表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第8章:最古の魔王
413/433

第366話:ある約束


 朝、麗奈がいつとのように柱の様子を見に行こうとした時だった。こちらに声をかけて来たリーズヘルトと話をする事になる。彼女の傍には風魔と白虎がおり、じっとリーズヘルトの事を見ている。

 麗奈と共に、柱の様子を見に行こうと約束をしていた誠一は場所を変えようと提案した。



「すまないね。朝早くから動くのだったね」

「今日はその予定でして……。昨日は早く寝ました」



 ヘルスとイーナスからは、接触は避けるようにと言われている。 

 フォーレスがラーグルング国に来た目的が、スケルトンの退治だけではないと感じているからだった。光の使い手が居ないフォーレスでは、対抗出来る手段はほぼない。


 生ける屍となっている相手に対して、物理的に対処してもそこからじりじりと動く。破片になったとしても動くので、下手に攻撃出来ない。魔法の対処が最も効果的であり、尚且つ光の属性と聖属性の魔法が有効。


 キールの話では、麗奈とユリウスが扱う虹の魔法にも同様の効果が見られるだろうとしている。

 そして、リーズヘルトは麗奈達が空から落ちて来る所を見ている。その背に、伝説として知られている天空の大精霊であるブルームが居るのも確認されている。


 魔物の大移動で、麗奈は大精霊達の召喚を行いユリウスはブルームとの魔法を行使した。

 圧倒的な力を見れば、どうにか自国に取り込めないかと動くだろう。ユリウスは、ラーグルング国の王族である為に無理には言えない。

 しかし、麗奈の場合は違う。

 彼女は、父親である誠一も含めて別世界の人間である異世界人。 

 保有する魔力量は多く、特に麗奈は世界を創造した神であるデューオに気に掛けられている。



(だからこそ、ユリィに接触するよりは私にって事だよね)

「立ち話もなんだと思い、ここにしたが平気だったかな」

「えぇ、構いませんよ」



 彼等が居るのは騎士訓練場だ。

 朝稽古をしていたリーグとリーナの騎士団、セクトと姉のイールが率いる騎士団は当然ながら驚く。その際、イールが宰相のイーナスへと報告に向かったのか慌てているのが見えた。

 麗奈は心の中で謝りつつ、誠一が用意した麦茶を一口飲んだ。



「フォーレスでもお茶はよく飲まれるのだけどね。こうしたお茶は初めてで、私を含めた部下達は喜んでいるよ」

「そうでしたか。確約は難しいですが、帰られる日までにいくつか用意いたしますよ」

「それは嬉しいです。……そんなに警戒しなくて平気、と言って良いか分からないけど。私は話をしたいだけなんだ」

「詳しい事は、あまり言えないですけど」

「それも分かっている。色々と止められているのだろうしね」



 言葉に詰まる麗奈に、リーズヘルトは肩の力を抜いた。

 彼は個人的には麗奈を招待という形でフォーレスに来て欲しいと言った。その際、自国に引き込むような真似はしないという約束をした。



「本国にも言うけどね。勘違いしないで貰えると嬉しいが、この国の様子を見聞き出来るだけでも十分な収穫だよ。魔族の侵攻で滅んだと噂で聞いてから」

「……」



 チラリと麗奈は横目で見る。

 話をしたいと言ったのは本当なのだろう。手持ちの武器もない丸腰な上に、服装は随分と動きやすいものになっている。リーグの話から、時たま訓練をしたり魔物を狩ったりしており身体能力はかなり高いと聞いている。


 何らかの条件、もしくは手段を使って麗奈をフォーレスに引き込むような真似をしてくるのではないかと危惧していたがスケルトンの退治をお願いしたのも事実。この2週間、それなりに過ごしながらも自国の心配は当然するだろう。

 リーグ達のように、部下や国民を守るような立場なら尚更に。



「あ、あのっ!!」

「ん?」

「ちょっとだけ待ってて貰えますか。お父さん、その間に」

「慌てなくていい。行って来なさい」

「――うんっ!!」

『嬢ちゃん、俺に乗れ。特急で行くぜっ!!』

「お願い、九尾っ」



 九尾の背に乗り、麗奈は一気に駆け上がった。それを見たリーグは風を使って追いかけていく。

 突然の麗奈の行動に、リーズヘルトは不思議そうに見ていると隣に誠一が座る。



「私達は、人助けに近い職業をしているんです。困っている人達を全て助けたい、とまでは出来ませんが出来る範囲はやり遂げる気でいますよ。それと同時に、自分の力がどんな影響になるのかも熟知しているつもりです」

「……」

「貴方の予想通り、娘の影響力は凄まじいですから」



======


 イールから報告を受けていたイーナスは、執務室に飛び込んできた九尾と麗奈に驚く。

 部屋をぶち壊さずに、窓を開けスピードに合わせて入る。9本の尾を器用に使い、疾走感はありつつも部屋を壊さずに来たのは麗奈の部屋に幾度となく飛び込んだ事があるからだろう。



「それで? どうしてここに来たのかな」

「うっ、イーナスさんに相談が……あります」



 ギュッと九尾の毛並みを掴み、彼は尻尾を使って麗奈の事を撫でた。

 それだけで大丈夫だと言われているようで、少しだけ力が出たような気がした。



「……」

「ダ、ダメでしょうか」



 イーナスにお願いをしたのは、リーズヘルト個人としてはフォーレスの引き込みはしない事。麗奈は精霊の子供達をフォーレスに住まわせる提案をした。

 魔力の塊であり、大きな力を持った精霊の子供はその土地の情報を学習し自分達の力になるように成長する。まずは様子を見ると言う意味でも、先に子供達を住まわせて経過観察をしようというもの。


 ノームの話によれば、その子達だけでも結界は作り出せるので防衛になるのだとか。

 先に様子を見るという観点からも、この案では難しいかと聞いた。



「彼個人としての権限がどこまで効くかにもよるけど……。様子を見ると言う点では良いのかな」

「っ、じゃあ……」

「精霊の姿が見えなくなったのには何らかの強い力が働いたか、魔力汚染の影響を受けているんだと私達は考えているんだ。それによって、この世界の基盤を壊そうとしているんじゃないか……と言うのがギリムさんからの意見であり、魔王組の考えだよ」

「神殺しの罠……とも受け取れる、という事ですね」

「既に何らかの影響は出ているし、ハルヒ君が接触した相手が何処に居るのかも分からないからね。君達をそんな危険に向かわせたくはない。でも……」



 ヘルスの言うように、デューオから接触するように仕向けられた事も考えられ思わず口をつぐんだ

 ユリウスには伝えているが、麗奈にはまだ伝えていないのだ。デューオが気に掛けている人物が麗奈なので、彼女の行動は観察対象として入っている。

 創造主の思い通りに動くのは嫌な気分だと思いつつ、そうしないといけない何かがあるのだろうとも受け取れる。



「大丈夫です。サスティスさんやザジも居ます。もし行くような事になったら、必ず相談しますしハルちゃん達にも情報を共有します」

「まぁ、うん。それはそうなんだけどね……。定期的に報告し合っているし、ハルヒ君達からも全面的に協力するって方向で動いて貰うつもりだよ」

「じゃ、じゃあ……」

「まずは様子見として、精霊の子供達を住まわせて影響を見てみよう。この件に神殺しの影がちらつくのなら、すぐにギリムさんに相談。魔王達の意見も交えたいからね」

「っ、ありがとうございます!! すぐにリーズヘルト様に伝えてきます」

「え、あ、ちょっ……」



 イーナスの制止を聞かず、九尾に乗って麗奈はリーズヘルトの元へと急ぐ。

 色んな所に駆け回る麗奈を見て、イールは「いつもの調子だね」と言いながらも楽し気にしている。その後、誠一と話をしていたリーズヘルトに決めた事を伝えた。


 一瞬、彼は驚いたような表情をしたがすぐに「感謝する」と言って深くお辞儀をした。

 リーズヘルトは、麗奈から渡された3つの指輪を見つめる。この中に、土地の浄化を促し成長すると言われている精霊の子供が入っている。


 魔力を少し持っているリーズヘルトは、強い魔力が込められている魔道具に驚き製作者であろう麗奈の力量を改めて再認識。彼女との関係は、自国に引き込むよりもこうした協力関係の方が良いのだろうと自身の勘を褒めたい気分になる。



 そうして2カ月が過ぎた頃、フォーレスの国境付近に集まって来ていたスケルトン達の姿が見なくなり穏やかな日々が流れる。これで一安心かと思いきや次に起きた問題は、砂漠地帯にしか生息しないと言われているサンドワーム達の侵攻だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ