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***


 勢いよく、体が放り投げられた。

 同時に、激しく波立つ水の音。

 ごぽごぽと空気が鳴いて、それからなにも聞こえなくなった。

 それは冷たく、暗く、優しく、ゆっくりとリオトの体を包み、底へ底へと引きずり込んでいく。体は鉛のように重くて、まるで神経など通っていないかのように動かすことができなかった。

 ああ、なにを。

 なにをして、いたのだったか……。


《……リ……ト》


 ひどく優しく、懐かしい声が耳に届いて、リオトは重い瞼を開ける。


───し、しょう……?


 不鮮明で霞んだ視界を埋めたのは、やはり深い水底のような一面青の世界。


《リオト……》


 視界の上部にあか色がチラついて、リオトはゆっくりと顔を上げる。

 水面みなもなのだろうか、まぶしい光がたゆたうそこに柔らかく、あたたかい紅い光が輝いていた。名を呼ぶ優しい声は、どうやらそこから聞こえてきている。

 呼び起こされるように次々と彼の姿が脳裏を過ぎっていく。

 こちらを見て、愛おしむようにその双眸が細められる。とても幸せそうに、口元が笑みをたたえている。

 動かなかったはずの右手が、ゆっくりと持ち上がる。助けを請うように、捕まえようとするように、あかい光に向けて指先が伸びる。

 燃え盛る激しい闘志のようでいて、そっと寄り添うあかりのような優しさの奥に引き込むような妖しさを秘めたそのくれないの光は、いつかの穏やかな日々の中で見たソレに似ていた。


───……師匠。どこに、いるのですか……?


 そして脳裏の彼は、伸ばしたその手からすり抜けるようにこちらに背を向けて、眩い光の中へ消えていく。

 リオトが悔しそうに歯を食いしばり、顔を歪めた。


───なぜ、何も告げずに消えてしまったのですか……!



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