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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第6章:神と魔王と人間と
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第253話:元を断つ


《最初にこれがあったからこそ、お嬢さんをワシは補足出来た。だから、サスクールの元に連れて来られる筈が、上書きされた事でラーグルング国へと転移したんだ》




 この世界に呼ばれる繋がり。

 朝霧家の家宝は、初代と目の前に居るアシュプとの共同で作られた物。魔力と陰陽術で作られた魔道具は、世界にこれだけだ。




「これがなかったら、私とゆきは大蛇に殺されていた。でも、あったらサスクールの元に自動で転移。やっぱりウォームさんは命の恩人です」

《う、うむぅ》




 ウォームは照れたように頬をかく。

 麗奈は変わらずに自分の信じた道を進んで良かったのだと思い微笑む。


 今までサスクールの魔力はどこかしらにあった。

 ユリウスの内部に残留していた魔力。そして麗奈に付けていた印。家宝にも同様にあったのを考え、向こうがどれだけの準備をしていたかと恐怖する。


 だが、麗奈には分からない事がある。

 サスクールの狙いが異世界人なら、何故他の人物にしなかったのか。そしてその目的も。




「アイツは何が何でも、私を殺したいのさ。でも、どうやっても私の所に行くのには手順が必要なんだよ」

「手順、ですか」




 麗奈とウォームの寄ってくるのは創造主デューオ。

 髪が整えていたのに、今は軽くボロボロだ。その後ろでは青龍が満足気にしていたのを見て、麗奈は神様に何をしたのやらと聞くに聞けなかった。


 デューオが教えて貰った方法。

 まず、彼が別の世界から人を呼ぶ時には彼の住む異空間へと足を踏み入れている事。

 それは呼ばれた側には意識すらしていない、一瞬の事。

 しかし、デューオにはその一瞬で十分だという。




「君達が意識していなくても、私が君達と目を合わせた。それだけで、呼んで世界に適性を持つ様に調整し、珍しい魔法を発現しやすくする」




 だからこそ、ゆきと裕二はエルフにしか扱えない筈の聖属性の魔法を扱える。

 麗奈達も陰陽師としての力をこの世界に適合出来るように調整されていた。今まで使ってきた力が、実はデューオにより調整し強化されたものだと知り妙に納得できた。


 逆に武彦と誠一の場合、魔力はあるが力としてデューオが発現していないだけだという。




「彼等の場合、元々の力が強いからね。調整して強化となると更に上がるからワザと封じてた。でも、もうその枷は必要ない」

「……何でですか」

「その理由、なんとなく分かってるんじゃないかな?」



 そう問われ麗奈自身は思い当たる。

 自分とユリウスが原初の大精霊の契約に成功した事。そして、2人にしか見えていない存在がいる。あの白い子供のドラゴンだ。

 風魔が言っていた。2人は一体何を見ているのか、と。

 青龍が認識している事から、最初は同じ龍と言う繋がりだからだと思った。だが、もしそれが麗奈の思う結論なら――。




「あの白いドラゴンは、次代の虹の大精霊。私が創り出した使い魔みたいなものだよ」

「……あの子が」

『だがアイツはお前の事が嫌いだと言った。2人の事、イジメたんだから嫌いだと言ってたぞ』

「そんな訳――」

『言っていた。次に会ったら噛みついてやるって怒ってた。俺は思い切りやっとけと応援しておいたぞ』




 暫くの沈黙。

 デューオが青龍に向けて「は?」と言うも、彼はそれ以上の事は言わないのか黙ったまま。

 あの白いドラゴンが、麗奈とユリウスに対して好意がある。最初に会った時も、麗奈をかなり好いていたなとは思っていた。


 青龍と仲が良さそうにしていたな、と思っていたがどうやら2人で結託していたようだ。

 ちなみに、この様子は同じ創造主の仲間であるフィーとエレキは見ている。そして、途中で妹のエルナも見ていた。


 デューオが創った者達の嫌われように大爆笑。特にエレキはお腹を抱えて、だ。

 ここまで嫌われているのも珍しいのだろう。




「い、いやいや。何で私が生み出した子達に嫌われるなんて」

『ハッキリと聞いた。辛い思いをした麗奈とユリウスを傷付けたお前を、絶対に許さない。怒りに燃えていたし、ザジもサスティスも嫌っていただろう。何を今更な事を言っているんだ』

「……」

『なんだ、自覚していたんじゃないのか』




 ざまみろ、と言わんばかりの悪い顔にデューオはショックを受ける。

 確かに意地悪はしたが、それは神の試練として与えたもの。決してイジメるのが趣味と言う訳でもない。

 同じ創造主のフィーからは辛そうに見てるよなと言われている。

 それ位、デューオにとっては自分の作った世界も含めて全てが愛おしい存在――だというのに。




「愛情が伝わらないのって辛いね」

『止めろ気持ち悪い』

「せ、青龍……」




 言い過ぎと言う意味も込めて、麗奈は青龍の服の袖を引っ張る。

 しかし青龍は一応は黙るが、心の中ではデューオに『安心しろ、全員が嫌いだから』と止めの一言を告げる。


 本心から告げられたのが伝わり、デューオはズルズルと座り込む。

 それに慌てて麗奈は駆け寄るとボソボソと何かを言っている。だが、全ては分からない為に耳を澄ませる。




「これは私の罪でもあるし……巻き込んだ責任ってものが……」

「あの、創造主様? それともデューオ様と呼んだ方が良いですか?」




 しょげるデューオに麗奈はどうにか話の続きをと促す。

 とは言え、彼女自身は神様の機嫌の取り方など知らない。神と言う存在は知ってはいても、感じる事がない。

 ただ、自分達の願いを聞いてくれるかも知れない存在。

 そう言う認識だ。麗奈達の居た現代では、神話が記された本や資料は多くある。本が読みやすいように、イラストとして視覚化しゲームでは、その名前で思い思いの姿を描かれている。

 

 アニメや漫画、小説など想像を膨らませるものが多い。

 麗奈はそう言ったものはあまり触れて来なかったが、親友のゆきや裕二が知ればきっと驚いただろう。神様がこうして自分達の前に居る。


 こんな奇跡みたいな事を自分が体験している。

 しかし、それは終わってからでも良いだろう。麗奈はそう決意し、デューオに聞く。何故、彼がここに居るのか。自分の回復はあとどれ位で完了出来るのかと問うた。




「今、君の力はほぼゼロだ。大精霊達が、魔力の回復に全力を注いでいる。そして、霊力に関しては朱雀と玄武が回復を務めている。だが、ユリウス達が時間を稼いでも微々たるものしか回復は出来ない」




 しかし、回復を行っているのはウンディーネ、ツヴァイ、ポセイドン、フェンリルになっている。キールが契約した大精霊のエミナスとインファルは結晶化した状態。だが、他にも結晶化した大精霊達は残った力を麗奈に注いでいる。その細かいコントロールはノームが行っている。




「水の大精霊達は、回復が得意にしている。先程の戦いで、結晶化した大精霊達も魔力を渡している状態。自分達が具現化する力を注いででも、君を上へと送る算段だろうね」

「皆さん……」

「阻害しているのは、アシュプの言う様にその首飾り。それを無くせば、私ももう少し力を貸せるんだけどね」




 朝霧家の家宝として残してきた首飾り。

 アシュプと優菜との思い出。そして、麗奈にとっては大事な宝物。だが、それが原因で力が回復しないのであれば決断は早い。




「私が合流しないといけないですからね。青龍、ウォームさん。壊すのを手伝ってくれる?」

『分かった』

《良いのか?》

「出来ればあとの世代に残したいです。でも、まずは今の事を考えないと。私も魔道具を作れるので、代わりに頑張って作ります」




 その言葉に、アシュプは思い出す。

 この世界で過ごしてきた彼女達との日々。優菜も言っていた。壊れたらその度に作り直せばいいのだと。




《すまん。ワシは感傷に浸っていたダメな奴だな。……お嬢さんに託すぞ》




 そう言ってウォームの体が光る。大精霊達と同じ結晶化になり、虹色の輝きが辺りを照らしていく。

 続けて青龍が雷を纏った腕で、躊躇なく首飾りを破壊する。

 その時の力の衝撃で、麗奈の代わりにダメージを喰らうが今の彼には構う暇がない。




「全部終わったら、伝えたいことがある。君なら出来るよ――朝霧 麗奈」




 デューオのその言葉に、麗奈がどういう意味かと聞こうとした。

 だが、首飾りが壊れたと同時に麗奈の体に纏う虹色の魔力。一時的でも自分の中に宿る魔力と霊力。力が行き割ったと感じた時には、景色が再び暗闇に包まれた暗雲の中に居るのだと分かる。



 周りを見れば回復をしていたウンディーネ達が驚いたように、麗奈の様子を見ている。

 説明をしたいが、時間がない。

 今、宿る力がそう長くは持たないからだ。サスティスから預けられた死神の力も合わせ、麗奈は急いで上へと駆け上がる。



 彼女の意図を組んだ白虎は、即座にその行動を移しユリウス達の元へと急いだ。



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