第48話:四神との戦い~青龍~⑤
赤い光が天を貫く。その様子を何処か呆然とした様子で誠一は見ていた。今、自分達は雷の力を操る青龍を相手にしている。青い鱗に長い胴体、書物で見るような青龍が今自分の目の前に居る。
そう実感するのに時間はあまりかからなかった。青龍はこちらの事などお構いなしと言わんばかりに柱へと狙いを定める。
「グラビィ・ケッテ」
青龍に狙いを定めたようぶ鎖が現れ地面へと縛りつける。が、それが出来たのは一瞬だけで反撃ばかりに雷がレーグ達を襲う。防御魔法を展開し電撃を防ぐが、完全には防ぎ切れず強力な電撃は魔法隊の面々を襲う。
(ぐっ、これだけの余波が……)
雷を操るイーナスは剣で帯電させた剣と、青龍の放たれた雷がぶつかり相殺するように防ぎ、九尾が自身の尾を使い自分に向けられるように仕組む。誠一は白い札を用いて結界を作り、直撃を避ける事は出来たが自分が浴びる。
意識を持って行かれないで済んだのは日々の九尾の戯れの為。彼が遊びと称して、誠一に雷を浴びせ続けた。まだ若く契約したばかりの誠一それなりに強くなり、それにムキになりやり返す事が続いた。霊獣の攻撃を遊びとして受け続けたからか、雷に対する耐性はそれなりにつく事が出来た。
「体が痺れたならすぐに離れろ!!余波を受けたならすぐには動けん。フリーゲさん達をすぐに安全な場所へと移動させるんだ」
「は、はい!!!」
イーナスと同じように雷を扱える魔法師がすぐにフリーゲ達を移動させていく。無差別に襲い掛かる雷は、フリーゲ達にも向かっていく。リーナはすぐに影で全体を覆う。それと同時に、バチッ、バチッ!!と音を立ててぶつかる。
「うぐっ………!!!」
「リーナ!!!」
影を突き破ってリーナに襲い掛かる雷。自身の周りに薄い膜を張るようにしてイメージした。そうしなければ、魔力で纏った攻撃をまともに受けて死ぬ確率が増える。しかし、それでもキールは危険性を説いていた。
「鎧を纏うようにしてイメージしても、攻撃に使う力と守りに使う力が平等ならあまりダメージ無いけどね。分かってると思うけど、自分の力よりも相手の力の方が強かったら………当然、ダメージは負うよ」
だから強い相手と対峙する時には気を付けるように。と、言われていた。だからリーナは影の力を守りにと力を偏らせた。しかし、自分を貫くようにして降り注ぐ雷に意識を奪われそうになる。フリーゲの声でなんとか踏み止まるようにすれば、次に来たのは大きな尾だ。
「う、くぅ………!!!」
一瞬、反応が遅れた。
あ、と思った時には既に目の前に迫っており自分以外はスローモーションのように全ての動きが遅い。やられる、と何故か分かり剣を握る力が弱まる。
【ウガアアアア!!!!】
その時、咆哮が上がる。白い虎が纏う風で尾が弾き返され思わず上を見上げた。「リーナ!!」と、自分を心配する声が聞こえてくる。何処かそれを呆然と聞いていると揺さぶられて目線を合わせられる。
「リーナ。大丈夫?………私の事、分かる?」
「麗、奈………?」
「うん♪良かった、無事だね」
フラッとなったから心配しちゃった。と、この場に居ないはずの彼女は居た。麗奈はユリウスに受けた傷があったはずだ。だから、ここにはこれないはずだ……と、考えるも実際に目の前に居る。
そして、麗奈を見ようとした時には既に暗転になっていた。何か柔らかい感触が自分の顔をモフモフとした何かに阻まれている。
「………?」
『リーナ。平気?気絶してない?』
「風魔……?」
『うん♪白虎は味方だよ。………主にベタベタして来るけどね』
最後が殺気の籠った声に思わず主想いだな、と思った事は伏せておく。尻尾を退ければニコニコとした風魔が居た。正し子供の姿ではなく、自分達と似たような青年へと姿を変えていた。
白い尻尾は子供の時と同じように大きく、耳もピンと伸びている。白い着物を着ており『主とお揃いになるように作った~』と嬉しそうにしている。
『僕ね、僕ね。リーナ達と居るようになってからここまで成長出来たんだよ。ありがとう♪そんでもって休んでて。白虎の奴、主に良い所見せようとアピールしてくるからさ』
ここは任せて。と言えば麗奈も隣でコクリ、コクリと大きく頷いた。フリーゲは麗奈が事に暫く驚き呆けていたが、傷の具合は良いのかと慌てて聞いて来た。
「はい、ウォームさんに治して頂きました。無理は……多分、しません」
「多分かよ」
「………気を付けます」
「分かった。信用しないわ」
その言葉にうっ、と気まずそうに顔を逸らす。しかしフリーゲに無理だけはすんなよ、と言われ「頑張ります」と言って結界を張る。そこに続けて影と植物の蔦が合わさるようにフリーゲ達を覆った。
「そこで大人しくしててよ、フリーゲ」
「気絶している魔法師達もここに運ぶから、様子を見といて下さいね」
キールは面倒そうに言い、ランセは既に2人程気絶していた魔法師を置き様子を見るようにと促される。この違いは何なんだ、とキールを睨みながら思いながらも運ばれてくる魔法師達を診て行く。
電撃を浴びても軽くはない。しかも相手は精霊と同等の力を有すると思われる存在。魔力の塊そのものが相手なら、一般の自分達が出来る事は殆どない。今もリーナに守られなければ、普通なら死んでいた。気絶している魔法師達の様子を見ていると、風景がガラリと変わった。
「ここ、は……」
「フリーゲさん!!」
イールが自分を呼ぶ声が聞こえ、振り返れば彼女は兄のセクトと共に何人かの騎士団を抱えていた。状況を聞けば朱雀を相手にしていたヤクル達の騎士団と魔法隊の面々は、灼熱の炎に包まれた大地の中に長く居た影響なのか、その殆どは熱中症と似たような症状になった。
ハルヒが行使した玄武ですぐに大地を冷やしたが、それでも倒れる騎士団達が多く何処かで休ませようとした。すると、自分達は虹の光に包まれ既に城の中に転送されていたと言う。
「……あの精霊のお陰か」
麗奈が契約をした大精霊であり、全ての精霊の父とされる存在。ウォームが配慮して次々にこちらに送ったと言う。まぁ自分があの場に居ても、恐らくは何も出来ない上に足手まといなのは重々承知していた。
(あー、くそ。結局はここで留守番してろってか)
ガシガシ、といつも以上に乱暴に髪をかく。転送されてきたのが何処からか漏れたのか、こちらに向かって来る足音が聞こえてくる。見ればフリーゲの部下達が来ており「まずは、こちらに運びましょう!!」と指示される前に、自分達で動いていた。
「……………」
それに唖然としたフリーゲ。すると、こちらに慌てて近付いてくる魔法隊の人物が居た。白いローブを身に纏っている事から後方担当の者だと分かり、隊長であるレーグ、師団長のキールが居ない中で何があったのかと身構えてしまう。
「た、大変です!!!!陛下が……陛下が………」
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風が主に迫る雷を避けるように結界を張る。睨む白虎はそのまま青龍にのしかかる様にして覆いかぶさる。頭を抑えるようにして組み敷くが、それに構う事無く周囲に巨大な雷を落とし続ける。
「「雷陣結界!!!」」
誠一と麗奈とで作り出しす雷を避ける結界。キールはレーグを含めた魔法隊の人達、ランセは気絶している騎士団、九尾と風魔はイーナス、リーナとフリーゲが連れて来ていた部下達を守るように自身の防御魔法または結界を張り巨大な雷を防いでいく。
「ソンブル・レイヨン」
雷が避けていた筈の結界にぶつかり薄い壁が幾つも破られる。青龍の周りには既に雷を圧縮し小さなボールの形をしたものが浮かんでいる。それと対になるように黒い閃光が同時に放たれる。
雷を相殺していきながら同時に麗奈達を囲うように黒い膜がせり上がってくる。片膝をつく誠一は息苦しそうにしていた。声を掛けようとした麗奈はランセにより連れ出されており既に膜と境界線を張る様にして閉じられる。
「あ、あのっ……!!」
「平気。私の命に代えても、彼等は守るし何より麗奈さんの父親だ。死なせる訳ないでしょ?」
「あ、りがとう、ございます………」
笑顔で言い切られ思わずお礼を言ってしまう。白虎の背に乗れば、不機嫌な声を上げておりランセを睨んでいる。風魔はもっとやれと視線を送る。
「風魔、君あとで覚えておいてね」と振り返らずに言われ『はーい』と、気を落としたように言う。
「冗談はさておき………もう1つ壁を作っておいた方が良いね」
「へっ?」
キョトン、とする麗奈にランセは既に組み上げたものを呼び起こす。ズズズズ、と下から何かが起き上がる様な、地震にも似た地面の揺れ方に驚いた麗奈はランセに抱き着いた。
「平気平気。これは害するものじゃないからさ」
「ランセ?主ちゃんから離れてくれない?」
「……麗奈さんも大変な奴に仕えられたよね。1人はまともなのに」
「うん、麗奈ちゃんに同意する」
イーナスは溜め息交じりにランセの意見に同意し、キールは「は?」と睨むが2人は無視。そうしている内に薄い膜の周りには黒い巨人が現れていた。
目がなく体と顔が一体になったような泥人形のようなそれは、ゆっくりと、しかし確実に前へと歩み始め膜の前に壁となって立ち塞がる。
(赤と蒼の………目?)
その時、麗奈は見た。ランセの瞳の色がいつもの紫色ではなく、違う色の瞳のオッドアイになっていたのを。ずっと見ていたのが分かったのだろう、ランセは「どうしたの?」と聞いて来た。
「あの、目の色………」
「えっ?」
しかし、それは一瞬だけですぐに元の紫色に戻っていた。あれ?、と目をこする麗奈はもう一度ランセを見る。しかし、瞬きをしても変化はなく元の色のままで何も変わっていない。
「す、すみません。………勘違い、でした」
「………そう」
それ以上の追及を止め目を細めたランセは空に手を掲げる。その瞬間、ゴロゴロゴロと音がなったかと思った時には黒い雷が青龍に向けて放たれる。その眩しさに麗奈は目を瞑るが、バサリと自分を包むように何かをまかれている感触。
「暫く音と光が激しいから私のマントで悪いけど、少しだけ我慢しててね」
「は、はい……」
ランセに引き寄せられさらに体を密着される。それに一瞬ドキリとなったが、無心になろうと何も考えないでいた。すると、頭上からクスクスと笑われている声が聞こえる。
「ふふっ、麗奈さん、男性に慣れてないんだね」
「っ、すみません。こんな時に………」
「過保護過ぎるからだよね。君の周りにはどうも過剰に守る人が多いようだし………」
チラリ、とキールとイーナスを見る。2人はこの音と光に暫く前を向けずにおり、ランセと麗奈の状態を見れていない。白虎が不意にガクン、と大きく体を揺らす。
「っ、ちょっ!!!私だけ器用に落とす訳!?」
【ガウ!!!!】
「………はいはい。人以外にも過保護過ぎるのが多いよね、ホント」
ふんっ、と鼻を鳴らす白虎。
内心でユリウスは大変だな、と思いながらランセは魔法を発動させていく。雷同士がぶつかり合う中に静かに放たれていた霧。それが青龍の周りに纏わり付くようになったのを確認出来た所で、グッと天へと伸ばした手を握った。
【グ、グアアアアアッ!!!】
それは絶叫だった。
霧が発生させた箇所から爆発が繰り出された。逃げようと空高くへと行くも振り払う事は叶わず、さらに事態を悪化させていくように爆発が立て続けて起きる。
苦し紛れにランセに向けられた雷はその手前で屈折し当たる事は叶わない。それに腹を立てたのか青龍は自身の周りに気を纏うように、力を集めるように急に静かになる。
(ちっ!!!)
そう悟った瞬間、力が一気に膨れ上がったのを感じた。次に来たのは押し潰すような光と音。
「っ……!!!」
耳鳴りに近い音が麗奈の中でガンガンと響く。青い雷が目の前で落ちたと同時に、竜から人へと変わっていくのを何故か感じ取れた。おずおずと、マントにくるまれている自分の顔をゆっくりと覗かせた。
「……それが、本当の姿か」
【俺は初代様に技と知恵を教えた身だ。当然、人ではないさ】
青緑色の短髪の髪に同じ色の瞳。凛々しい顔付きなのに、何処か悪の手先の様に見えてしまうのは目つきが悪いからだろうか。
左手は竜の腕を持ち、右手は人の手、水色の狩衣に黒いズボン、そしてそこから覗かせている足は人の足ではなく竜の足。
お尻からは竜の尾、半分は竜、もう半分は人間の姿と言う九尾達が人の姿になるのと変わらない姿。
瞬間には自分の扱う気として、パチ、パチ、と雷が踊るように起きまた自身の体も電気を帯びた状態でこちらを見ていた。
【俺がここまでしたんだ………楽しんで良いんだよな?】
ニヤリ、と笑うと同時に青龍の姿が消えた。
「!!!」
咄嗟に麗奈を放り投げたのと、自分の腕が斬り落とされたのは同時。痛みに顔を歪める暇もなく、頭上から立て続けに落とされる雷。
「ランセさん!!!!!」
【少し待て】
「むぎゅ。むぐっ、むぐぐぐ!!!」
空中で立て直す前に青龍に抱えられて口を塞がれる。驚いて抗議すると、ずっと「むぐぐぐ」とくぐもった声におかしそうに笑われてしまう。思わず睨めば【そんな元気あるんだな】と、大事な物を扱うかのように顔に触れ髪に触れ、愛でられているような感覚にくすぐったい、と思うが体に力が入らない。
「っ、何、これ……」
【暴れるとこちらが困るからな。少しだけ、霊力を貰った】
封印の札を用意する間もなく、簡単に抱き止められてしまった。しかし同時に自分に流れ込んでくる雷の気に思わず青龍を見る。
【安心しろ、呪いの力は俺には通じない。だが戦うのは好きでね。強い奴が居るのを感じ取ってワザと、呪われているフリをしていた。許せ、主よ】
「あ、主………?」
思わず自分を指せば、青龍はそうだと言わんばかりに頷く。そのまま自分を覆い尽くすように抱き込めば黒い雷が青龍の頭上目掛けて狙って来る。それを予備動作もなく、結界を張り屈折させる。
「君等、麗奈さんに何の用なのさ」
呆れたように、しかし殺気を込めた声とギロリと青龍を睨む。ランセは白虎にまたがっており、白虎も怒りの視線を青龍に向けている。1人と1匹に睨まれたのが自分の事だと勘違いした麗奈はビクリとなり「ご、ごごご、ごめんなさい!!!」と、涙目になり謝っていた。
【主を責めるな。俺が芝居しただけだ。あの騎士団達や陰陽師、霊獣には少々痛い目を見せたがな】
「………ちっ、芝居ってのは本当のようだね」
【当たり前だ、俺は主と決めた者にだけは甘い。他の連中は呪いに負けても構わないが俺は竜神の子供。神と名の付く者が呪いに負けるなど格好がつかないだろ】
その言葉に白虎はピクリ、と耳を動かした。そしてみるみるうちに、不機嫌になっていくのが分かる。ランセも静かに退いており空中で足を止めていた。
【ふっ、貴様も人の形を取れば良いだろう白虎】
その途端、白虎の周りに風が生まれ眩い光に包まれた。
緑色の着物にぶすっとした顔にはまだ幼さがあった。黒い髪、緑と黒い瞳を持った少年の姿に白い虎の尻尾。
【先輩ずらしないでよ】
出てきた言葉は否定の言葉。白虎が人の姿になった事に驚いた麗奈だったが、初代から彼等は人柱になれるのには高い霊力が必要だと言う事を思い出した。
では、彼も自分と同じく陰陽師であり当主として生きていたのか、と考えてしまう。
【お前達よりは大分長生きだがな。見てたぞ?破軍の土御門に良いように動かされていたな。クックックッ】
【あ、あれは性格悪い奴の所為!!!僕は主に攻撃なんてしたくなかったのに、呪いの所為で言う事を効かないし!!!その竜の目で人の事ばっか覗き見して………この覗き魔、変態!!!】
【自分で制御出来る訳ないだろ、勝手に見えるんだから】
【っ、やっぱりお前と話すとイライラしてくる!!】
「あ、あの……」
麗奈の言葉を無視して始まった青龍と白虎の喧嘩。ランセは溜息をしたと同時に雷と風が周囲をめちゃくちゃにしていく。
地面には衝突の度に地割れが起き、大きな竜巻が森や街を飲み込んでいき、壊れた破片は青龍やランセに向けられ人が近付けるのは容易では無かった。
「な、何……どうなってるの、これ」
キールが困惑気味にランセに聞く。なんせ目の前では麗奈を挟んで、人の姿をとった青龍と白虎が暴れていたからだ。もぎ取られた腕を再生させたランセは、何度か手を握ったりしながら調子を見ながら答えた。
「麗奈さんを挟んで喧嘩してるみたい。原因はよく分からないよ……でも青龍は元々、呪いを受けていないし、受けたフリはしたって話だよ」
「し、芝居だと……」
ガクリ、と項垂れたイーナス。それに同情の視線を送りながらもランセはどうしようかと、考え込む。キールはその喧嘩を止めようとしているのか、インファルに行くように命じるが拒否をされてしまう。仕方なしに風の魔法で上手く空中姿勢をとり、麗奈が青龍を止めている所へと向かう。
「主ちゃんに迷惑だから、さっさと終わらせてくれないかな?」
パチン、と指を鳴らしたのを合図に青龍、白虎の頭上へと水が降って来た。大量に振られたそれは水と言うより水柱でありそれによりピタリと風と雷が止んだ。
【……貴様】
「主ちゃんに掛からないようにするのは当然だろ。私は彼女に仕える魔法師であり大賢者なんだから」
いつの間にか麗奈はキールに抱えられていた。お姫様抱っこをされ、冷や汗が止まらない彼女はゆっくりとキールを見る。表情はいつもの笑みなのに、背筋が凍るように感じるのは……怒られる、とガタガタと体が震えた。
「主ちゃん?」
「ひぅ、ごめんなさい!!ごめんなさい!!!青龍の嘘は今、知ったんです。主とか言われてもよく分かりません!!!」
【涙目にさせるってどんな酷い事したのさ】
ヨシヨシ、と麗奈を奪い取り頭を撫でて落ち着かせる白虎はキールを睨む。青龍は少し考えた後、麗奈に青い球体を渡す。聞けば自分の力を封じた物だと説明され、これで自分達を行使出来ると言う。
【そこの奴に頭を冷やされたからな。朱雀も元に戻ったから、これで四神たる我々は呪いから解放された。残るは束ねる黄竜のみ。……向こうも色々と騒がしいからな】
街の中心の柱を見る青龍には見えていた。
千里眼と言う遠くを見れる目で、倒れている祐二を守るようにこの場に居ない筈の人物が黄竜と対峙していた。
呪いの影響でまともに動けず、魔法を扱うのも危険なはずのユリウスが居た。彼の後ろには黒い鱗を持ちながらも翼が時々、虹色に輝くドラゴンが居た。
精霊の父と呼ばれるアシュプと対をなすように、同じ虹色の魔力を扱うエンシェント・ドラゴンのブルームが歴史上初。人に力を貸すと言う異常事態。
青龍はそれを楽しそうに、同時に嬉しくもある不思議な気持ちに駆られた。




