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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第8章:最古の魔王
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第388話:いつもの朝と騒がしさ


 翌朝、アルビスはギリムと共に捕らえた神殺しの様子を見に行く。



「これは……」

「ギリム。今回の相手、かなり危険な奴等だってのは理解したよ。僕も認識を改めとく」



 視覚からの情報を奪い、手足の拘束もした。ただ1人分は居たと思われる空間が空いている。侵入された形跡も、存在を感知すら出来ていなかった。異様な事だとギリムは考え込むが、アルビスの魔眼はそれらを見逃さない。



「ふぅん。……口を塞いだのはマズかったのかも。どんな言葉で発動したのか確かめたかった」

「言霊か?」

「言霊に近いものかもね。禁止された言葉とか言う時点で発動する類の物だ。微かに魔力が残ってる」



 アルビスの魔眼の中で、朱色の瞳が淡く反応を示している。

 魔力を奪う力を持つアルビスの魔眼は、魔力の痕跡を追う事が出来る。それによれば、別空間に引きずり込まれて姿ごと無くなったと言う。



「……なら、捕らえた人物は既に死んでいるな。こちらが記憶を覗かれるのを防ぐ為でもあるんだろう。しかも、体ごと持って行かれたのであれば調べる範囲がかなり狭い。考えたな」

「一時とはいえ背中を預けたかも知れない仲間に、そこまでするの。ちょっと信じられない」



 そうアルビスが言いながらも、表情は冷めきっている。

 既に彼の中では、神殺しを敵としてみなしている。しかも、加減していいような相手でない事も含め情けは無用と考えたようだ。



「だが、情報を与えないと言う部分では正解だな。頭だけ持って行かず、体も回収していく準備の良さ。余達に探られるのを警戒している、という事だな」

「どうするの。これだと犯人捕まえても、全員が同じような末路を辿るしこっちが得られる情報が無さすぎるんだけど」

「時間をおかずに尋問するしかないな。様子を見る為にと一日置いたのが間違いだった」

「顔も認識魔法で誤魔化されるし、共有が出来ないのが痛いな。各国との連携が上手く出来ないし、向こうは姿もバレてないから好き放題。……後手に回るじゃんか」



 ぷくっ、と頬を膨らませるアルビスはかなり不機嫌だ。

 そう言えばとギリムは朝食を済ませていない事に気付く。一旦、会話は切り上げて食事に誘えば仕方なしと言った感じでアルビスは空間から脱する。



「……」



 アルビスを追う前に、ギリムは立ち止まり魔眼を発現させる。

 蒼い光を帯びた目は空間の歪を見付け、痕跡を追うもの。アルビスの魔眼と同様に空間に引きずり込まれた後を追跡するのは出来ない。

 追跡出来ないように細工したと見て良いと考え、ギリムはある覚悟を決めるしかないかと思った。



「人はあまり殺めたくはないが……そうも言ってられないようだな」



======



「え、ハルちゃんのパーティーに私が入るの?」

「うん。元々、れいちゃんの事を入れる気でいたからね」

「……でも、私は冒険者ギルドの所属してないよ」



 ギリムとアルビスが話をしていた頃、麗奈はハルヒからパーティーに誘われていた。首を傾げキョトンとしながら、アルベルトにサンドイッチを渡す。



「ポポ」

「よく噛んで下さいね?」

「ポフポフ♪」



 肯定しながらも、勢いよく食べてるので心配になる。ノームが微笑ましく見ながら、ハルヒが誘う理由を述べる。



《麗奈さん1人で、解決しちゃうよね。分担は必要だから仕方ない》

「解決……?」

《だって攻めも守りも出来て、治癒が出来る。なんなら斥候も出来る人なんてなかなか居ないよ》

「なかなかと言うか、ランセさん達しか浮かばないと思いますが」

「何で居るのかな、ホント」



 笑顔で威嚇するハルヒに対し、ラウルはいつものように無視。麗奈の騎士として誓いを立てたのだから当然だと言えば、だから邪魔とはっきりと言った。



「アイツに言われたの?」

「言われても言われなくても、俺が行動するのは分かってたろ」

「ちっ。面倒な……」

(ラウルさんの前で素を出すなんて。それだけ気軽になったと考えれば良いのかな)



 ゆきに言われて気付いたが、ハルヒの対応ははっきりしている。大事にする人には親切にし、それ以外は辛辣な態度だと。



(ドーネルお義兄にも、その感じだったけどラウルさんには敵意と言うか……仲悪いと言うか)

「おはようございます、皆さん」

「ベールさん、おはようございます」

「どうも」



 その時、いつもよりもラフな格好でいるベールが麗奈達に話しかける。

 ラウルは騎士団の仲間同士と言うのもあり、軽く会釈しながらの挨拶。ハルヒは睨み付けながら挨拶を返すのを見て、ベールはワザとらしく溜息を零す。



「相変わらず、君は私にも厳しい目で見ますね」

「は? 以前、酷い目に合ったのに忘れろと? 僕は無理だね、一生恨むよ」

(て、撤回……。ベールさんにも警戒心剥き出しだった)



 申し訳ないと思った麗奈は、無言で頭を下げ続けベールからは止めるようにと言われてしまう。

 彼は麗奈も含め、面白い反応を見せる人にはちょっとした意地悪をするのだと言った。



「はは、あれはちょっとした実力を試すようなもの。ハルヒ君が必死でゆきさんの事を守ろうとしたり、怪我させないようにしたりしているのが面白くて。あの時のヤクルと一緒に行動したのは間違いじゃなかったです」

「嘘つけ。僕等をワザと魔物が多い所に誘導した癖に」

「ベールさん……貴方って人は」

「帰ったらフィナントさんに言います」



 呆れるラウルに、麗奈はハルヒとヤクルに同情するしかない。ラーグルング国に戻ったら、父親であるフィナントにしっかりと伝えようと心に決めた。ゆきとアウラ、咲はどうしたのだろうかと思った麗奈がベールに聞くと冒険者ギルドに行っていると言う。



「一応の確認ですよ。例の呪いは対処しましたが、他で被害が無いか確かめようとなりました」

「え、でもハルちゃんも行かなくて良いの?」

「いいんだ、麗奈。前回、彼はちょっとした騒ぎを起こした」

「へっ……」

「失礼な。機嫌が悪い所に、お嬢さんなんて言われてみろ。投げ飛ばしたくもなるよ」

「あ、あぁ……。お疲れハルちゃん」



 麗奈もゆきからハルヒの苦労話は聞いている。

 端整な顔立ちで、ちょっと儚げな雰囲気もあるもあって女性と見間違われるのが度々あるのだと。その度、ハルヒはドスを効かせたり投げ技を繰り出したりしているのだと。



「でも、僕でなくてもディルベルトさんとナタールさんも同じ事するでしょ」

「あの2人は好き嫌いがはっきりしているから。アウラ様と咲さんに邪な事をしようならあの世行きです」

「これで僕が過激って言われるのは納得出来ない……」

《あぁ、うん。理不尽を覚えるよね、そういうの》



 ベールがそう説明し、そうならない為にとユリウスが同行していると聞き納得した。

 念の為、何かあっても対処出来るようにランセも付いているので更に安心感が増した。そう話している間、アルベルトがサンドイッチを食べ終わり麗奈の服をつつくように引っ張る。


 サンドイッチを食べたくなったのかと思ったら、彼が指さす方へと視線を向ける。いつの間に居たのか、ディークがじっと見ていた。麗奈に気付いたからか、手を振りニッコリと笑顔を向けられる。

 2階建ての飲食店で、朝市での賑わいもありディークの姿を見ても大した騒ぎにはなっていない。それ所か「気を付けろよー、兄ちゃん」と言われたりしている。



「い、今、窓を開けますね!!」

「よっと。ほい、これ」



 中に入りディークは全員分に食べ物を配った。

 ホカホカと温かく、紙に包まれた白い饅頭のようなもの。パクリと食べてみると、中に餡があり自分達が現代で食べて来たあんまんだと理解した。



「ありがとうございますっ!!」

「へへ、良いよー。昨日は皆、頑張ってお疲れ様だったからね。大本は対処したけど、念の為だからって僕等で夜通し見張って変わった所はないから脅威は去ったと見て良いね」

「え、ランセさん達の姿がないと思ったらずっと見ててくれたんですか?」

「ん。僕等が出張るのってそうそうないし、ギリムさんだけじゃなくてランセさんとサスティスさんと行動を共にするのは初めてだから。そうでなくても、魔王同士で集まるのも少ないからねー。僕は美味しい食べ物が一杯で嬉しんだけど」



 ハッとした麗奈はお代をと思うも、ディークから制止される。

 労うのに買ったのだから要らないとなり、それなら何か出来る事は無いかと聞くと「んー」と食べながら考える。



「まぁ、流石にちょっと眠いから仮眠しようかな」

「あ、じゃあ膝枕でもしようか」

「良いの……?」

「だって疲れてるでしょ? ユリィにもしてるし、良いよ別に」

「やったぁ。ちょっと限界だったから良かった」



 あんまんを食べ終わり、ディークはそのままぽすっと麗奈の事を抱きしめた。



「ふふ、麗奈って優しいね。抱き心地も良いし、これならぐっすり……」

「え、ま、ちょっ……!?」



 すっぽり抱きしめられ、そのままズルズルと寝てしまう。ノームが静かに麗奈が座っていた椅子を魔法で浮かせたりして地べたへと誘導。麗奈の負担を少しでも軽減しようと、植物の蔦を使い簡易的なクッションを作り上げる。

 ちゃっかりアルベルトが麗奈の近くへと寄り、ディークと同じように寝たのは見て見ぬ振りをする。



「……。彼、ちゃっかりしてますよね」

「あれがちゃっかりなの……?」

「流れるようにして、全部進めていったな」



 ベールがディークの事を睨みながら、もしくは羨ましそうに見ている。ハルヒは疑問を口にしつつ、ラウルはこの後の事を心配した。

 そして、ラウルの予想は当たった。

 戻って来たゆき達が膝枕をされているディークを見て、ギョッとなりユリウスを見る。



「……」



 彼は無表情でただたただ麗奈を見る。

 幸せそうに寝るディークと違い、麗奈はずっと居心地が悪かった。それを見たザジが無言で殴ろうとしている所に、サスティスが便乗する。ランセが止めに入り、ギリムとアルビスが合流するまでかなり大騒ぎをした。


 そんな中でも、ディークは起きるような事は無く。その寝顔はとても幸せそうにしており、起こすのが忍びないと思う麗奈はユリウスに対して心の中で謝り続けた。



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