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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第7章:神の試練
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第290話:2年後に向けて


「リゼルトさん!! 頼まれていた物を持ってきましたよ」

「悪いな。ここに置いてくれや」

「はい!!」



 日菜はドワーフのリゼルトから頼まれていた木材を持っていけば、作業をしていた彼は一旦は止めつつ指示を出すのは止めない。


 呪いを解いた優菜が目が覚めたのはその日の夕方。

 王に取り付くようにあった呪いは祓う事に成功した。しかし、それも一時的だというのは彼女の見解でもあり分家の日菜達も同じ意見を述べていた。

 ギリムもその呪いの元を絶たねば、再び呪いにより王を苦しめる事になる。

 弱体化の原因を探るのには土地を調べる必要があった。


 滞在をする代わり、呪いの原因を解明する。

 そう約束をし彼女達は行動を起こした。青龍が呪いの痕跡を追い、大本の目星は付けられた。

 だがそれは簡単なものではなかった。




「土地に馴染み過ぎている、か」

「アレを仕留めるのは土地ごと浄化するか、この地を捨てるしか方法がない。例え浄化に成功しても、定期的に行わなければ、結局は呪いが再び牙をむく」

「……」




 ギリムも優菜達も難しい顔をし、何とか打開策はないかと思案する。

 そこでリゼルトが提案をしてみた。もし、この土地を捨てたとして別の所に行けばその呪いは免れるのかと。




「場所を移動すれば安全だとは思う。だが、慣れ親しんだ土地を捨てろと言うのはここの者達には酷な話ではないのか」

「まあな。そんな大移動、今から用意したとても時間が足りないか」




 青龍なりに気を使っている発言に、日菜達は驚きつつどうしようかと唸る。

 彼女達の行動を見ていたエルフのウィルトは、じっーと見ているだけで意見を言う気配はない。司はなんとなしに彼を見ると、何故だがふくれっ面をしている。




「お腹すいた」

「黙れ」

「お腹減ってたら考えなんて浮かばないよ」

「考えていないのに文句言うな」

「うーー」

「ギリム、放り出していいな」

「構わん」

「酷い!!」



 リゼルトとウィルトの流れる会話に、ギリムはバッサリと切る。じたばた暴れるウィルトにリゼルトは、問答無用で引きずり窓を開けようと手を伸ばす。

 その時、ドアをノックする音が聞こえ動きを止めた。その隙にウィルトは抜け出そうとするが、動きを読んでいたリゼルトは動きを封じる。

 



「遅くまでご苦労様です。こちらお食事になります」

「わざわざすみません」




 彼等を訪ねてきたのは、案内をした騎士2人だ。

 食事と聞いた瞬間に、ウィルトは目を輝かせ「食べようよー」と大はしゃぎする。そんな彼の様子にギリムは、頭痛を覚えるように頭を振り仕方ないと話を中断する。




「それで、あれから王の様子はどうなりましたか?」




 呪いを祓った優菜は気になっていた事を聞く。

 実際に触れたからこそ彼女だから分かる。あの重苦しい呪いを背負い、歩くのも辛く誰にも相談は出来ていない。

 祓った反動で、何か彼に異常をきたしてはいないか。優菜もあれほどの呪いを祓ったのは初めてであり、回復するのに時間もかかった。不安げに聞き、食事を運んできた騎士は事実を告げた。




「あれから快調になり、無理のない範囲で執務をされています」

「むしろ宰相が睨みを利かせているので平気ですよ」

「そうですか。……良かった」




 彼女はそこでホッとした表情をした。

 自分の力で出来る事をした。間違っていないと思いつつ、どこかでもしと悪い方を考えていた。気が抜けたのと同時にお腹が鳴りすぐにハッとなる。

 すぐに青龍が優菜へと自分の分を渡す。




「え」

「俺は食わなくても問題ない」

「問題ありです!!」




 顔を真っ赤にして否定する。

 そのやり取りにウィルトがおかしそうに笑えば、周りに伝わり笑顔が広がる。




「うぅ……」

「優菜様、ごめんなさい。つられた私達も悪かったです」

「でもお腹が減ってたのも事実なんだから、気にしちゃダメよ」




 食事が終わり、部屋の隅で縮こまる優菜に集まる仲間達。

 青龍が何が悪いことをしたのかと不思議そうな顔をしており、日菜と司が小さい声で説明をする。その間、ギリムは2人の騎士にある相談をしていた。



======



「悪いな、2人きりにして貰って」

「気にしなくていいさ。久しぶりだな」




 その日の夜、ギリムは王の元へと足を運んだ。

 出入り口には近衛騎士が居るが、今回は外してもらった。ニヤリとした王は、自身の部屋に秘蔵している酒を持ってきた。

 



「彼に睨まれるぞ」

「平気だ。幼い頃から逃げる術はちゃんと用意している」

「……共犯にするつもりか」

「そうとも言うな」




 宰相とは幼い頃からの仲だから、これも見抜けれているというのが王の意見。

 共犯にする気満々な王を見て、ギリムは諦めつつ出された酒を一口飲んだ。




「彼女達と話し合った結果、土地ごと浄化するか場所を変えるかの意見にまとまった」

「すまないな。幼い時、魔物に襲われていたこの国を助けてくれたのに今度はこちらの面倒ごとまで頼んでしまう形になった」

「気にしなくていい。余も気になっていたからな。話は変わるが、土地を変えるとして隣国との戦争は終わったのか」

「終わったと言うべきかな。向こうも魔物の襲撃で受けた打撃が酷いと聞く」

「……そうか。1つある提案をしたい。どうするかはそちらの自由でいい」




 ギリムの告げた内容に王は目を見開き、思案するように目を閉じた。

 1分ほど考え「候補はあるのか」と聞く。それにふっと笑みを零しギリムはあると力強く言った。




「移動は余とエルフのウィルトが担当する。開拓はドワーフのリゼルトが率先する。上手くいけば隣国とは、争う形ではなく手を取り合える道が出来る。協力関係に持っていけば、対処するのは魔物だけに済むぞ?」

「……。準備期間はどれくらいだ」

「説得と土地の候補を含めて半年以内に収める。早めに行動できれば、隣国にとってもここにとっても良いことはあるぞ」

「アイツの説得は引き受けよう。……納得させるのに時間はかかるがな」

「くくくっ。そこはお前さんに頑張ってもらわねばな」

「ふ……。共犯にする相手を間違えたか?」




 やれやれと参る感じに酒を煽りつつ、方針は決まった。

 ギリムも行動が決まったとばかりに嬉しそうにしている。翌日、彼等は隣国へと足を運ぶ。呪いが染みついた土地にいれば、それによって魔物が狂暴化し数を増やす事が分かった。


 避難場所を作るのに、また人材の確保をする為にと隣国へと協力を求める。

 疲弊しているのは向こうも同じ。ギリムとウィルトの転移を行えば、建物ごとの移動も可能だ。あとは、魔物によって壊された家を建て直すだけ。


 2年の歳月は、隣国との関係を変えていき同盟と言う形に収まる。

 その間、優菜達はラーグルング国に柱を設置するための術式の開発と土地の浄化の為と一応の準備を進めていく。

 優菜が占った方角とその場所は、魔力が満ちやすく精霊達が好んで住んでいた。

 第2の精霊の国として、魔法国家ラーグルング国と名を変え隣国の名もディルバーレル国へと名を変えていき歴史にその名を残した。



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