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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第3章:平穏のその裏で……
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第76話:久々の息抜き

「よーし、行くぞ、ゆき!!!」

「オーケー、ターニャ!!!」




 現在、麗奈は涙目で壁際に追い詰められていた。

 ゆきとターニャによって上手く連れ出されたのと、悔しさとか入り交じり「うぅ………」と睨んでも2人は獲物を追い詰めるがごとく、ジリジリと逃げ場を失うように、確実に距離を詰めて行く。



 イーナスがターニャ達を連れて来たのはラウルの侍女として働いているのと、麗奈とゆきとの仲が良い事。異世界から来たと言う事を知っているのも含めて都合が良いと言う理由で、ディバーレル国まで来てもらった。




「昨日はイーナスさんからの課題に疲れてそのままだったし、朝にお風呂入ったけど………こうして麗奈ちゃんと入れるのは、何日ぶり……いや、何カ月ぶりかな」

「そんなに経ってないでしょ」




 ウルティエのツッコミにピタリ、と動きが止まるが「感覚的!!!」と元気よく無視した。ターニャも「私も久々!!!」と答えるもサティの「恰好が………ね」とポツリと言う。


 そう。ターニャとゆきはお風呂に入る為にと麗奈を連れ出したは良いのだが、すぐに逃げ出そうと考えた彼女の服を脱がせ………ブラとパンツと言う半裸でタオルを巻き「何の恨み!!!」と威嚇する。


 ターニャとゆきはタオルも巻かずに全裸待機。ウルティエとサティはきっちりタオルを巻き、その後ろではおずおずと顔を出したワクナリが「あ、の、助けなくて……良いんですか?」と2人に聞いてきた。




「ワクナリさん、助けてください!!!!」

「はいはい。貴方は私達と行くわよ~」

「ちょっ、サティさん!?」

「で、でもっ、困ってますよ」




 これ、無視!?と思わず驚くも「じゃあ、先行ってるね~」とにこやかに言われワクナリを連れ出し無情にも閉まる音が聞こえる。




「諦めろ、仲間なんていない!!!」

「そうだ、いない!!!」

「脱ぐから先に行っててよ!!!そんな全裸待機されても、困るし目のやり場に困るの!!!!」

「女の子同士関係なし!!!!!」




 ピースするターニャに呆れる麗奈。

 と、その隙を見逃さずゆきがタオルを奪い取る。




「ちょっ」

「別に誠一さんと観光したのを詳しく教えてくれないとか、課題でストレスが溜まったとか、全然ないからね」




 思ってるよね!!!!と、自分の体を抱きしめながら睨む。目が笑っていない親友に、これがお返しか……と分かりアルベルトとの事は、ラーグルング国に来た時に紹介すればいいやと思ったのが……いけなかった。




「覚悟!!!!」

「え、ちょっ、きゃああああああっ!!!!」



 抵抗(むな)しく下着を取られ、そのまま浴場へと連行された。




======



「ほら、ほら、そんなに怒らない怒らない♪」

「ふんっ」




 そっぽ向く麗奈に構わずターニャは話しかけ、髪を洗い「はぁ、やっぱり石鹸は良い匂い」と堪能する。それにサティは微笑み、ウルティエも「そう言えば……」とゆきに話しかける。




「ドーネル王子、忙しいのに私達にこんなに贅沢して良いの?」

「んー、イーナスさんはすぐに国に帰ったけど、お礼も兼ねて好きにして良いんだって」

「話によれば麗奈ちゃんにお礼したいんだっけ?」




 サティがラウルから聞いた話では、麗奈から受け取ったペンダントによって命を救われた。魔力で固めたそれはその術者の力が反映されるもの。


 七色の魔法を扱った麗奈の力は、キールとラウルに付加させたものと同じ治癒魔法と、闇の無効化といった力。魔法を限定的に使えなくさせたあの場所で、大賢者のキールとラウルは知らずの内に自分の身に虹の力を纏って動く事が出来た。


 ラウルの操る氷の力に上乗せさせるようにしたその力は、空間を無効化しいつもよりも身体能力が上がった。その付与内容が分かったのは、キールが実際に刺された部屋で感じ取った魔力の残留と、サティ達魔道隊のお陰だと言うことらしい。




「まぁ、主ちゃんしか虹の魔法を扱えないしその効果も不明な点が多いからねぇ~。時間が空いたら詳しく聞いたり行って貰うけどね♪」




 楽しそうに呟くキールにゆきは「協力しますよ」と言えば、笑顔で「あ、そうしようか」とニコニコとそれはもう楽しそうに言っていたと。





=======



「はぁ~~~~~~~ぶえええっ」




 ブクブクブク、とセクトが息を吐きベールにより湯船に沈められている。すぐに抜け出し「なにしやがる!!!」と反論すれば「黙って下さい」と低く脅される。




「やっと報告書書き終わって、散々イーナスの奴に違うって叩かれるし、キールからは没と言われて、書ききったのを燃やされる俺の気持ちが分かるのか!!!!」

「普段から仕事しないのが悪い」

「イール姉さんに頼りきりなのが悪い」

「……………」




 すぐにユリウスとラウルの反論に合い、すぐに撃沈される。フーリエは髪を洗いながら「アホですよ」と、言われヤクルには「団長としての自覚なさすぎるんでしょ」と次々に矢が降りかかる。




「…………」




 ハルヒはそれを見ながらも、完全に自分の傷が治ったのが確認しリッケルに話した内容を思い出す。彼は相当驚き、そして「国に持ち帰り、王に話しておきます」と言いイーナスと共にニチリへと帰った。




(あ、れいちゃんにも話さないと………)




 自分に対する誤解。


 今は少しだけ距離が縮まったが、まだ麗奈との距離を感じる。破軍からは『頑張れ~』と応援されたので、何処かで時間を作ってきちんと話さないといけない。


 そう、()()()()()





(邪魔なんだよな、あの3人)




 チラリ、と見れば目的の3人は湯船に浸かっている所。と、隣で騒ぐ麗奈達の声が聞こえて来た。ルーベルも丁度入って来たのか、体を洗いながらも(このままでいいのか……)と、自分とワクナリに対して温情をくれるドーネル王子を想う。




「ワクナリさんってホント美人ですよね~」




 ピクリ、とサティの言葉に反応するルーベル。「ん?」と、ユリウスが不審に思いヤクルを見ると(もしかして……)と2人して抜け出そうとするのをキールに阻まれ押し込まれる。




「ぶほっ!!」

「ちょっ、おまえっ」



「あ~~~麗奈ちゃん。ホント体、キレイだよね」

「なっ、なにっ、いきなり」

「うんうん、綺麗な体つきだもんね」

「胸………少し大きくなった?」




 ゆきの爆弾発言に、女湯だけでなく隣に居た男達全員が沈黙になった。しかし、数秒後に「あ、もしかしてユリウスと内緒のイチャイチャしてるとか」と冷静に言うサティに麗奈は慌てる。



「そ、そんなっ、そんな事ユリィしないもん!!!!」

「いやいや、男って皆、肉食でしょ」




 否定すればするほど、質問攻めにされる麗奈。ユリウスは無言の圧力に耐えていたと、言うよりはヤクルと共に湯船にブクブクと顔を突っ込んで会話を聞かないようにしていた。



「あそこ面白い反応するね」

「ゆきさん……いえ、サティさん達は()()()ですよね」

「それしかないでしょ」

(貴方方も、普通に分かってましたね………)




 無言で睨むフーリエに、キールは素知らぬ顔をしベールはラウル達の反応を面白がる始末。セクトは何気なく隣に居たランセに思わず話しかけた。




「女って大胆だな」

「楽しんでる君等もだけどね………」





=======




(あぁ、もう!!!なんなの、サティ達のあの態度は)




 バシャッ!!とお湯をかけイライラとした表情の麗奈。サティ達にあれこれ聞かれ、答えてしまった自分にも腹が立ったがそこにユリウスの名前を出したのがマズイと考えた。




(で、でもっ、仕方ないじゃない!!!あ、あんな………あんな事言われたら否定するしか)



 

 今は麗奈の代わりにワクナリがその犠牲になっており、ルーベントの仲を色々と聞かされているに違いない。時々、悲鳴みたいな声が聞こえているので……可哀想にと祈った。

 少し経って、サティからの質問を思い出し途端に顔を真っ赤にする。否定するようにお湯をかけまくる麗奈に、ザジが現れて「ちょっといいか」と聞いてくる。




「……………」

「ん?何で無言なんだよ」

「バッ、バカ!!!」




 すぐさま、サスティスからの蹴りを喰らい「なにしやがる!!!」と文句を言う。真っ赤になりながら涙目で2人を見ていると、黄龍が『主、まさかアイツ等……いる………』と言い、プツンと何かが切れた。




「最低!!!!!」




 ザジ達をも巻き込んだ雷の音と、ドーネルがキールの事を「あ、やっぱ男か」と言い彼の怒りに触れたのは同時。麗奈とキールの2人はピンポイントで、魔法を扱うのが得意な為に浴場を壊す事無く制裁を加えた。





「あはははははっ、ザジとサスティスの奴バカだ、相当のバカだ!!!!」




 それを全て見ていたディーオが大笑いし「面白い!!!!」と床を叩きながらこれまでにない位に笑った。それはもう、エマールが引く位に………。




=======



(………見られた。ザジにサスティさんに………黄龍にまで!!!!)




 慌てて着替え先に上がった麗奈は紫色の薄手のワンピース。首元にタオルをしているが、それよりもザジ達に裸を見られた事の方がダメージが酷い。




「うぶっ!!」




 と、そこで誰かにぶつかった。

 痛がる前に相手に謝罪しないと、と慌てて顔を上げた麗奈は「平気?」とクスクスと面白そうに笑うハルヒ。彼は水色の浴衣を着てタオルを首に下げていた。




「ハル、ちゃん………」

「あれ髪濡れてるね。どうしたのさ一体」




 「冷えるよー」と後ろに回り込んで髪を拭く。それに少し気恥ずかしさを覚え「ど、どう……傷の方は」と上ずった声で聞いてくる。




「お陰様で。れいちゃんの魔法で傷跡は残らないよ、ありがとうね」

「そ、そっか。ごめんね、ぶつかって」

「気にしてないよ。……都合は良いけど」

「なんか言った?」




 最後の方は小声で言った為に麗奈は思わず首を傾げた。

 ハルヒは麗奈に「これから時間、ある?」と都合を聞けば、今日は特にないと答えればニヤリと微笑む。




「なら、ちょっと来てくれない?さっきいい場所があったんだ」





 ハルヒに連れて来られたのは敷地内にある小さな噴水がある場所。花壇が近い事からその噴水で花達に水やりをしているのだと、ハルヒは城の人達から話から聞いたと言う。




「薔薇が好きなんだって、あの王子様の兄妹達」

「へぇ……だからいろんな色の薔薇があるんだね」




 城の人達からすれば薔薇のある所に噴水あり、と言う認識でいる事から噴水に行くには薔薇を探せば一発だと言う。噴水の水は月の光を反射しているのか、キラキラと輝いており思わず傍まで近寄った。




(2羽の小鳥の石像……夫婦か兄弟かな?)




 仲良さそうにしている姿からそんな想像をした。噴水を囲むようにして作られた石垣に座ったハルヒは隣に指を指しここに座る様にと促す。




「はぁ、やっと話せるよ。れいちゃんの周り、結構うるさいのが多いからさ」

「……え?」

『あー気付いてないねこりゃあ』




 ポンッ、と音を立てて洗われた破軍に目を丸くする麗奈。

 誰を指しているのか、と考える前に『陛下と騎士と、魔法師』と破軍に先を言われハルヒも「その3人がすっごく邪魔だったからさ」とイライラとした様子。




「………ユリィ達と、何かあった?」

『そりゃあしたよ。主はその陛下を殴った訳だし』

「えっ!?」

「あ、言っとくけどちゃんとれいちゃんに許可取ったよ?」

「あ、あー…………確かに」




 思い出すのはハルヒと再会した時の事。四神の呪いを解くことがユリウスの呪いを解く事と同義であるとしていたあの時の事。彼はあの時麗奈にちゃんと聞いていた。泣かせた相手には同じように罰を受けて貰う、と。


 それに圧倒されて麗奈も思わず「軽く……ね」とつい言ってしまった。まさか、本当にやるとは思わず頭を抱えたが「スッキリしたけどね」とにこやかに告げるハルヒ。




『あとは麗奈ちゃ~んが、この近くに転送されたあの時。結構揉めたものね』

「その分も合わせて殴ったから」

「……………ごめん」




 巻き込まれたとはいえ、麗奈自身も理解はしている。が、ハルヒから見ればやっとの思いで再会したのに話せないまま連れて行かれたと、思われても仕方のない事。

 順応し過ぎるのがいけないのだろうか、と思うも自分にしか出来ないと言われたあの時に頼られたら断れない。それが自分なのだと思い「お人好し、すぎるかな………」と思わず言ってしまった。




「危険を承知で行ったのならそうかもね。でも、由佳里さんもそう言う人だったし……親の遺伝だったとしても、これからはちゃんとしくれないと」




 自分だけの命じゃないんだし、と手を握るハルヒにまたも謝る。破軍は『謝るの癖だね』と言われる。




「まぁ、それがれいちゃんだしね」

「何も言えないです………」

「イジメてないんだけどね」




 それで、と。言葉を切ったハルヒは麗奈を見る。

 あの時の事を話そう、と急に真剣みを帯びた声に麗奈は思わず「あの、時……?」と反復する。




「そう。卒業式のあの時。………あれを企てた奴の事、僕の嘘の事。ちゃんと話せてないし、話す前にれいちゃんは何処かに行くし……やっと話せるかと思ったら僕は怪我するし、君は気絶しちゃうし」

「い、色々とご迷惑を、お掛けしてごめん」

「別にいいけどね。………まず、()()()()()()()()()()()()()()()

「………え?」




 思わずそう言ってしまった。

 だって、ハルヒはゆきに告白したではないか。自分はそれを見ていたのに、あれが………あれで付き合ってない、と。本気で言っているのか、と疑うような目で見れば「あーあれね」と気まずそうに言う。


 破軍を見ればずっとニヤニヤと楽しそうにしており、その時の事を思い出したのか声を出して笑っているのだ。




『っ、だって、あの時の主――』

「うるさい!!!!!」




 足で攻撃されるのを呼んでいたのかフワリと避ける。そのまま、空中に留まり『クククッ、面白いよなー』と意地の悪い笑顔を浮かべたまま。




「あ、あの時のは………あれ、ゆきじゃなくて、れいちゃんに向けて言ったの。なのに、君気付きもしないし」

「え、えええええええぇぇぇぇ!!!!!!!」




 最悪だよ、とその時の事を思い出したのか、顔が赤くなり麗奈に視線を合わせないでいた。耳まで真っ赤にしていた事から、相当勇気のいることであると想像が出来る。




(え、あれが………ゆきじゃなくて()?)




 それに、その意味に段々と理解してきた麗奈は顔を赤くし下を向く。

 大声を上げたが、それと同時に幼い時に自分がハルヒにしていた約束も思い出す。


 確かに自分は言った。彼に、未来のお嫁さんになる、と……小さいながら幸せにすると言った彼の事を。




「あ、あぅ………でも、でも」




 自分はあの時、完全に寝ていた。

 夜中に怨霊を退治していた生活にも慣れたが、それでも中学の時とは違い高校になれば勉強も難しく、まだ高校と言う空気にも慣れていないあの時の事。そんな時、親友のゆきと同じクラスになった事しか思い出せず、そのまま寝た自分を恨めしく思った。




「はぁ、やっぱりね。…………うろ覚えなんだね。良いよ、僕も過去最大に恥ずかしい思いしたし」




 脱線したけど、と咳ばらいをしたハルヒは麗奈に向き直る。




 あの卒業式での事、あそこで解放された大蛇の本当の首謀者についてを。

 自分が、何故土御門が嫌いなのかを。



 彼は麗奈に過去を語り出した。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 小人のアルベルトさんは、可愛かったですね。 大浴場で女子同士にもかかわらず、 恥ずかしがる麗奈に、ここぞとばかりに意地悪する ゆきちゃんが、はしゃいでる様子が良いです。 ザジたちは、なんで…
2020/06/05 21:22 退会済み
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