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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第8章:最古の魔王
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第372話:魔眼


 魔力量が多い中、特殊な目を持つ者が一定数いる。それらの目を持つ者や総称として魔眼と呼ばれる。


 ランセの呪いを見分ける目。ゆきやキールのように、魔力を色として見られる目。ユリウスのように空間と魔力を見れる目など用途は様々。

 その中でも、かなり特殊な魔眼を持つのが魔王アルビス。彼はオッドアイにより、それぞれ固有の力を発動する。彼を前にしたら最後だと言われているのは、魔力と体力という生物にとって切り離せないものを奪い取るからだ。


 彼の匙加減で、生きるか死ぬか選ばれてしまう。

 正気の彼ならまずやらない事でもある。ギリムとの約束を破る事に繋がってしまうからでもあった。



《ごっそりと持っていったな。お嬢さんをと言うよりは……ワシを警戒してか》



 ふと、麗奈の耳に懐かしい声が聞こえた。

 契約した原初の精霊アシュプ。麗奈との契約を一方的に切った精霊の父と呼ばれた存在であり、彼女が別に付けた名前であるウォームという名前を気に入っている。



「アシュプ、何故出てこない。いや、今はまだ出られないと言うべきか」

《ふん、お前さんは相変わらず勘が鋭くて嫌な奴だな》

「余に対してのその言い方は変わらないな」



 思い出すのはよくトラブルを起こしては、アシュプがその度に説明したり謝罪をしたりなどの騒がしかった日常。それを懐かしく思いながらも、ギリムは契約者を死なせる気かと怒りを向ける。



「アシュプと彼女との間に何があったのかは知らん。だが、お前が意固地になって出てこないなんていう状況は止めろ。彼女は再会を願っている。それが分からないような頭ではないだろう」

《……お前さんには関係ない事だ。しかし、お嬢さんを死なせるつもりもない。彼が奪ったのはお嬢さんの魔力ではなくワシの魔力だ。その証拠に、お嬢さん自身の魔力は奪われていない》

「アルビスが警戒していたのは最初からアシュプだったと言いたいのか」

《そうだ。今、会話が出来ているが……実体化するのにはまだ時間も魔力も足りん》



 魔王サスクールの洗脳によってアシュプは自身の意思と魔力を奪われた。

 抵抗を試みたが、その結果は無残なものだった。麗奈と繋がっていた場合、その影響によってもっと早い段階で操られていただろう。

 その危険性に気付き、契約を破棄した。だが事情を知らない麗奈からすれば、アシュプを上手く扱えなかったからこその破棄だと思われている。


 そのすれ違いも、デューオが由香里達を招待した時に一緒に呼ばれた。

 この世界で散ったとしても、デューオが存在していればどんな状態でも再生出来る。そう――死ぬ覚悟を持っていたとしてもだ。


 だから麗奈はデューオから言われていた。

 送り返す時、必ず日課としてある事をして欲しい事がある、と。それが麗奈がいつも肌身離さす身に付けている大精霊達が作った結晶体のアクセサリーだ。

 各属性の大精霊達が、父であるアシュプの復活を願いまたその契約者である麗奈の助けになるようにとして作った特別な物。その結晶体の色はアシュプの扱う虹であり、魔力を蓄積する力を有する。



「もしかして、その結晶体の目的は」

《あぁ。子供達も、お嬢さんもワシを復活させる為の物。どれくらいの年月、時間を有するのかも分からないのに無茶をしてくれる》



 アシュプの復活の媒体としてある結晶体。

 デューオも復活を願うなら、麗奈に出した条件として毎日魔力を注ぐ事を義務付けられている。しかし、その注がれる量に規制はしていない。

 麗奈が出来る限り、許す限りの魔力を注ぐ気であれば――アシュプは今、復活していたかも知れない。



「命を削るギリギリを攻めているのか。……1度死を覚悟していたからと言ってやって良い事ではない」

《そうだろな。だが、お嬢さんはその無茶はしていない。今……守る者、生きなければいけない理由が出来た。それを自覚した上で、魔力を注ぐのだ。ちゃんと領分は分かっているだろ》

「……。本当に孫とおじいちゃんのような関係だな」

《お前さんには一番言われたくないわ……》



 その見た目で、同じ位には生きているのにと悪態をつくアシュプ。

 姿は見えないが、そっぽを向いているような気がしてギリムはクスリと笑い肩の力を抜く。



《そうそう。お嬢さんを囮に使うような真似をしてみろ。次は命が無いと思えっ!!》

「こちらとしてもあまり使いたくない手ではあるが、次からは気を付ける」

《……本当に頼むぞ》



 最後に念を押すようにして、完全にアシュプの気配は消えた。

 それと同時に麗奈の瞼がピクリと動き、徐々に目を開けていく。



「……」

「無理に話さなくていい。体力まで奪うアルビスの魔眼を見たんだからな」



 口を動かそうとして、その力もない事に気付く麗奈。心の中でお礼を言い、ザジとアルベルトを気にしている様子にギリムは説明を続ける。



「2人が倒れてすぐに余が介抱した。今、アルビスの相手をしているのはサスティスだ」



 それは大丈夫なのかと言いかけ、心の中でそう訴えた。

 同じ魔王同士なら、魔眼の抵抗力はあるらしく麗奈とザジのように持って行かれはしないと言う。



「ザジの方も今はアルベルトが様子を見ている。彼等の抵抗力がアルビスの予想を超えていたのだろうな。今はサスティスが押しているがいつまで持つか」



 一方でサスティスはアルビスとの殴り合いに発展していた。

 元より魔法での応戦では、アルビスの魔眼によって相殺される上に体力をも奪う仕様だ。しかし、ギリムは魔眼を使う程に追い込まれていてもまだ加減がなされていると判断している。


 それはサスティス自身も感じ取っていた。

 この殴り合いの中でも、アルビスは未だに鎖を出していない。あの鎖に触れれば、サスティスの魔力も体力も強制的に一般人並みにさせられる。

 あれで拘束して一方的に攻める方法も取れるのに、目の前のアルビスにはその動きをする動作も見えない。それどころか、サスティスの戦い方に合わせたかのように接近戦を行っている。



「なら腕の一本は安いかな……」



 小さく呟き、サスティスはアルビスの視界を縫うようにして姿を消す。

 場所は出口のない石造りの広場。ザジとの戦闘で激しくしていたのもあり、陥没した床や破片がその辺に散らばっている。

 その破片の音からアルビスは、サスティスの現れる位置を予測して強力な蹴りを放つ。



「ぐぅ、怖いな……」

「……」



 魔力を込めた蹴りはサスティスが防御態勢にした腕を折り、距離を取ろうとしてその足を掴まれている事に気付く。

 一瞬だけ動きを鈍くしたアルビスに、隙をつくようにサスティスが拘束し意識を奪おうとする。



「っ……ぐ……が……」

「本当に参りますよ。貴方のそれはまだ()()姿()なんだから……。本来の姿なら勝てないのは私の方ですよ、先輩」

「っ……っ……!!」



 アルビスの瞳の色が、オッドアイから本来の黒い瞳へと変わる。

 ガクンと体が落ちてすぐに拘束を解く。ギリムが2人の様子を見て、アルビスが気絶している事とサスティスが腕を一本犠牲にして動きを止めた事に呆れ果てた。



「再生するからって……」

「こうでもしないと、動きを完全に止めるのは出来ないですよ。本来の姿で戦っていた場合、魔眼を使われた時点で負けはこっちが確定しているのに」

「サスティス、さん……」



 フラフラと立ち上がる麗奈に、サスティスが素早く駆け寄る。支えようとして腕が1本だった事に気付き恰好がつかないと思った瞬間――ザジからの頭突きを喰らった。



「ふぐっ……」

「お前、腕を……ってあれ」

「ポポ―」

「はぁ……。気絶者を増やすな」

「す、すみません……」



 ザジとしては軽くのつもりだったが、当たり所が悪かったのはサスティスが気絶してしまった。青ざめるザジに、アルベルトがポン、と手を置き「諦めろ」と言ってくる。ギリムはアルビスを診た後で、改めてザジ達の様子を診る。


 サスティスが気絶から目を覚まして最初に行ったのは、ザジへの説教だった。

 次に麗奈とザジの体調が平気かの確認をしアルベルトが手を上げて自分は元気だよとアピールをする。そんな騒がしさの中、気絶させられ正気に戻ったアルビスが目を覚ましていく。


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