸びをするとピンポーンとチャイムが鳴った。
誰だ。神聖な休みの日に来る輩は。
「はーい」
ドアを開けると女子がいた。麦わら帽子を被り、白のワンピース姿で鞄を持つ姿は清楚そのもの……。メガネと髪を束ねてなければだが。
アンバランスだな。
「みっちゃん?」
「ええ。そうよ」
「どうしたの?」
「遊びに来たの」
「へ?」
「お邪魔しまーす」
「え? おいおい。遊ぶなら連絡ぐらい」
「え? ライン送ったけど?」
「え?」
見ると確かに十時ごろに来ていた。
……寝ていたな。
「懐かしいわ。変わってないわね」
ああ。そうか。こいつは子供の頃にちょくちょく遊びに来ていたんだ。
「じゃあ、ここがゆっちゃんの部屋ね」
「よく覚えているな」
「まあ、ね」
少し赤く頬を染め上げつんとした顔になった。
「部屋に入っていい?」
「え? ああ、別に構わんが」
みっちゃんはどんどん進んで行った。
「うーん。部屋全体はあまり変わってない感じするけど……」
「あまり、じろじろ見ないでくれ」
「あら、ゴメンなさい」
「で、何して遊ぶんだ?」
「それはね……」
じゃーんと鞄から取り出したのは、タブレットだった。
「?」
「動画配信サービスで一緒にアニメ見よー」
「あ、ああ構わんが……」
僕達は久しぶりにアニメを一緒に見る。
「このキャラがね、めっちゃ格好いいの」
「そうなのか?」
いまいち分からない。
「けど最近アニメ見ないからさあ。あまり分かんないぞ?」
「けど、漫画は読むんでしょ?」
「ああ、そりゃあな」
「それのアニメ化なら大丈夫じゃない?」
「ああ、それなら」
そして僕が好きな漫画のアニメ化された作品を見ると、やはり当たり前であるが好きなキャラが動いて喋るのは良いものだ。
二人でアニメ見て楽しむのはなんかこう懐かしいなあ。
「優人~、飯冷めちゃうーー」
気づいたら十四時を回っていた。
「いけね。昼ごはんだよ」
「私は部屋で待ってるから」
「昼飯は?」
「もう食べ終わっているわ」
おいおい。まじかよ。
「じゃあ、食べてくるから」
「ええ」
あ、そういえば。
「後、あまり部屋を詮索しないこと。いいな」
「はーい」
少し怪しい反応だが、まあ、あるのはベットの下に隠してある成人向け漫画ぐらいだし。まあ、いけるかな?
飯を食べていると、母がにやにやしながら言った。
「みっちゃん来てるんでしょ?」
「なんで知ってるんだ?」
「知らない女子の靴があれば分かるわよ」
「けどこっちに帰って来てることをどうして知ってるんだ?」
「え? 四月にうちの家に来て挨拶してきたから」
「え⁉ 聞いてないぞ?」
「言ってないもの」
「なんでだよ?」
「それにしてもみっちゃん。かなり可愛くなってるじゃない」
え? 何言ってるんだこの母親は?
「あんなに地味なのに?」
「地味……? ああ、そう言えば、学校ではそうするって言ってたわね」
「?」
「まあ、兎に角昔から仲良いんだから大切にしなさいよ」
「分かってるよ」
ご飯を食べた僕は部屋に戻ろうとすると、がさごそ聞こえた。
まさか……。
ドアをバンと開けると、急いでタブレットの置いてある場所に戻ったみっちゃんがいた。
「みっちゃーん‼」
「え? 何?」
「あれだけ部屋を詮索するなと言ったのに‼」
「つい、出来心でーー」
「……ったく」
それから二時間程アニメを見続けた。
「疲れたーー」
僕は後ろに倒れた。
「溜めて見ると見ごたえがあるわね」
「いままで観れなかったのか?」
「まあ、隙間時間ぐらいしかね」
「どんだけ忙しいんだよ」
そしてふと母さんの言葉が過る。
……かなり可愛くなってるじゃない。
あの言葉はどういう意味だ? こいつが? まさか……。
僕はみっちゃんの後姿を見る。確かに体のボディーラインは綺麗……な気がする。くびれはよく分からんが、まあ、良い尻はしているな。
ていうか部屋にいるんだから帽子は脱げよ。
「あのさあ」
「何?」
「部屋なんだからさ、取れば? くつろがんだろ?」
「……ええ。そうね」
僕は起き上がり、部屋の本を片付けていると、ふわっと良い香りがしてきた。振り返ると、帽子を脱ぎ、メガネを外して、髪を解くため首を左右に振っていた。さっきの地味系女子から見違えるような美女がそこにはあった。
……どこかで見たことあるような。
と思った言葉を思い出す。
「霧島……凛香……?」
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