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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第1章:陰陽師と異世界
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第24話:プレゼント

 この世界で扱える魔法の属性は全部で8つ。

 四元素の火、水、風、土。光と聖、闇、そのどれともあてはまらない力は全て無属性とされている。加えてこの世界で魔法を扱える人物達は自然に2つの属性を扱えるとされている。

 防御魔法は無属性に分類され、もう1つは自分に合った属性が扱えると言う法則。



「と、なるとユリィとリーナが使っている属性は闇の力って事になるんですか?」

「陛下は闇で当たってるよ。でも、リーナはまた特殊な属性の立ち位置なんだよね。影の魔法は厳密に分けるのは難しいし。まっ、闇の属性って事で良いかも。あ、そうそう、宰相のイーナスが扱う属性は雷だから無属性に当たるよ」

「「はーい」」




 ふむふむ、とキールの説明を必死でメモを取るのは麗奈とリーグの2人。

 

 城の一室を借りて魔法の勉強を始めた。

 ゆきはヤクル達と共に柱の警備をしながら、戦闘に慣れる為に朝から出ている。誠一は図書室で資料を読むのに閉じこもり、裕二は宰相の仕事を手伝わされている。


 ユリウスとリーナは変わらず、ランセに力の使い方をマスターする為に死ぬ気で彼に果敢に立ち向かっている。

 またボロボロの状態になってフリーゲの所にお世話になるだろうなぁ、と言うのが段々お決まりになるなとさえ思っていた。




(主ちゃんから避けられるの覚悟したけど、1日経ってすぐにお願いしに来たからビックリ。……フリーゲも開いた口が塞がらなかったし)




 告白から1日経っての早朝。

 フリーゲから頼まれていた霊薬になる薬草を届けたキールは、自分を探していた麗奈とリーグに捕まりお願いをされたのだ。魔法について、属性について、ラーグルング国以外の国について学びたいと。




「リーグは分かるけど……主ちゃんは何で?ゆきちゃん、裕二君とは違い()()は魔法を扱う事は出来ないんだよ」




 霊力がこの世界で扱える魔力として成り代わっている為に、魔法について学ぶのは難しいと言う。

 実際、麗奈はラウルと共に魔法を使えるようにと度々練習をしていた。霊力を扱ったものは出来ても、それが魔力を扱う魔法ともなると全然扱えずラウルのやり方を見て実行しても出来ない。


 魔法を扱えるゆきは霊力がなく、裕二も浄化師と言う陰陽師とは違う力を扱う為に魔法を扱えるのではないか、と言うのがキールの見解。

 また、異世界から来たと言う事が良かったのか、扱える魔法が聖属性。これにはキールも驚き、報告書としてイーナスに提出すれば彼にしては珍しく開いた口が塞がらなかった。




「聖属性を扱えるのは、エルフだけなんですね」

「人間の中で扱えるのは本当にレアだよ。ここは凄いね、一気に2人も見つかるなんて。いやー精霊の加護のお陰なのかも知れないけど、ここに4人も扱える人が居るなんてね♪」

「………4人?2人じゃなくて?」




 リーグは思わず質問する。キールはすぐに答えてくれた。




「ベール団長とフィル副団長の2人だよ。ま、あの家族は特殊だし。リーナの所にベールが来て魔族を倒せたのも彼のお陰だよ。リーナがボロボロだったのに対して彼は殆ど服が汚れてなかったし、怪我も無かったでしょ?」



 リーグに質問すれば彼は確かに……と思い出す。

 ボロボロのリーナに比べ、彼を運んで来たベールは服の乱れもなかった。




「まぁ、ベールとセクトは過去に魔族と戦った事があるから慣れてるんだけど……リーナも初の戦闘で生き残ったんだから凄いよ」

(……やっぱり凄いな)

「それってやっぱり母が関わった時に戦ったんでしょうか?」

「そうだよ。この国はウィンセ国、ラーゼル国、ディルバーレル国の3国とは同盟関係でね。10年前に突然来た魔族達に対応を追われてね。……何とか生き残ったのはラーグルングとディルバーレル国の2つだけで、あとの2国はそのまま滅ぼされて今や魔王軍の拠点になってるんだ」




 ラーグルング国を中心に西側のラーゼ国、東側のウィンセ国、南側のディルバーレル国の3国。

 国が出来た時からの同盟関係らしく互いに交流もあり、その繋がりも強かったと言う。

 突然の魔族達の襲来に絶望的になったラーグルング国に降り立ったのは朝霧 由佳里(あさぎり ゆかり)であり彼女が結界柱の力を使って魔族の侵攻を防いだ。


 生き残ったラーグルングとディルバーレルに魔物と魔族が一時的に入れない状況になって2年後。再び、2国に侵攻し片側ずつ担当した際に由佳里が使った血染めの術で魔王ごと封印する事に成功。しかし彼女はそれが原因で、亡くなりキール達は悲しみに打ちひしがれていた。




「ヘルス陛下はその責任を取るのに、主ちゃんの世界に送ったんだよ。私はその時に魔力をかなり取られて気絶しちゃってね。……その報告も兼ねて国に戻ろうとしたら、拒否されて8年戻れなくなった」

「……私達の世界に、来れたんですか?」

「ヘルス陛下に会ってない?ユリウスと同じ黒髪に紅い瞳で人当たりのいい笑顔の人なんだけど」

「……」



 キールの疑問はもっともであり、麗奈も疑問に感じていた。母の葬儀があったあの日。悲しくて泣いていた自分に寄り添って、励ましてくれた人が居たではないか……。

 その人はいつも謝っており自分が望まなければ……と、麗奈以上に自分を責め泣きそうな表情をしていたお兄ちゃんが居たではないか。




(あれ、何で………()()()()()()()?)




 記憶を探りヘルスと思われる人物の事を思い出そうとするも、顔にモザイクが掛かりその人の声すらも思い出せないでいる。それどころかその人が本当に居たのかさえ、疑わしくなっている状況にフラりとなる。




「お姉ちゃん!!!」




 咄嗟にリーグが支え自分を心配そうに見つめるリーグに「大丈夫、ごめんね」と頭を撫でて彼を落ち着かせる。それを見ていたキールは黙っていたが、今の状態を前にも何度か見た事がある。




(主ちゃんだけでなく、誠一さんにも魔法を掛けたな………ヘルス陛下)




 キールはこの事を誠一達に告げている。彼等も取り乱す事無く、彼の話を聞き入れ怒るでもなく恨み言を言わずに「ありがとう……」とお礼を言われてしまい思考が止まった。

 



「少しすっきりした。まだ、その時の記憶がハッキリと思い出せないが術を発動した事で亡くなったのは、見た俺が言うんだから間違いない。それを使ってでも君達を守りたかったんだろうな。……だが悲しむのは後だ、ユリウス君の呪いの解明を進める。彼が死んだら麗奈が悲しむからな……」




 また悲しむ娘を見たくはない、と呟く誠一に武彦も裕二も同じ気持ちだと言う風に頷く。

 武彦は結界の維持を続ける為に城下町にある柱へと向かい、誠一はラーグルングの全体図を調べに図書館へと行っている。

 裕二は宰相の仕事の手伝いの後、ユリウスの体調を見て呪いの進行をどうにかして止められないか、もしくは遅く出来ないかとそれぞれ動いていた。



 麗奈も同じ気持ちで動いているのだろう。母親を亡くした原因は明らかにキール達である事は分かっているのに、恨む事もせず逆に感謝されたのだ。陰陽師として人を守る事が己の使命だとよく口にしていたから、きっとほっとけないのだと笑いながら言ってくれた。だからだろう……始めは贖罪として彼女に誓いを立てたがいつの間にか、それが守りたい存在へと変わっていったのは……。



(……責められる事で救われようとする私は、大バカ者だね。全部終わったら、次はここの国全員に掛けられた魔法を解かないと)

「キールさん、すみません。もう、平気ですよ」



 いつの間にか麗奈の事をずっと見ていたのだろう。リーグも麗奈も首を傾げたままで自分を見ている。それがおかしくて、2人の頭を撫でて「何でもないよ」と言い話の続きをする。



「魔族にとってエルフは天敵。自分達を一発で倒せる者が居るから。でも疑問があるよね。リーグ、答えられる?」

「……魔物も魔族も居る事、かな」

「正解♪ランセも言ってたけど、戦いを広げたがるのはごく一部の過激派。魔王も魔族も控えめな者も居る。エルフは私達よりも寿命が長いからそれも分かっているんだよ。必要以上に攻めたのが原因で、全面戦争って言うのは避けたいのが本音。人間同様に平和に暮らせるなある程度の数は黙認だしね」

「……私達も生活があるからですね」



 荷物の運び屋などの簡単な依頼などを取り扱う組織は通称ギルドと呼ばれている。最初は簡単な依頼のみを扱うだけだったが、魔物が出現するようになりその魔物を狩る依頼も増えていく形で段々と大きくなっていったと言う。今では国からの依頼なども請け負うようになり、その発言力も大きくなっているので国がある所にはギルドの設立されるようになったとされている。



 

「でも、ここで冒険者もギルドも見ないですよね?いつも見回りしてる兵士さんや騎士さん達が居るし」

「冒険者=旅人って言う認識だからね。ここは10年前に魔族に襲われてから孤立させられているからギルドを立てるような資金も無ければ、そんな余裕ないからね。ギルドがないのはこことディルバーレル国だけだしね」

「そんなの居なくても守って見せるもん」

「そう言ってくれると助かるよ。実際、そのギルドにも良し悪しあるしね。人殺し、横領、奴隷、主ちゃんにとっては辛い事だろうけどここではそれが普通に行われている。ギルドの中でもそれを専門に扱う所があるからなくて全然良いし要らないよ……ホント、薄汚れてるよね」



 ピリっとした空気に麗奈はビクリとなりリーグは無表情でそれを聞いている。聞けば魔物をワザと街へと誘い自分の手柄にする冒険者達も居るなど、卑劣極まりない事も行うそうだ。そう言った所は国の加護から離れている人里離れた所などが多く、それらを助けよう者なら他国の介入もあるのでなかなか全てを取り締まれないと言う。



「魔法協会は、私やレーグ達みたいな魔法師を管理する所でね。魔法師は魔法が扱えるのが最低条件だから年齢は問わない。その分、身分証明はしっかりしないと成人してから社会を知る訳にもいかないしね。生まれた子供に魔力があるのが分かったらその家族ごと生活の保証をするんだ」

「家族ごと……?」



 キールの話によれば魔力のある子供はそれだけで価値があると言う。貴族の奴隷としてお金で親を黙らせるなどして、非合法に訓練しぼろ雑巾のように使い捨てる。それも頻繁にあり、子供を攫う際に村1つ、街ごと破壊するなど口封じの為に平気で関係のない人々を巻き込む。それを行えるギルドの人達も居るが、国の加護がない村や町はそれらを頼るしかない現状な為、全てが悪いと言う訳でも良いという訳でもない。


 冒険者が成人した15歳からなれる事と、国に貢献できる事、武器を持てば誰でもなれる事から憧れの職業とされてしまっている。



「………」

「ゆきちゃんも同じ顔してたよ。……君達は平和な所から来たのにこんな世界でごめんね」

「……親でも、必ず子供を守るとは限らないよ。麗奈お姉ちゃんもゆきお姉ちゃんも責めたらダメだよ」

「リーグ……君?」



 それきりリーグは何も言わずキールに教えられた事を復習している。麗奈はその時のリーグの表情が忘れられないでいた。


 何故、彼は怒っているのだろう?そして同時に悲しそうに、悔しそうに顔を歪ませていたのは……何故、なのかと。



「………キールさんも協会に度々行くんですか?」



 空気を切り替えようと、キールに質問すれば彼は時々行くよ。更新が面倒だからね、とげんなりして言った。魔法師は1年に1回は協会へと赴く。理由は闇の魔法が扱えるかどうか、魔力が暴走していないかをチェックする為だとか。



「嫌がるレーグを無理矢理にね」

「最低ですね」

(だからレーグさん、私に近付かないんだ……)



 魔法隊の隊長を勤めキールが居ない穴を埋めた凄腕の人。ラウルと同い年の24歳であり頼りにされている。のだが、麗奈はレーグにまだ会った事はない。ゆきからレーグさんが凄いとか、指導の仕方が上手くて凄く上達した気分!!と聞いていたが、リーナが言うにはゆきの方が凄いとか。


 教えた事をそのまま実行。と、言うのがゆきがすぐに出来てしまい周りに居た魔道隊の人達もレーグ自身も言葉を失った。試しに炎と水を出して貰うように言えば実行し、治癒魔法を使って欲しいと言われれば怪我をしていた兵士達を一瞬の内に治してしまう。………なんとも言えない空気になり、レーグはゆきを自身の部屋へと連れて行き「力の加減だけ出来てないから教える」と言われて取り出したのは水晶。




「一定の魔力を注げなければ弾かれる。やり過ぎれば割れる物だからこれで加減を覚えて欲しい」



 最初は弾かれ続けたゆきだが、3時間後には弾かれる事なく水晶に魔力の色が出てきて浮く始末。コントロールをものにした彼女も、さっきまでした自分の行動が規格外だと気付き「ごめん、なさい」と謝られた。



「いや。……逆に凄すぎるよ。その水晶と同じ反応を起こしたの師団長だけで……驚いてただけだから」

「……でも」

「魔力の多い少ないは完全に血筋だ。師団長の家は大体魔力量が多い家系だったし……私も似た家系だが師団長程じゃない。あとは戦闘での経験も多少なりとも魔力を扱える量は多くなるけどね。ゆき様が異世界から来たのがかなりのアドバンテージになっているとは言え、その吸収力は凄いとしか言えないです」

「……役立たずにはなりたくないですし麗奈ちゃん達ばかりに背負わせて、自分は安全な所に居るのはもうこりごりなので」

「……なる程、必死で追い付きたいからこそ貪欲になるんだね」



 恐ろしいね、と言われるもキョトンとなり首を傾げる。麗奈を誘って良いかと言えばレーグは凄い勢いで拒否をされた。むしろ彼女が来たら教えて欲しいとはさえ言われる。



「え、えっと……なんでですか?」

「麗奈様の近くには必ずキール師団長が居ますからね。私に嫌がらせするのは決まってます」

「だから麗奈ちゃんに会わないんですか……?」

「……………察して下さい、ゆき様」



 溜息を漏らし少し項垂れるレーグを見て、麗奈にはとても言えないな。と思い親友には言わないで置こうとするも、その親友は師団長の話により原因が分かってしまった。などとはゆきは知らずに居るし、レーグ自身もそれは知らないのでお互い様だ。



「今度、ゆきちゃんを協会に連れて行こうと思うから主ちゃんもどう?」

「え……でも、私魔法使えないのに」

「主ちゃんは魔法使えないけど、召喚士として精霊の扱う魔法は扱えるよ?召喚士も協会に登録する義務があるから、主ちゃんも行っても問題ないよ」

「……でも、首飾り壊されましたし………」

「ならワシからプレゼントじゃい♪」



 ポンっと、音を立てて現れそうなウォームが現れ麗奈に首飾りを渡した。あの時、破壊され粉々になった首飾りが新しくしかも形が同じな事に麗奈は驚き瞬きをした。リーグが「凄い!!精霊凄い!!!」と興奮したように言えばウォームは胸を張りもっと褒めろと言って来る。



「……ウォームさん、ありがとう、ございます………」



 涙を流し精霊にお礼を言う。朝霧家の家宝であり、麗奈の危機を何度も救ってくれたもの。精霊の契約に使った媒体でもありこれがなければ、ウォーム達と話したり出来なかった。壊されてからは話す事が出来ても一時的であり、前みたいにずっと話をする事が叶わなかった。



「んふふ、良いんじゃよ♪お嬢さんがそのままでいるからワシは手伝いと思うし力を貸すんじゃよ」

「ただのエロじじだと思うんだけどね」

「お前さんには2度と力を貸さんぞ!!」

「今だって貸して貰ってないんだけど!!!主ちゃんとゆきちゃんにしか貸さない時点でもう私の事見限ってるじゃないか」

「お前さんはそのままでも強いじゃないか。ワシ等精霊などもういらんだろうに」

「これでも召喚士だからね、私は!!!!」



 講義から一気に騒がしくなるも、麗奈はずっとお礼を言っておりリーグはその間に全員分のお茶を入れに退室。キールはいつまでもウォームと口喧嘩をする事となった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 雷属性は無属性なんですね。 これは少し珍しい設定ですね。 聖属性を扱えるのはエルフだけなのか。 属性一つとっても作家さんによって色々変わるのが面白いです!
[一言] ギルド関連はなかなかに殺伐としていて、これまでの麗奈達が過ごしていた異世界での日々からのギャップに唸らされましたね……!!(迫真) とはいえ、騎士団長達や精霊のウォーム、新しく加入した元・…
[良い点] ゆきさんも天才なんですね。 朝霧の家宝が、元に戻って良かったです。 [一言] 由香里さんは術の反動で亡くなったのですね。 これだけ登場人物がいて、それぞれの立ち位置が、 しっかり生きている…
2020/04/03 08:46 退会済み
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