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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第7章:神の試練
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第307話:同盟国の交流会②


「初めましての方も居ると思いますので改めて。私は宰相を務めるイーナス・フェルグと言います。どうぞよろしくお願いします」



 宰相イーナスがそう告げ、集まった面々への挨拶を済ませていく。それからは、それぞれの国ごとに貴賓室へと案内を開始。集まった騎士達、魔道隊は緊張した面持ちでおり失敗しないようにと心がける。


 交流会を行うと決まってから1週間後。


 ラーグルング国での話し合いがなされる事となった。同盟国でもあり隣国のディルバーレル国からは、宰相のギルティスと王妃であるスティ。護衛としてグルム騎士団長が来ており、3人は麗奈とユリウスの2人と面識がある。


 そして、ここに居ない王のドーネルが魔界に居るのも承知済み。

 心なしか3人共、思わず疲れたような表情をしてしまう。



「この度は、我が王のワガママと無礼により本当に申し訳ないです」

「途端に態度崩すのもどうかと思いますよ、ギルティス宰相」

「あのバカ王の行動を御しれないお詫びと言ってはなんですが、新種の薬草とその効果を記した資料を提供させて下さい」

「それは有り難く貰うか」

「サラッと居ないで下さい、リーファーさん」



 ジト目で居るイーナスを無視して、ギルティスからその資料を受け取るリーファー。

 彼はギルティス達と行動を共にした経緯があり、麗奈と会った時に息子のフリーゲの現状を知る。自分が諦めたユリウスの呪いを解いたとされる麗奈との邂逅も合わせ、改めて息子と向き合うと決めた。


 息子との仲を取り持った記憶はないだろうが、リーファーとしてはそのきっかけをくれた麗奈には感謝している。



「ほぅほぅ。そう言えば泉の大精霊様は新しくなったんだよな。今はその辺の事、どうなってるんだ?」

「交流会の時にも報告しますけども、まぁ良いでしょう。麗奈様と契約をなされている新たな泉の大精霊であるツヴァイ様の姿は、未だ確認出来ていない。だが、彼女の魔力が満ちている影響か分からないが新種の薬草を含め森が復活し始めている」

「「森が……?」」



 思わずイーナスとリーファーが同時に言う。

 そして互いの顔を見合わせ、森の復活と言う不可思議な現象に戸惑いを見せる。



「そう言えば、ダリューセクのフェンリル様とツヴァイ様とは同郷だったと聞いたね」

「麗奈様から聞いたので?」

「うん。キールの事を治すのに必要な実も、彼が居たからすぐに案内してくれたって」



 ギルティスはそこで納得がいく。

 あの場に現れたとドーネルから聞いてはいたが、その時はある精霊から麗奈を守るようにと言われている。何故、ダリューセクの大精霊がその任を行うのか謎に思っていたが故郷なら道案内も可能だろうと踏んだとみるべきか。


 そう思えば、麗奈が最初に契約したと思われるアシュプがどれだけ規格外なのかと改めて思わされる。流石が全ての精霊の父である存在だ。



「ホント、麗奈の奴は色んな連中に好かれるよな」

「ですね。だから、2人を連れ戻すのは私達にとって急務なんですよ」



 最初、リーファーはイーナスの事を心配していた。

 無理するのは前からだが、今はヘルスに後を任されている。その前には弟のユリウスからも頼りにされているとも聞いていた。


 逆に彼は誰かに頼れただろうか。

 頼ろうとするその行動を、彼は忘れているのか。何もかも、全部を1人でやろうとしているのではないか。


 そんな不安を思う事も前ならあった。



「おーい、イーナス。ちょっといいか」

「良くないからね、セクト」

「ほらイーナスは忙しいんですから、邪魔すると雷が飛んできますよ。あ、イジメられたいなら無理には止めません」

「セクトを連れて出て行け、ベール」



 段々とイーナスの口調が怪しくなる。

 荒々しくなるのが早いのは、前よりも気を使わないで良いからだと言ったのはヘルスから聞いた。



「ま、気を張らなくて良いのは良いことだよな」

「え、なんです。リーファーさん?」



 イーナスにそう聞かれるも、リーファーは無言のまま。そのまま軽く頭をポカっと叩く。

 キョトンとしたが、すぐにイーナスはハッとなる。



「ちょっ⁉ だから一体なんなんですか!!」

「別に。心配して損した。それだけだ」

「は……?」



 ポカンとなるイーナスに、リーファーはいい感じに緊張が抜けたのだと分かり上機嫌になる。

 よく分からないといった表情になり「それでいいんだよ、それで」と言いながらさっさと出ていく。

 イーナスは文句を言っているが、ギルティス達には分かっていた。あれは彼なりの励ましなのだと。



「フリーゲもよく分からないし、父親のリーファーさんもよく分からないな」

(難点なのは、親子揃ってその表現が読み辛い所か)



 しかし、それも親子なのだから仕方ない。

 ギルティスはそう思うようにしておく。ここに、ドーネルが居なくて良かったと思う。彼が居たら絶対にからかうのが目に見えるからだ。 



======



 大広間に通され、それぞれが席についていく。

 長机の上手にはイーナスが座り、イディールとエルフのフィナントが補佐の為に立っている。


 補佐役として立っているのは他にも居る。

 ニチリの王を補佐する宰相のリッケル。セレーネの補佐には宰相のファルディールがおり、ディルバーレル国の王妃であるサティの補佐にはギルティスがそれぞれ立っていた。


 そしてその中で、ハーフエルフである長老のレブント。

 ドワーフからは、戦士のネストとドワーフ3名が座っていた。

 アルベルトが麗奈と交流していたのもあり、ドワーフ3名にはそれぞれ小さなテーブルと椅子が用意されている。


 嬉しそうにしている彼等の様子を見て、セレーネとサティは思わずクスリと笑い場が和む。


 だが、その雰囲気の中で緊張した面持ちでいる人物がいた。

 ダリューセクの冒険者ギルド所属、Sランク称号を持つ男性であるイル・デイビー。


 彼が呼ばれたのは、遺跡探索の専門家である事。また古代文字を読める人物として、国からだけでなくギルド内でも重宝されているからだ。



(ば、場違いにも程がある……!!)



 表情には出さずとも、内心では心臓をバクバクと落ち着かない。何度かセレーネと話はした事はある。だから、貴族の相手にも慣れていると自負している。


 だが、服装は自由である事。

 ダリューセクと違い、ラーグルング国はそこまで貴族、王族としての厳格な雰囲気ではない。親しみやすさで言えば、一番楽である。


 しかし油断は禁物。

 失礼のないように、ぴっしりとした仕立ての良い服装を選んできた。


 そんな彼にドワーフ達が近付く。



「ポー」

「ポポウ、ポー?」

「フポポポ」

「え……」



 さっぱり何を言いたいのか分からない。

 古代文字の類ではない。鳴き声として聞こえるそれらに、困惑の表情を浮かべる。

 今度はイーナスの下へと向かい、同じように声をかける。



「あー、うん。ごめんね、君達の言葉は分からないんだ。異世界人や長寿であるエルフや魔族なら分かるかもだけど」



 分かりやすくショボンとなり、ショックを受けているのが分かる。

 イーナスも困ったなと思いつつ、チラリとフィナントの事を見ている。彼に通訳を頼もうとしている。



「取り合えず席に座ってくれ」

「ポプ?」

「ポ――」



 注意を受け、彼等は用意された席へと戻る。

 イーナスが議題を進めていきながら、各国の状況などを整理していく。



「私達ダリューセクは、創造主についての記述は少なかったですね。歴史書なども集めて読みましたが、それらしいものは何一つ。ただ、水の質がいきなり高くなった、という点が変わった所になります」

「水の質……」

「はい。それにより、植物の成長が早い上に、木の実や果物の甘さもかなり上がってると報告を受けています」



 それはダリューセクを中心にして、周辺諸国にも表れている現象だと言う。

 それに合わせてディルバーレル国も報告をした。へルギア帝国によって荒れ果てていた森が復活している兆しがある事。


 新種の薬草も見つかり、以前よりも成長が早い。

 

 水の質が向上された事と薬草の成長の早さは偶然でないのは明らか。

 だが、その原因が分からない。破壊されていたものが蘇りつつある。それは、原初の大精霊であるアシュプを思わせるものだ。


 天空を支配しているのはドラゴンを眷族にして従えているブルーム。それに加えて自身の体が強固であり破壊力が凄まじい事。

 現に彼はその力で、魔王サスクールを倒している。そしてアシュプと違い契約者が今まで現れていなかったのは、自身の力があまりにも強力過ぎるからだ。



《我は力の制御など出来ぬ》



 そう言っていたと教えてくれたのはユリウスだ。

 本人も出来るようにしていると言っていたが、何故コントロールが出来ないのかと不思議そうにしていた。



(……いや、逆なのか。抑えようとした結果、それでもあんな力を持っているって事?)



 出来ないのではなく、それを行った結果として表れているのが漏れ出てしまう魔力。

 周囲に影響を与えないように彼が選んだ場所が天空なのだとしたら、地上に降りてしまえばどうなるかなど本人が一番よく知っているだろう。


 麗奈とゆきが捕らえられた状態での最初の現状を思い出す。

 魔物による大群を差し向けられその対応に追われた。第一波を退いた後でも警戒を怠らずにいたが、予想に反して向こうは城ごとラーグルング国の上空に現れた。


 その時の回復を、全ての人間に与えていたのは誰なのかを思い出す。

 魔族であるランセだけでなく、あの場にいた全ての人間達にエルフでありフィナント達にも個々に回復させた。


 魔力の回復をするには、自分の扱う属性の魔力を分けるのが一番早い回復方法だ。

 あの場でブルームが何で出来たのかなんて分かり切っている。ブルームもアシュプも、共通しているのは全ての属性の結晶である虹の魔法を扱える事。


 虹の魔法の特性は不明な点が多い。

 扱えるのが世界に2人しか居ないのだから無理はない。しかも、契約が出来たのだって約3か月も前だ。

 詳しく調べようにも、そんな暇もなく自分達は様々な対応に追われた。

 サスクールを倒す為の同盟にダリューセクとニチリの同時襲撃。その隙をつかれて麗奈が攫われて、一気にここまで来た。



 しかし、その中でも大賢者のキールが言っていたのは浄化による力が強い事と再生能力が異常である事。恐らく虹の魔法は、あらゆる事に対処が出来るようにされているものなのかも知れない。


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