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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第6章:神と魔王と人間と
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第228話:ビックリした事


(……あれ、僕は)




 小さく揺られながら、土御門 ハルヒは意識を浮上させた。

 頭がボーっとし、誰かに背負われているのまでは分かった。だが、何でそうなったのかという記憶が微妙だ。


 うまく回らない思考。それも、ユラユラと心地が良い揺れが原因なのか。頭を動かそうとしても、凄く重たいのか出来ない。そんな時だった。


 ハルヒに気付いて声を掛けて来た人物が居た。




『あ、気が付いた。……平気だろうけど、本調子じゃないよね』

「風魔……?」

『ん。誰かのか分かってるのは嬉しいな』




 ふふっと笑いながらもハルヒを心配している人物を見る。

 大きな犬の耳に白い髪の男性。薄い緑色の狩り衣を着こなしているのは、麗奈の霊獣である風魔。

 名前を呼ばれたのが嬉しいのか彼は、嬉しそうにハルヒの頭を優しく撫でていた。




「僕……。もしかして、充電切れになったの」

『仕方ないよ。破軍だけでもヤバいのに、一気に僕達を操ったんだ。普段以上に疲れるし、霊力がごっそりと持っていかれるのは仕方ないって』




 風魔とは逆方向から声が聞こえて来た。


 ゆっくりと頭をそちらに向ければ、見えてきたのは白い虎の耳と尻尾の少年。白と緑色の狩り衣を着た彼は、式神の四神の1つである白虎。


 ラーグルング国にある柱の1つにして、彼という人柱の糧で生まれた半分が精霊の存在。朝霧家の人間である彼は、自分の霊力を全て柱へと捧げて死んでいる。


 その死を捧げた結果、柱が生まれ防衛の役割として4つの柱がある。

 西の柱の守護者であり、その方角には四神の意味と名を持つ。


 彼は四神の中でも最年少。だから、他の四神と違い見た目は少年なのだ。彼等の年齢は、自分の死んだ年齢で止まっている状態。




「……白虎?」

『うんうん。寝ぼけてないだけ良いね。アルベルト、君も疲れてるだろうし休憩でもしない?』

「クポポ!!」

『え、まだ頑張れるの? まぁ、君がそう言うのなら良いんだけどさ……。疲れたら言ってね。僕も風魔も協力するし』

「フポポ♪」

(あれ……アルベルト?)




 段々と記憶が蘇ってくる。


 自分とアルベルトは、誰の相手をしていたのか。 

 麗奈が契約していた大精霊アシュプ。


 この世界の精霊の生みの親であり、虹の魔法の使い手。だが、そんな彼は魔王サスクールの影響なのか操られ、自我を失っていた。


 その中で、古代魔法を使う異世界人のゆきを狙い始めた上に、城の崩壊が近付いていた。


 青龍からの報告で麗奈が魔王として、乗っ取られた事も含めハルヒがアシュプを止めると言ったのだ。その時間を稼いでいる間、アウラ達は既に避難を完了させているだろう。


 この戦いで参戦したドラゴン達がいれば、空中だったとして上手く対応してくれる。



 そして――彼は麗奈の使っていた四神を従え、大精霊アシュプを討った。



 彼の体は砂となり、精霊の核もなかった。


 その代わりに落ちていたのが朝霧家に伝わる家宝。初代である優菜とアシュプが作った特別な魔道具。


 だから、何度でも復活出来た。


 その魔道具が壊されようともその欠片があれば、アシュプならいとも簡単に直せる。


 落ちている家宝を拾い、そこで自分の意識が無くなった。緊張もあったが、ハルヒは相手にする前にユウトとの戦いを制したあとだ。


 その時にも霊力と魔力の両方を使い、ギリギリの戦いが繰り広げられた。

 回復しきれていない所で、四神と風魔を従えたのだ。ハルヒの中では、まず扱えた事が奇跡に近い。




(四神って、使うとこんなに疲れるんだな……。破軍だけでもきついのに、風魔も合わせると……7人も従えた事になるのか)




 式神を扱える数と質は違う。


 陰陽師の実力を図るものとも言えない。式神の数が少ないからと言って弱いという訳でもない。1つの式神に練られた霊力の質が高ければ、戦闘能力は飛躍的に上がる。


 だからこそ、どれだけ扱えるかではなく式神に練られた質で陰陽師の実力を図る。

 だが、四神を使った時に思い知らされた。破軍以上に、自分の霊力が吸われていくのが分かる。


 そこに、神衣という合わせ技をと考えるのなら無茶をしている。


 霊獣や四神の力を自分の力として取り込み、その力を振るう禁術である神衣。昔は扱えていた人物が多かったが、年月が経つにつれて使い手は少なくなっている。


 その理由が、嫌でもハルヒには分かった。

 霊力の消費量が、破軍のそれよりも高すぎる。麗奈でも10分は保てるかどうかだ。


 ユウトとの戦いで、ハルヒは神衣を使った。そこでもきつかったのに、上乗せをするようにして四神を扱った。




「むしろ、ここまで意識を保てた自分を褒めたいよ……」




 魔力も霊力も殆どないに等しい。

 意識が無くなったのも仕方ないと言える。そう結論付けてから、誰が自分を運んでいるのだろうと疑問に思った。


 最初は契約しているポセイドンかと思った。

 だが、自分の状態を考え違うとすぐに分かる。




「アルベルト。ちっちゃなアルベルトが……僕を運んでるの?」

「クポ!!!」




 元気な声が前から聞こえた。

 彼はドワーフであり、更に攻撃魔法も扱えた。


 他のドワーフ達に会うまで分からなかったが、基本的に彼等は防御魔法が得意だと言うのが分かった。治癒も出来るが、それは傷の大きさなどにより出来る範囲も限られる。


 大怪我をした場合、1人での治療が難しい。ドワーフは大人数で治療に取り掛かる。1人の力が弱くとも仲間と合わせて魔力を使い、大怪我も治せる様になる。彼等は好奇心が旺盛なのだが、人間との関わりの為に隠している。


 本来、ドワーフは見た物が珍しければ探求心がくすぐられる。

 だが同時に彼等は、自分達の力の弱さを知っている。攻撃魔法を扱えるのは、ドワーフの中では戦士と呼ばれる者達だけ。技巧は凄くとも、治療と防御が出来ても――それ以上の強い力には屈してしまう。



 現にこの城に連れて来られ、無理矢理に働かされたドワーフ達。

 連れて来たのは、魔王バルディルや上級魔族のラーク達。魔力探知が高い彼等の手により、隠れ住んでいた場所を当てられ連れて来られた。


 戦士ドワーフは、数が少なくなり守り手が少ない。

 本来なら集団で行動を起こす彼等も、人間とのいさかいにより個々に分かれた。その中でも、アルベルト達のグループは出来うる限りの集団生活をした。


 彼の父親であるジグルド。彼の仲間も同じ戦士だったが、魔物の活動がいつもより活発になりハーフエルフの村にまで被害が及んだ。最初はジグルド達は外に行かなかったが、フィフィル達のお願いにより外に出た。


 お人好しでもある彼等は、ハーフエルフ達を守る様に告げ自分達は必死で隠れる。

 だから安心して欲しいと言い、戦士達を見送った。まさにそのタイミングを見計らったように、バルディル達が現れ否応なくこの城に集められた。


 最初こそ自分達は、いつ殺されるのかとビクビクとしていたが――今はそうではない。




「……何というか、れいちゃんで色んな事も巻き込んで解決していくよね。ま、僕も人の事なんて言えないんだけど」




 アルベルトの仲間の経緯、アルベルトが何で1人だけで探していたのかを聞きハルヒはボソッと言った。人間との関りを諦めきれないアルベルトは、父親と喧嘩をしてそのまま出て行った。


 ふとした時に住処に戻れば、仲間は居ないまま。争った跡も殆どなく誰かに連れ去られたのだと分かる。そんな時に魔物の活発が激しくなっている事が重なる。原因を探ろうとしたアルベルトは、仲間達の手がかりを求めて当てのない旅に出た。


 しかし、それで良かったのだ。


 そうでなければ、アルベルトまで捕まっていた可能性もある。もしくは、抵抗したら死んでいたかも知れない。仲間の手がかりを求め、アルベルトはラーグルング国へと目指した。色んな種族との交流を持つ国なら、何か自分の知らない情報を掴んでいるかも知れない、と。




「成程ね。向かっている時にれいちゃんと会った訳だ」

「クポポ♪」

「それでそのまま行動を共にした、と。まぁ、結果的にはそれが良かったけど……。君、途中から目的が変わったんじゃない?」

「グ、グポ?」

「あ、図星? 仲間の事を探してはいるけど、それよりもれいちゃんの方に興味が湧いた訳だ」

「……」




 急に押し黙るアルベルトに、図星なのだと分かりハルヒはクスクスと笑う。

 その時だった。ふと、窓に映るアルベルトを見てピタリと笑うのを止めた。いつも見る身長ではないからだ。


 今のアルベルトは、見た目はそのままだ。かなり大きいのだ。ハルヒを背負える位に、膨れ上がった体に凝視。風魔と白虎はその様子に気付き、ハルヒに告げていない事があったのを思い出した。




『ドワーフは普通はあの大きさだけど、戦士は自由に体の大きさを変えられるんだって』

『アルベルトは、その戦士の子供だって初めて知ったんだ』

「な、な、な……」

「クポ?」




 ハルヒは驚きのあまり、口をパクパクとさせて顔を青くしている。

 アルベルトはその様子に気付くと歩くのを止め「クポポ?」と、可愛らしくどうしたのかと尋ねた。





「そういう事は早く言ってよーーー!!!」

「クポ!? フポポ!!!」




 いきなり騒いだハルヒに、アルベルトは困惑しながらも落ちさないようにと必死だ。

 その様子を見ていて笑うのは大精霊ノーム。混乱している彼も含めて、少しずつ説明をしていったのだった。



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