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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第7章:神の試練
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幕間:2人の行方③


 麗奈とザジが天上界にいる頃。

 デューオにより運ばれたユリウスは、虹色の結晶体の中で体を休ませていた。そんな彼を心配そうに見つめ、時おり周りを飛んでいるのは子供の白いドラゴンだ。




《キュウ~……。キュウ》




 シュンとしまだ目が覚めないユリウスを見つめる。

 時間の流れが早いのか遅いのか、ここでの体感では分からない。自分はきちんと守り切る事が出来たのだろうか、と不安になる。




「はい。心配なのは分かるけど、君が倒れたら意味がないよ」

《キュウ?》




 心配する声に思わずドラゴンは振り向いた。

 その先には、ミントグリーンの髪に紫色の瞳を持つサスティスが居た。彼の持つ死神の力は、麗奈に渡した事で片目が朱色の瞳だったのが元のオレンジ色へと戻っている。

 ゆったりとしたローブを羽織り、動きやすいズボンと上着という軽装の恰好。そして彼の手には、赤い皮の実が数個ある。




「精霊とは言えお腹は空くでしょ? 目が覚めた時に、ヘナヘナに倒れたら威厳ないよ」

《キュウ……》




 チラリとユリウスを見て、首を振った。彼が起きていないのに、自分が食事をする訳にはいかない。そういう意思表示なのだと分かりつつ、サスティスは実を食べやすいように切り分けていく。


 ドラゴンの口に入る位の大きさに切り、器へと盛り付ける。

 それを目の前に出され、口を閉じるドラゴンにサスティスは気にした様子もない。




「ほら、ザジみたいに意地を張らない。私やザジは死者だから、食事はいらないけどね。君の場合、契約した彼の事も含めて元気にならないと」

《……フキュ》

「ちなみに君と彼はまだ契約的には繋がりがある。素直にならない君がこのまま拒否すれば、彼の回復はもっと遅くなるよ。それでも良いの?」

《キュ!?》




 それは嫌だと首を振り出された実をパクリと食べる。

 無言で食べつつも、思っていたよりも体力が削られていた事に気付く。その実を食べている時、自然と活力が湧いた。そして自身の魔力の回復も早い。


 サスティスに言われなければ、自分はずっと頑なに食事をする事はなかっただろう。気付かせてくれたサスティスにそう思い、頭を下げると彼は気にしなくて良いと言った。




「逆に契約が切れていたら彼の方が危ないし、辛うじてだけど繋がっていた事に意味はあるよ。それに、ザジと協力して2人の事をずっと守ってたんだ。私からもお礼を言わせてね。私が抜けた穴を埋めてくれてありがとう。そして、最後まで諦めないでくれた事に感謝を」

《キュウ♪》




 そう言い、ドラゴンの頭を優しく撫でる。その手つきは優しく心地が良い。嬉しそうに羽をパタパタと動かし、サスティスの肩へと移動をした。




「体感的には約2日間。じっとしているけど、彼の回復は確実に行われているよ。彼の中を暴れ回る魔力は天空の大精霊のブルームのもの。戦いを見ていたけど、彼女と精剣を作ったよね? あの時に、かなり無茶したから今は落ち着かせる為にそこに居る」




 ユリウスも麗奈も、自身の力と放出し過ぎた過度な力に体がついて行けないまま連戦が続いた。今までの無理が巡り巡って、蓄積されてしまった。2人の体が形を保たせていられたのは、ザジと白いドラゴンが力を合わせ押し止めていたからこそ。


 しかし、いくら協力していても助けが来なければ助ける事は出来ない。

 魔王ギリムはあの空間に残ろうとしたが、強制的に脱出させられ後が追えない状態。2人を守る為に力を使いつつ、助けを呼ぶ余力もなくあの空間に留まる形になってしまった。


 そこを感知し、見付け出したのは狭間の神であるユーテルのお陰。

 彼はデューオから、緊急事態だと告げられ人間2人を見つけ次第に保護して欲しいと頼まれた。基本、頼まれれば断る理由もないからとユーテルは探し出して見せ今に至る。


 


「彼が目を覚ますのは、自身の魔力が落ち着くまで。まぁ……向こうはかなり厳しいよね。手がかりもなく時間が過ぎていくんだし」




 そう言って取り出した水晶にはハルヒ達が映し出されていた。

 2人が居なくなってから手がかりはないかと探し、ニチリに集まっている所。そして、そこに飛び込んだのは創造主のデューオだ。


 2人の無事を知らせ、こちらに干渉はするなと言えば案の定ハルヒ達は睨んできた。

 ワザとそう言っている辺り、デューオの性格の悪さが分かる。だからこそザジは同じ神であろう存在を信じず、ユーテルの誘いを断った。




「アイツ、時間を稼ぐにしてももう少し考えて欲しいよね」

《フキュキュ》




 サスティスの言葉を肯定するように、白いドラゴンが元気よく頷く。2人は無事なのは確かだが、目が覚めるのはその2人に掛かっていると言うのは事実。


 死神の力を一時的にでも麗奈は身に宿し、同時にデューオからも多少の回復をして貰った。この時点で、人間に耐えられる容量をとっくに超えている。なのに、彼女はギリギリまで戦い抜いて見せた。




「……神の力に耐えられる体、か。この2人にはそれが出来た理由があるんだろうね」




 麗奈の方で考えられるのは竜神の子供である青龍だろう。だが、ユリウスの方は分からない。確かに彼は、今まで契約出来なかった天空の大精霊と契約して見せた。サスティスの脅しで、ブルームは仕方なくユリウスに協力していると思ったが違うのだろうと感じ取れる。


 2人に共通しているのは、神の力にも耐えられるだけの体を持った事。

 そして、魔王サスクールがやったにしては規模が大きい事。他に協力者が居たのではないかと疑問が湧いてくる。




(私の勘はあんまり外した事ないし、サスクールに協力者が居たと考えるべきか。だが、そうだとしたら一体誰がそんな事を……)

「そこはあまり探らないでくれると嬉しいなー」

「だったら、彼等にも情報を提供したらどうなんだい?」




 サスティスが睨み付けながら言った相手は創造主デューオ。白いドラゴンが彼に気付くと、突撃を開始し再び髪を噛んだりと攻撃をしてくる。その内容の訴えとしては、ユリウスを早く解放しろと言うものだがデューオはそれを断り続ける。




「まだ彼の中で魔力が暴れ回ってる。ブルームの力もだけど、最後に作った精剣でかなり無理をしたしね」

《キュ……!? ウ、ウキュウ》




 ペタンと力を失くし、ヨロヨロしたまま白いドラゴンはサスティスの方へと戻っていく。彼は持って来た実の皮を取り、ドラゴンに差し出すとパクンと食べ回復に努めた。




「あんな意地悪言わなくなって……。分かりやすく落ち込んでるし」

「いや、事実を言っただけでしょ。現にその子の力も加わって、あれだけ強力なものが出来たんだし。そのお陰でサスクールを倒したのも事実だ。まっ、2人がその所為でオーバーヒート状態だけど」

「魔力のオーバーヒート、ね」




 魔王であるサスティスも何度か体験した事があるオーバーヒート。

 溢れ出す力が尋常ではなく、常に自分の内部が熱に晒される。あの状態を続けるのは、魔王である彼も危険と認識し落ち着けるようにと魔力を調整した。


 それが人間に起きたのなら、異常事態なのも分かる。サスティスは、その状態でも魔力の沈静化に努める事が出来たが彼等2人の場合はそれが眠りに繋がっているのかと予想した。




「それで合ってるよ。だから目覚めて貰うには、自力で起きてくれないと調整も出来ない。とは言えこのままだと、体が壊れるのが早いからそうならない為に保護してる。どれくらい掛かるのは……ホント、2人に掛かってるとしか言えないね」




 あまり急かすと元に戻った時に、魔力の異常がどこかしらに出て来る。

 ハルヒ達に近付くなと言ったのも、探していると分かれば2人の性格上――急いで起きようとする。

 それも分かりデューオは分かりやすく警告を出した。




(言った所で諦める性格じゃないし、ここにもいずれば殴り込んでくるだろうなぁ)




 ふと、そんな事を思い同時に身震いをした。

 土御門 ハルヒ。彼は確実に自分にとって嫌な相手になるであろうと予想出来るし、容赦ない性格なのは会ってみてよく分かった。妙な悪寒を覚えているデューオに、サスティスは見て見ぬふりをして眠り続けるユリウスを見守る。




「待っているだけ、と言うのも辛いよね」




 この気持ちはきっとザジも同じだろうと分かる。

 しかし、焦って2人の状態が更に危険になるのもよくない。もどかしい気持ちを抱きながら、2人の無事を祈るしかなかった。




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