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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第7章:神の試練
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第332話:2人の子供


 創造主デューオから聞かされた爆弾発言。

 自身が作った世界の中で、特に恩恵を受けるのに血の繋がりを必要としたのがラーグルング国の王族だと言う。ユリウスの父親は幼い頃、何度か死神として働いているデューオを見た事があった。


 その時はただの夢だと思っていたが、いざ自身が死ぬ時になり見覚えのある気配に納得した。



「貴方にとって、魔力の受け皿になるのが我々だったという事でしょう。死んでみて実際に貴方と会った時に全てが分かりました。しかし、創造主様が悪いように伝わるのはワザとでしょうか」

「まあね。神様が見ている、と言って誰が信じてくれるのさ。それよりも、悪い事をしたり死を予見した時に現れる死神でいる方がよっぽどこの世界の観察者としては良い感じでしょ」

「うわ、性格悪っ……」

「ユリウス。君、ホント言いたい放題だね」



 呆れた様に言うも、ユリウスは気にした様子もなく平然としている。しかも神を前に睨みながら答えているので麗奈はハラハラした気持ちで見守るしかない。そんな時、コソッとザジが教えてくれた。


 ユリウスが毛嫌いする理由について。

 麗奈がサスクールに連れ去られる前、ランセが駆け付けるもその正体がヘルスだった事に隙をつかれた上に致命傷まで負った。その傷を咄嗟に治そうとした麗奈は、魔力の反発があるにも関わらずに力を行使し気絶。

 その時の場面をユリウスは見せられた上に、デューオからの妨害にあっていた。

 すぐに助けに行けなかった後悔と行方不明になっていた兄の居場所が同時に分かり、デューオから更なる選択を迫られた。


 兄ヘルスと麗奈、どちらを手に掛けるのか――と。



「そ、れは……。性格が悪いと思われても仕方ないですね……」

「えっ!? だから前にも言ったけど、あの時のは試練だって」

「あの選択のさせ方は最悪だって言ってんの!!」

「覚悟を決められないならどっちにしろダメだろ。私としては、その時に迫られるよりも前もって伝えている優しさってものが」

「どこに優しさなんてあるんだよっ」



 言い合いがヒートアップするデューオとユリウス。

 ザジは由香里に抱きしめられているので、動くに動けないでいる。ただ、睨むのは忘れていないのかかなり鋭くなっている。

 その気になればいつでも殴れるようにしている位には。



「でも結局はどっちも救ってみせてるんだから、偉業を成した事に変わりはないよ。こっちだって、まさかサスティスがエレキと交渉して干渉までしてくるなんて予想してなかった。コソコソと動いているのは分かってたけど、あんなやり方を行使するとは驚きだよ」

「そう言えば、あの女神はデューオの事を毛嫌いしてたな。……アンタ、意外に嫌われ者か」

「ぐっ……」



 途端に黙るデューオに、図星かと全員が思っているとペタンと座り込んだ。



「そうだよっ。エレキには真面目になれって怒られるし、何故だから君等には嫌われるしで!!」

「確か不真面目のがイライラするって言われていたな」

「ユリィ……。ここぞとばかりにやり返してる」

「良いさ。アイツ、飄々としてるのもムカつく」



 ザジが満足げに言うが、未だに由香里から抜け出せていない。今も抱きしめられており、嬉しそうにしている由香里を突き放す事が出来ない。ザジのそういう性格も察しているなぁと思う麗奈は、ポンポンと軽く頭を撫でた。



「だからっ!! 親子揃ってそう言うのは止めろ」

「ごめんごめん」

「ニヤニヤしてもだらしないよ、麗奈」

「お母さんこそ。ずっとザジにべったりじゃない」

「ふふふ。だってザジ、可愛いんだもの」



 ザジは未だにユリウスに向けて視線で訴えている。抜け出せないからだと言うのは分かるが、由香里が頑固なのは知っている為に助けられないと伝える。

 予想していた言葉だが、実際に言われるとショックを受ける。ぐっ、と悔しそうにするザジ。そんな彼の様子を気にする事なく由香里は、嬉しそうに頭を撫で続けた。



「結局、虹の魔法って始まりの魔法って呼ばれているけど……。アンタの目とも関係があるのか」

「そりゃあね。魔法の適性を良くするのにってのもあるけど、一番はそっちに降りる時に発見できるようにしたんだよ」

「……降りる?」

「もしかして、干渉しやすくする為にユリィ達との繋がりを強くしてた……とか」

「そうそう。そんな感じ」



 そう言えば、とユリウスはある事を思い出す。

 幼い麗奈がサスクールに連れ去れるという時、彼はアシュプに向けて指示を出していた。止めれる手段を用いるなら、デューオ自身が止めに行った方が良いに決まっている。

 自身で創ったとはいえ、そう簡単に干渉は出来ないとも前に話していた。

 そして麗奈の言うように、ユリウス達王族との繋がりを持つ事で世界への干渉を可能としているのなら、という考えに至る。



「そういう事なら、ラーグルング国じゃなくたって」

「何言ってんの。アシュプがその国を守護するのに位置を決めてしまったんだから、私もそれに合わせないとズレが生じる。降りるって言うよりは、憑依に近い感じで世界に干渉する気でいたんだ」

「憑依……」

「体の主導権が変わるって事ですよね。見た目はユリィのままだけど、中身はデューオ様……みたいな」



 分かりやすく説明する麗奈に、ユリウスはすぐに嫌な顔をした。

 主導権を奪われるのも嫌な上に自身の意識がない間に、何をされたのか分からないのも怖い。そもそも何でそんな事をする必要があるのかと質問をする。



「悪い方向にならないように修正したいってのもある。あとは単純に、観察だけじゃ物足りないからね」

「……だったらそのまま死神の仕事でもしてれば良いだろうに」

「実際に見て触れたいっていうこっちに気持ち、分からないかなぁ」

「分かりたくもない。短命なのもそっちの繋がりをさせられるからなのか」

「いや。それはサスクールの仕込んだ種に気付けなかったこちらの落ち度だ。それは本当に済まないと思っている」

「……急に真面目になるなってば」



 声のトーンが急に下がり、調子が狂うユリウスに麗奈はその辺にしようと場を収める。

 とりあえず、とどうにか皆が無事でいたのだからと言われ引き下がる事にした。その流れを見ていたユリウスの父親は「これからも頼むな」と麗奈に微笑みかかける。



「私達はもう手出しは出来ないが、貴方はユリウスとの関りを大事にしてくれ。兄のヘルスも色々と苦労するだろうが、貴方方の家族が温かく迎えてくれたのだ。きっと助けになる」

「い、いえ……。えっと、良いんですか。私がそのユリィの傍に居ても」

「離す気はないのが分かるのに引き裂くような事は言わないさ。それに、キールが流したあの場面は私達も見ていてね。相変わらずの行動力だと、驚きもしつつも少し呆れているよ」

「「えっ……」」



 場面を見ていた、と言われ2人がすぐに思い出したのは互いの告白した部分。

 キールとラウルが隠れて聞いていたのも驚きだが、キールはその内容を国全土にバラらしたのだ。ラウルとイーナスに追い掛け回されたキールは、その後も懲りることなく独断が多い。



「っとに……アイツ、戻ったら説教だ」

「うぅ、あれを見てたって……もしかしてお母さんも見てたの?」

「うん♪」

「か、勘弁して……」



 互いに顔を赤くした上、麗奈はペタンと座る。と、そこに「キュウ~」と甲高い声が聞こえユリウスの方へと突撃をした小さな影。



「ヴ、ヴェル!?」

「フキュウ~。キュウキュウ!!」



 泣きながら2人を探していたと訴えた上で、次にデューオへと標的を変えて突撃。しまいに、炎をぶつける大惨事になるがデューオには効かない。それが腹立たしいのか、更に攻撃が過激になっていく。



「告白ついでに言っておくと。この子、君達の子供でもあるからちゃんと面倒見てね」

「はい!?」

「なっ……!!」

「だって君達の魔力を混ぜて創ったんだ。始まりの魔法でもある虹も扱うし、全属性にも適応。魔力量だけならブルームよりも上だ。今からちゃんと育てれば、彼にみたいに力が抑えられないなんて事もないし」



 デューオの話によれば、同時に契約者を得たのも初めてだからこそ出来た事。ブルームが契約者を得る事自体が奇跡に近いのだと言う。

 そんな契約をなしていたユリウスと麗奈。だからこそヴェルを生み出せるだけの力が生まれた上に、最初から2人に好意的なのだと説明をする。



「私の事が嫌いなのも、ユリウスが嫌いだと思えば理由なんかなくても嫌うよ。だって親が嫌ってるんだ。子供は真似するのもだろう?」

「あらら。気付かない内に子供も居たんだ。でもそっか~。アリサちゃん、だっけ。2人が面倒を見るって決めていた女の子も居たし将来は安泰ね」

「面倒を見る、だなんてどこかの誰かさんを思い出すわ」

「……こっちを見ないでくれ」



 そっぽを向くのはユリウスの父親であり、彼はキールの母親であるセルティルを事情があったとはいえ国に滞在していた期間がある。しかも、何の相談もなしに勝手に、だ。そういう衝動的に行動を起こすのは親子だと言われ、ユリウスはギクリとなる。


 相談もなし、の部分で咄嗟に思い出したのはリーグを国に置くと決めた時だ。

 あの時もイーナスに相談しないで決めてしまったと青い顔をすると、バチリと目が合い「次から気を付けなさい」と微笑みかけた。



「す、すみません……」

「麗奈さん。ユリウスはこういう子です。貴方がしっかり手綱を握った上で、色々と教育して下さいね」

「わ、わわわ、私がですか」

「そうよ。ヘルスは麗奈さんに甘いだろうし、困った時にはお互い様と言って勝手な行動をするんです」



 その後、今までの分が溜まっていたのかユリウスの父親のダメなエピソードと自信の苦労話を話し始めてしまい、本人はずっとそっぽを向くしか出来ない。ユリウスとしては、あまり父親の過去を知らないので聞こうとしたが話の矛先が、自身に向き始めてからは同じように視線を逸らすしか出来なかった。


 ザジは心の中で(女って強いんだな……)と、自分も被害を食らわないようにしようと懸命に聞き入りヴェルはデューオへの攻撃を止めた。落ち込んでいるように見えるユリウスに近付き、ピタリと寄り添う。

 好奇心旺盛で、ユリウスと麗奈の言う事は絶対に聞く。

 それがまさか2人の魔力を使って創った存在だという事実に驚きながら、力になろうとする行動は自分達が親だからと妙に納得したのだった。


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