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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第8章:最古の魔王
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第363話:皆の反応が怖い


 麗奈は自身に力を貸してくれた大精霊達を、元の契約者達へと返すと決めており皆が集まれるようにイーナスに手配を頼んだ。

 各国の重要人物だったり、国同士が離れているのもあり麗奈自身が向かうよりは一気に返した方が良いと思ったからでもある。それと同時にゆっくり話せる時間も作れたら、とも思っていた。



「れいちゃんの好きなタイミングで良いのに。休んでる方が貴重だよ」

「あはは……。そんなに働いてるイメージがある?」

「うん、あるね」

「即答なんだね。ハルちゃん」



 ズバッと言いたい事を告げるハルヒに、麗奈は珍しくタジタジになる。

 そんな麗奈の様子をゆきは嬉しそうにしており、自分以外で麗奈の事を任せられるのはハルヒなのだと思っている。

 同じ異世界人であるハルヒは、麗奈と同じ陰陽師。

 彼を保護している国は、ラーグルング国と同じ結界を用いた防衛がある。今までは、ハルヒの式神である破軍が担っていたがラーグルング国での結界と同じく、誠一達の契約している霊獣だけでも同様の働きが出来る事が証明された。


 今までハルヒに頼りきになっていたニチリが、誠一と武彦、麗奈、裕二と一気に術者の使い手が増えた事で結界のメンテナンスもやりやすくなった。それと同時に、ハルヒもラーグルング国の結界の維持を見れるようになり互いの調整が依然と比べると(はかど)ったのもある。



「そう言えば、破軍は役に立ったの? 一応、戦力として置いてきたけども」

『ちょっと主。その言い方は無いんじゃないか? ちゃんと役に立ったとも。ねっ?』



 2人の間に割って現れる和服を着た男性。

 ハルヒが契約した式神の破軍だ。パタパタと扇を振り、役に立ったのだと言うアピールをしている。それを拒否しているのは、麗奈が契約した黄龍だ。



『お前がやったのは、結界の維持だろ。あの時の主は、弟君と同じくかなり疲弊してたんだ。術の行使は全く出来なかったんだから、意識を保つように俺等で頑張っただろう』

『それをいかにも自分だけの成果みたいに言わないでよ。私達だって頑張ったのにっ』



 文句を言うのは黄龍だけではなく朱雀も頬を膨らましている。

 それを聞いたハルヒは「ほぅ……」と冷たい視線を破軍へと送る。



『え、何その目……』

「やっぱり役に立たないのか。ふーん……」

『ひぃ、そんな目で見ないでよ~』



 すがりつく破軍にハルヒはうるさいとばかりにその手を振り払う。

 いつものやり取りに、麗奈とゆきが笑っているとノックをする音が聞こえ対応にゆきが出向く。楽し気な声が聞こえすぐに中へと案内された。

 入って来たのは、異世界人である咲だ。騎士国家ダリューセクに保護をされ、恩返しの為にと今まで奮闘してきた。

 キールと同じ大賢者という相当の魔力量を誇り、精剣であるフェンリルとの契約に成功している。



「会いたかったよ、麗奈ちゃん!!」

「私もだよ、咲ちゃん!!」



 わーい、と喜び抱き合う2人にハルヒも自分も同じような事をしたなぁとしみじみと思っている。

 遅れてニチリのアウラ姫と義兄のディルベルトが入り、咲と共に来てたナタールとも合流。彼等の集まっている部屋の前では、ヤクルと兄のフーリエが見張りとして立っている。



「そう言えば、僕達が手掛かりを探している間の1カ月は何してたの?」

「あー……それは」



 視線を外し、これを話していいものかと迷う。

 しかし、ディルバーレル国のドーネル王に話した時にもかなり驚かれているのを知っている。その時のイーナスとヘルスの表情は読み取れず、弟のユリウスも一切視線を合わせようとはしなかった。


 ランセとキールは揃って「あの神、ホント死ね」と罵倒しているのを傍で聞き、麗奈も生きた心地がしなかった。



「……」

「え、何。そんなにヤバい状況だったの?」

「私も知りたかったけど、ハルヒと咲ちゃんとも合流するからって我慢してたの。誠一さん達も、頭抱えてたよ? それで私達にだけ話さないってのはダメだと思う」

「うっ」



 親友のゆきに話さなかったのは、ハルヒ達と会うからという条件で待ってもらっていた。

 裕二にしては珍しく殺意を覚えたと冷たい声を聞き、武彦と誠一が無言でいたのがただただ怖かった。各々の反応を知っているからこそ、話したくはないが仲間外れにするのもなぁと迷っていると――。



「諦めて話せ、麗奈。どうせ俺達と同じ反応をするんだ。一応の共有は必要だろ」

「ヤクル……」

「そうですよ麗奈さん。私は未だに憤りしかないですが」



 ギリッ、と固く拳を作っているフーリエが怖く思わず黄龍と朱雀に助けを求めてしまう。

 だが2人は無言で首を振り『無理無理』と拒否をし、破軍からも諦めようと言われてしまった。



「じ、実は……。私達はその1カ月、ずっと目が覚めない状態だったの。理由は――」



 サスクールとの戦いで、自分達の存在ごと消える寸前であった事。

 死神のザジと麗奈とユリウスの魔力で作られた新たな虹の精霊であるヴェルのお陰で、ギリギリの状態を保っていた事。

 ユリウスと共に居ると反発により、再び体の崩壊が始まりかけていた。

 その治療には、別の創造主の協力を得た上で治療と感覚を取り戻すのに2カ月は居た事を話す。だからこそ、麗奈もユリウスと会うのはかなり久々なのだと恐る恐るの中話していった。



「い、以上……です」



 皆の反応が怖く顔も上げられない麗奈は、ずっと白虎と風魔の事を強く抱きしめている。

 かなりの強さが込められているが、文句も言わずただただなされるまま。白虎が『それでね』と補足をし始める。



『向こうには3カ月位居たのかな? でも、別世界の時間間隔だしこっちに合わせてると思うけど。目が覚めるのに時間は掛かったけど、こうして存在してるんだ。それに、主だってただ寝てる訳じゃないよ。魔法だって新しく覚えたんだから』

「その前に存在が消えかける位に、疲弊させられたってのが……ね」

「うぅ、早めに連絡出来なくてごめん」

「いや、無理でしょ……。そんな無茶な要求しないよ、僕だって」



 創造主からギリギリまで使った力の影響で来れないと、聞いてはいたが実際は存在が消えかけている事だとは思わない。そう思うと、デューオの言っていた事は全てが当てはまる。2人の性格を考えれば、自分達が無理に会いに行けば治療を優先としない事。

 無理して動くのは目に見えている。だって、あの2人も心配を掛けさせたくないからだと知っている。



「……そんな危険な状況にさせたアイツ、やっぱムカつく」

「皆が怒るのは無理ないね」



 リーグはずっとふくれっ面であり、いつもなら落ち着かせている筈のリーナが何もしないでいる。その時点で、自分達の力不足も含めて悔しい気持ちの方が勝るのだろう。



「俺と団長は、力量不足を痛感してる。2人に背負わせてしまった、と思ってるからな」

「ラウルさん……」



 麗奈の騎士であるラウルも当然この場におり、デューオへの憤りよりもそうさせてしまった事への後悔が強い。麗奈の魔道具がなければ、全滅していたであろう事はドワーフ達から聞いている。



「デューオ様も、そこまで追い詰めたかった訳じゃないから。干渉するのに色々と制約があるみたいで、最悪の場合はユリィの体を乗っ取って力を行使する気でいたんだって聞くし」

「……創造主への適性が高いんだ」

「ラーグルング国の王族は皆そんな感じになるみたい。特にユリィはそれが高かったみたいで」



 ハルヒは恨めしそうに天井を見る。

 今、この瞬間にもデューオには見られているだろう。更にこの世界の神を嫌いになったなと思うが、彼が居なければアウラ達にも会えていないのだ。

 そこだけは感謝しないといけいない。そこだけは、と区切りをつけハルヒは切り替える。既に何度も自身の力不足を痛感してきたか数えるのは止めた。


 前に進む。今の自分が出来る事とは言えば、無事に戻って来た2人を再び無理させない事。その為に、もっと自分の力を高める必要がある。



「ポセイドン達がれいちゃんの助けになったのなら良いんだ。今、こうして無事に戻って来ている。僕はもうそれで十分だよ」

「ハルちゃん」

「だからって、何でもかんでも首を突っ込んでいいとは思わないよ。その辺はきっちり止める。無理矢理だろうとね」

「あぅ……。ハルちゃんの本気度が凄まじい事になってる」

「やっぱりあの神様には、何発が殴っておく必要があるよ。こっちに頼った結果、2人が大変な目に合いましたって言って、後悔させたい」



 どんどん嫌われていくデューオに、麗奈は心の中で謝り続けた。

 存在の消滅ギリギリになってしまったが、こうして帰還できたのはそのデューオのお陰なのだ。感謝しても足りない位なものだが、口に出す訳にはいかないと黙ろうと決めた。



(感謝して落とされたのは、ショックだったけど……)



 酷い目にもあったが、大切な人達に会えたこの世界を嫌いになる事はない。

 そう思っての感謝を伝えたら、ザジ達とまとめて落とされたのだ。これがツンデレという奴か、と思っているとフェンリルの声が響く。



《話をしている時にすまない。俺達を返すのなら、あの泉でやって欲しい。あそこなら広さも十分だし、俺自身もその後の泉の様子を見に行きたいのでな》



 そうか、と麗奈は思った。

 フェンリルは、ツヴァイと同じくディルバーレル国の泉で生まれた。最後に離れたのは、ダリューセクの危機を感じ取った後。

 泉の様子も気になっていたので、この機会に出向きたいという事だろう。

 咲はフェンリルが生まれ育った場所なら、行ってみたいと乗り気でありハルヒ達もその意見に賛成した。


 すぐにドーネル王に連絡を付けると、同盟を組んでいるから自由に出入りして良い上に許可を得なくて良いと言われた。



「あ、そうだ。今度」



 話が長くなると感じたハルヒは、即座に通信を切った。

 青ざめる麗奈にゆきは「あぁうん、やるよね。ハルヒなら」と納得しており、咲は何も見なかった事として既に切り替えている。

 こうしてディルバーレル国の泉に向かう事になり、ハルヒ達はついに自身と交わした大精霊達との再会をする事となる。



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