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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第6章:神と魔王と人間と
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第233話:大精霊召喚


「クポポ~」



 打ち上げられたアルベルトは、青龍に言われた通りに麗奈にすがり着く。

 ここに来るまでにいかに自分が酷い目に合わされたのかを、懸命に説明していく。

 そして、それを実行してきたハルヒと自分の父親、そして戦士ドワーフ達に対しての文句を言っていた。




「クポ、クポポ!! フポポ、フポポ!?」




 必死で伝え、そして麗奈と再会出来た喜びも含んでおりテンションが上がっていく。

 それを麗奈は静かに聞き「大変でしたね」と言ったり、相づちをしたりと変わらぬ対応をしている。

 だが、その間も黒い手は麗奈に迫りくる。


 それを魔法で撃退し、あるいは霊力を用いた力で弾き返す。

 呆れたように息を吐いたのは、アルベルトと契約をしている四大精霊であるノーム。霊力を使った攻撃や防御は青龍が行っている。


 その顔にはやっぱりな、と分かっていたかのような表情をしていた。




《アルベルト。文句はそれ位にしてよ。今はそんな事をしている場合じゃないんだし》

「クポポ!!」

《君よりも麗奈さんの守りを固める方が優先だよ。ほら、諦めて》

「……フポ~」




 酷いと言いつつ、麗奈を奪われる訳にはいかない。

 それを分かっているアルベルトは、ツヴァイに寄り添う。ノームと契約した事で、彼の魔力量は上がっている。


 黒い力に侵されたツヴァイを癒せればと思い、自分のも魔力を彼女へと送る。




《う……》




 ゆっくりではあるが、徐々に黒く変色していた肌も元の水色へと戻っていく。

 完全に除去するのには時間がかかるが、ここはアルベルトに任せるべきだろう。そう思った麗奈は、辺りを見渡す。


 すると、彼女の視線に気付いたのかヘルスを守っていたドラゴンがすぐに飛んできた。




《大精霊様と、ドワーフをお守り致します》

「お願いしますっ」




 そこでヘルスの様子を見る。

 最初は衰弱していたヘルスも、今では穏やかな寝息が聞こえて来る。順調に回復している事に、ホッとし思わず笑みを零す。




「良かった……ヘルスお兄ちゃん」




 サスクールから引き剥がせて良かった。

 そう言いかけて言葉を止める。本当なら自分は、サスクールと共に自害する気でいた。その為にザジには捕まってからもお願いをしていたのだ。


 だが、ザジはその案を最後まで否定し続けて来た。

 隣で聞いていた青龍も良い顔をしておらず、同じく反対をしていた。今にして思えば当たり前だった。


 だって、ザジは麗奈が飼っていた黒猫。

 しかも子猫の時からの付き合い。彼女に害するものは、全て威嚇をしよく九尾とも威嚇をやり合う仲だった。




「……」




 ワクナリには、必ず帰る様にと約束をしていたが彼女は最初からその気はなかった。

 終わらせるには――自分のような疫病神には、サスクールとの心中が似合う。ずっと、そう思っていた。


 なのにとこれまでの事を思い返す。


 世話係のブルトは、ティーラの部下であり彼等はサスクールに復讐をする機会を伺っていた。だが、ブルトは麗奈が利用されるのを我慢ならず、ユリウス達の所へと連れて行こうとした。

 その途中で、父親である誠一とハルヒ。そしてアルベルト、父親であるシグルドと合流を果たしながら同族のドワーフ達と行動を共にした。


 ドワーフ達にも言われていた。

 必ず戻って来るようにと。帰ったら一杯、お礼がしたいから必ず生きて来て欲しいのだと。




「……皆」




 何故、ここまで必死で来たのだ。

 自分はサスクールと共に死ぬのが相応しい。思い出せずにいた記憶を思い出し、ヘルスの体を使われザジを死なせ――親友のゆきと育ってきた兄に近い裕二に、とんでもない傷を負わせた。


 ヘルスの治療が間に合わなければ、2人はあの時に死んでいただろう。

 自分はヘルスを元の世界へと帰すと望まなければ。

 いきなり現れたサスクールの甘い言葉に、何の疑問を持たずに協力をすると言った自分が憎たらしい。


 何も知らず、利用されて――。

 結果として周りを不幸に陥れてしまっていた。




「私……迷惑ばかり、かけてる。何もかも、私が生きてたから……。ユリィに辛い思いをさせて、ヘルスお兄ちゃんに無理させて。私に守られる価値なんて」

『主!!』




 その先に言葉は言えず、顔をグッと上へと向けられる。

 そこには心配そうに見ている朱雀と玄武。白狐が泣きそうな顔をして、麗奈の事を見ている。




『主、ダメだよ。そんな事言わないで』

「でも……」

『僕達は長い間、呪いに侵され続けて柱としての役割すらまともに出来なかった。それを解いたのは、間違えなく主達だよ。きっかけはなんであれ、僕は主に会えたのが嬉しい。楽しい日々を送れてる』




 白虎はしょんぼりとしたように、耳と尻尾をしならせる。

 抱き寄せられ、子供をあやす様な手付きで背中をポンポンと叩く。




『力を封じられて、足手まといになるのって辛いよ。土御門の言う通りだ。彼が早く行動を起こしてくれたから、彼等だって早く辿り着けたんだ。主を助けたいって皆が思ってここに来てる』




 だから寂しい事を言わないで。

 朱雀も玄武も同じように頷き、麗奈が責めるべきではないと訴える。




《そこまで責めるなら決着をつけるべきだ》

「ノームさん」




 迫りくる攻撃を防ぎ続け、ノームは麗奈の隣に立つ。

 彼の代わりに青龍とザジが防ぎ、玄武が安全の為にと結界を張る。




《私は麗奈さんがどんなものを見て、どんな苦しみを持っているか分からない。だが、アルベルトを通して見て来た。貴方が今までやってきた事は無駄じゃない》




 繋いできた絆と麗奈の行動が、アルベルトだけではなくノームの考えも変えた。

 決着をつける為。それもあるが、周りはそれ以上に麗奈の事を助けたい。戻って来て欲しいからこその行動を起こしている。




《アルベルトはずっと心配していたんだ。麗奈さんが無理をしている。とてつもない事をしそうで、怖いからと嫌な予感がしていたって話してたんだよ》

「クポポ」

「……アルベルトさんに隠し事は通じないようですね」

「クポ♪」




 大きく頷き、もちろんだと胸を張る。

 その間にも徐々にツヴァイの状態が良くなっていく。黒く変色していた筈の体は、元の水の体へと戻りゆっくりと起き上がる。




《うぅ……私……》

「ツヴァイ。平気?」

《麗奈》




 少し頭がボーっとしながらも、アルベルトに支えられるようにして起き上がる。

 白虎の背に乗る麗奈を見て、彼女は徐々に状況を把握する。四大精霊ノームが居る事とドワーフのアルベルトが自分の事を治療していた事。


 それらを把握する中でも、ランセとユリウスは麗奈の方に近付くのも難しそうにしていた。

 だがサスティスの援護もあり、彼等2人はどうにか辿り着く。ザジとサスティスが合流した事で、2人は全方位に向けて防御魔法を展開。


 それまで怒涛のように迫っていた攻撃が一気に弾き返されていく。




《まさか死神と共闘するだなんて思わなかった。長生きはしてみるものだね》

「そんな余裕をされても困る。あの時はこっちの事を、恨めしそうに見てた癖に」

《それはそうでしょ。お父様に手を下したのは君なんだし》




 えっ、と驚く麗奈達に対しサスティスは変わらない笑みを浮かべる。

 ザジは麗奈にあるものを渡す。キラキラと輝く欠片を渡され――感じ取った魔力に驚く。




「これ……」

「最後の最後。アイツが完全に散る前にって思って。……取っておいた」

「あ、同じ事を思った。私もこれを渡しておくよ」




 ザジは申し訳なさそうにしながら渡した欠片。

 サスティスが渡したのは虹色の欠片。その感じ取れる魔力にユリウス達は驚愕し、思わずサスティスの事を見る。




「そう。この欠片は原初の大精霊であるアシュプのもの。ザジが渡したのは光の大精霊のもの。これだけの魔力があればここに喚べる」

《……とんでもない注文だな》




 はぁ、とノームは溜め息を吐き、サスティスの事を睨んでいる。

 話が読めないユリウス達に、ブルームが告げた。ここに、他の大精霊達を喚ぶのだと。




「他の……?」

《異界の女が関わった大精霊でも、お前達の仲間が契約したのでもいい。守り手が多いのは助かるしな》

「ここにガロウ達を喚ぶ……。その為の魔力と座標を彼女にって定める気?」

「正解だよ。ここに居る召喚士は彼女しか居ないんだ。使える手は使うってだけ」

《はいはい。やれって事ね……》




 麗奈がどうすれば良いのかとノームへと助けを求める。

 彼女の手には、精霊の欠片が2つ。その2つが希少で扱える人物がかなり限られている。それを見越して麗奈に協力をさせるのだから、死神の考えが恐ろしいのだと思う。


 ノームは持っていた杖を高く上げながら麗奈にあるお願いをする。




《その欠片を握り、強く願って欲しい。座標と召喚の魔力はそれで補えるし、向こうも私がやれば感知できる》

「は、はい……!!!」




 異様な魔力の高まり。

 それを察知し、サスクールはノームへと攻撃を定める。そこにブルームが虹の閃光を放ち、援護するようにランセとユリウスもそれぞれ斬撃を飛ばす。




《ここに集いて、力を示せ――大精霊召喚!!!》




 ノームの持つ杖が麗奈の持つ欠片と同じく、光と虹色へと移り変わっていく。

 麗奈は欠片を持ち、これまで交流してきた精霊達を思い出す。同時に自分が持てる魔力を全て注ぐように、精霊達に協力を願う様にして祈る。




《まだ俺達にも協力できる事があるのだな》

「っ、フェンリルさん!!」




 麗奈のすぐ傍に来たのは、ラーグルング国から離れて初めてあった氷の大精霊フェンリル。

 その後、次々と大精霊達がノームの魔法により召喚されていく。



 異様な光景にサスクールが驚く中、全てを見ている創造主デューオは笑みを浮かべていた。

 異世界人が起こす奇跡はいつだって驚くものばかり。

 その中で、麗奈が起こした奇跡は――今までの歴史を塗り替える程の衝撃を与えた。


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