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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第7章:神の試練
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第321話:見えた未来


『いやー、まさか死んでから別世界に来るなんて思ってもみなかったね。創造主が違うけど』

『その割にはお前、楽しんでんじゃん』



 天使族が住む世界を見て、感動する破軍に対し黄龍はそう返す。

 幼馴染と話しているからかハルヒと話す時は違い、かなり砕けた態度の破軍。そんな黄龍に対して破軍は『楽しまないとねー』と開き直る。



『主と離れても具現化出来るとは思わなかったからね。……れいちゃんの霊力の高さは優菜譲りってのは分かってたけど、それ以外にもなんかあるのかな』



 破軍が驚いたのは、主であるハルヒと契約しているからこそ消滅すれば自然と元に戻るはずだったのだと話す。しかし、実際は麗奈の協力を得て魔族のユウキを倒している。その不思議さを指摘すれば、黄龍の態度が急に変わった。



『……流石に、お前には分かるか』

『やっぱり青龍の影響?』

『まあ……な。それ以外、原因なんて見付からないし』



 優菜が青龍と契約を交わし、その恩を青龍が陰陽師への力になるように変換。

 巫女の一族として力を備えつつ、怨霊に対する封印術を会得。その後、異端とされながらも確実に結果を残している。

 その上、陰陽師の発展になるようにと尽力もしている。

 そんな彼等に、何か裏があるんじゃないかと疑うのは土御門家の上層部と、その家々に協力している他の陰陽師家の者達。

 そしてそう思わせてしまう要因を作っているのは、竜神の子供である青龍と契約を交わしてしまった優菜。良かれと思っての行動は、気付かぬ内に火種を引き起こしまたは引き寄せてしまうのだろう。



『優菜も今の主も、ありのままの青龍を見ている。それは周りから見れば、異端に見えるし畏怖の対象だ。いつだって面倒なのは、俺達人間の欲ってもんだ』

『……いつの時代も、その欲によって滅ぼされる者達はいるんだがな。今の主達には平和に過ごしてほしいってもんだよ』



 悲し気に言いながらも、破軍も黄龍もこの世界に彼女達が来て良かったと思っている。

 魔法という陰陽術とは違う力が浸透している世界。危険は現代よりも多いが、彼女達をありのまま見てくれる者達が居る。

 だからこそ麗奈もハルヒも、自分の力を隠す事なく使う。

 ありのままの自身を見てくれるからこそ、現代よりも伸び伸びとしている。



「あ、黄龍に破軍さん!!」



 そんな2人にかかる明るい声。

 夜になるとこの世界は少しだけ肌寒くなる。現に麗奈も厚めの上着を着て2人を迎えに来ている。白虎に乗って来た嬉しそうしていたので、黄龍は何か良い事があったのかと聞いた。



「ザジがフェンリルさんと仲良くなってくれたの。フェンリルさん、死神の事を毛嫌いしていたから改善されて嬉しいなって」

『そっか。あの狼さん、やっと心を開いたんだ』

『……そう言えば、あの死神ってれいちゃんの知り合いだったんだよね。そりゃあ、必死になるか。可愛い子を守るのは男の役目だし』

『破軍、頭でも打ったの?』

『黄龍。お前の部下、失礼過ぎだぞ』



 キョトンと返す白虎に、破軍は睨み付けながら黄龍へと抗議。

 しかし、黄龍は普通だろと返し破軍の空気が変わる。



『お前……。昔から部下の教育は苦手だったな』

『あー、そうだったか? かなり昔だからもう忘れた』

『おい』



 破軍と黄龍のじゃれあいに、麗奈は幼馴染だったと思い出す。

 ハルヒが契約した破軍が消えずにいる事にホッとし、早く彼の元へと返したいと呟く。なんだかんだ、破軍はハルヒのブレーキ役にもなっている。

 創造主である神様に対して、失礼な事をしてしまうのではと心配になる。が、そんな彼女の考えをあっさりと否定したのは式神達だ。



『いや、無理でしょ。あの主が大人しくしていると思う?』

『絶対に無理。ってか、こうしている間にも既に殴ってんじゃない?』

『あり得る。彼って行動派だし』

「え……そんな事」



 否定しようとして、麗奈はピタリと考える。

 ユリウスの事を殴ったのはハルヒからであり、麗奈の方もお手柔らかにと言ってしまった。ハルヒが麗奈やゆきといった大事な人達を傷付けた場合、彼は必ずやり返す事と決めている。



「……無理、かも」

『あ、認めた』

『幼馴染から認められたら、ね。主、やりたい放題だよ』

「うぅ、後で謝らないと」

「そこは気にするな。デューオの性格の問題だから」



 そこに混ざる創造主であるフィー。

 ラフィという存在を作り、天使族の長としての使命を与えつつ自身の理想とする世界を作った人物。思いがけない人物の登場に開いた口が塞がらない麗奈。それをクイッ、と彼女を服を引っ張る存在が居る。


 小さくなった青龍だ。



『麗奈。口は閉じた方が良い』

「え、あ……うん、ごめん」

『えっ!? お前、何でその姿になれんの⁉』

『ねー、こっちもビックリ』

『おぉ、この小さい感じ。うんうん、私等が交流してた時の青龍を思い出すね。小さくて生意気な所とか』

「おー、俺の登場よりもそっちに引っ張られるのか」



 悔しいのか肩を落とすフィーに対し、それらの状況を全て見ていたラフィからは「個人的に話したいのなら、別室では?」と提案する。

 その考えがあったかと思うフィーはそこで殺気にも近い気配に気付く。

 まだ警戒を解いていない青龍だ。ラフィも気分が良いものではないが、警戒されても仕方ないとしているのか表情には出さない。


 少しピリピリとした雰囲気だったが、フィーが麗奈と話したいと素直に言えば式神達はコソコソと話し始める。



『違う創造主でも、ザジが毛嫌いしてる時点でね……』

『え、敵認定じゃないの?』

『黄龍、白虎が怖い事を言ってるぞ。しかもさも当然の如く、当たり前だよねみたいに言わないで欲しいんだが』

『ん-、俺は警戒し過ぎも疲れんだよなぁ』

『破軍、コイツはめんどくさがりだから無理』

『白虎、切り捨てるの早いな。もう少し上を立てるって事しない?』

『やだ。主の方が大事』

『式神らしい答えな上に、そんな純粋な目で訴えないで……』



 式神達の会議に、麗奈はフィーにずっと謝っている。

 神様に失礼な事を!! と必死になる彼女だが、傍を離れていない青龍からは未だに睨み続けられている。

 好き勝手に始める彼等を見て、フィーとラフィは(カオスってこういう事かぁ)と実感する。



「ラフィから経過は聞いている。他に体が不調な所はない?」

「大丈夫です!! 青龍達を呼び出してぶっ倒れて以降、ラフィさんから厳しく叱られたので3日おきに大精霊達を体の外に出しています」

「うん、まぁ……ラフィも厳しいが、君も相当規格外だから自覚してね?」

「そう……なんですか? 私より凄い人一杯居るのに?」



 首を傾げる麗奈に対し、ラフィは小さく溜息を吐きフィーは気付いていないんだなーと口にする。


 そこで彼は話していく。

 サスクールとの戦いを見ていたフィー達から見ても、麗奈がしてきた偉業の数々。同じ創造主であり、別世界を関する者同士な上にフィーの場合は暇があればデューオの所に遊びに行く。それこそ友達感覚のように。



「ま、そこはデューオの奴の任せるとしてだ。魔力の感知は出来る?」

「えっと、そこはまだ微妙な感じで」



 青龍達をすぐに呼び出せたのは、いつも式神を作る時の要領をやっただけ。ラフィもまずはその式神から1つずつ切り離す所から始めたかったが、その説明が入る前に麗奈が全てを呼び出した。ザジはそれを見て「無茶は普通にしてくるぞ」と警告をしている。


 ラフィもその部分を注意していたが、麗奈が一気に呼び出した事に驚きを隠せないでいた。

 その感じで大精霊達を呼び出されては、麗奈の体が保てない。それを阻止したいのに、彼女の行動が予想を超えていた。


 全てを知らないが、麗奈のように幾つかの障害を飛び越える存在は見てきた。

 恐ろしいのではなく、少しだけワクワクしている自身も居る。その変化にラフィは少なからず驚いてた。

 だが、その理由もすぐに分かった。

 ()と行動をした上に、共に見てきたからだろう。



「このまま順調にいけば、あと1か月程で全快になるな。いやぁ短くとも濃い時間を過ごせたわ」

「私も久々にゆっくり過ごせました」

「そんだけ忙しくしてたって自覚を持ってくれれば、俺としては十分だけどな」

「あはは……気を付けます」



 ぺこっと頭を下げた麗奈は破軍達と自室として用意された場所に行く。

 麗奈の回復が目的である為、それが終われば当然別れがある。だと言うのに、ラフィは自身の中で変化が起きているのが分かる。

 だが、それをフィーが止める。



「それ以上は考えるな。彼女はデューオが選んだ異世界人だ」

「……分かっています」

「俺達から見ても異質に見えるのは認める。善も悪も知りながら、それでも自分という存在を失わない。エレキの言うように、死者にも生者にも好かれてるって意味もよく分かった。再三、深入りするなって言ったよな?」

「ですが、状況がそれを許さない……。そうでしょう?」

「まさかお前……」



 ハッとなるフィーに対しラフィは変わらない笑顔を向ける。

 それが肯定である事はフィーも分かっている。舌打ちしながら髪をガシガシと乱暴にかく。



「っとに。俺自身、何でお前にそんな能力が目覚めたのか不思議でしょうがない!!」

「私としては嬉しいですけどね。確定した未来が見える。……今回はそれが嬉しい誤算で働いてます」

「あーもう、デューオが選んだ時点でヤバいのに。あの子の平穏が遠のく~」

「過保護に動いているフィー様も、十分にヤバいですよ?」



 人間は欲深い。それは寿命を長く生きている者達にとっては承知の上。

 だからこそ、その中で麗奈のように全てを分かりながらも自分の道を行く者を彼等は放る事は出来ない。それが変化を生み出すと知っているからだ。



「あぁ、あの子……これからも大変だぞ」

「今は治療を専念ですよね。その後は好きに動きますよ、フィー様」

「くそぅ……」

「最初に私の行動を見て見ぬふりをした貴方の負け、ですよ」

「ぐ、言い返せない……」



 唸るフィーに対して、ラフィは楽しそうにしてその場を去る。

 麗奈との別れはすぐに来るが、同時に彼は確定された未来に想いを馳せる。


 こことは違う世界で、麗奈とラフィは共に行動する。別の危機であると言うのに、ラフィは麗奈との再会の方を優先する。


 変化を与える存在が、ここまで厄介だとは知らなかった。

 今まで生きて来た時の中で、確実に変わるのが嬉しいのだろう。それは行動をしていた()にも分かったのか「性格変わったな」と言われる程に。




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