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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第6章:神と魔王と人間と
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第207話:魔王VS魔王


「へぇ、お優しいじゃないか。流石、ぬるま湯に浸かっていた者同士。反吐がでる」

「麗奈さんの声で変な事を言うな。彼女はそんな事は言わない」




 強制的に眠らせ念の為にと護りの魔法を発動させた。

 あの周囲なら、何が起きても無事だろう。そう思いながら麗奈に対峙する。そこで、サスクールは思い出したかのように手を叩いた。




「忘れてた。1つ面白いものを見せてやる」

「何……?」




 すっと手を出し、自身の目を一瞬だけ隠す。

 何かを仕掛ける気でいると思い警戒した。次の瞬間には、麗奈の瞳が黒へと変化していった。




「!?」

「ほら、これで元の色。これで見極めをしてたんならご苦労だな。いつでも戻せるぞ? 次は何が良い? 黒か? 紫か?」

「貴様っ……」




 奥歯を噛みながら、高濃度の魔力を腕へと集中。

 次の瞬間には麗奈の前へと姿を見せるも、既にサスクールも同じように魔力で生成した剣で対応した。




「どうした。何で怒る」

「そうやって、人の神経を逆なでする事ばかり!!! 生かす訳にはいかない」

「そう言って出来た試しがあったか!?」




 出来ないからこそ今の今まで探し続けて来た。

 国を滅ぼしただけでなく、サスティスをも殺した相手。姿を変え、のらりくらりと逃れ続けて来た仇敵。


 例え見た目は麗奈であろうとも、ランセはその中に居るサスクールへと怒りを募らせる。




「体を乗っ取り続けていないで本体で戦ったらどうだ!?」

「あいにく――そんなのないんだよ!!!」




 元の体があればどんなに良いか。

 気分が高揚しているのか、器として適性がある事が事実なのかサスクールは饒舌になった。


 


「誰か好き好んでこんな体に乗り移らないといけないと思う。それもこれも、この女の一族……朝霧が邪魔しなければ!!! 計画を狂わせて来るのはいつもコイツの家の関係者ばかり。2回目の時も、この女と同じ首飾りをしていた女もそうだった!!! 最後は自分から死にやがった。弱らせるつもりで、ユリウスを乗っ取ったというのに」

(2回目……? そうか、麗奈さんの母親の由佳里さん)




 麗奈の母親がこの世界に来たのは、ヘルスが呼んだから。

 それは聞いていたし、実際に交流をかわした。麗奈と同じく自然を愛し、動物達に好かれていた女性。

 そして麗奈と同じく、ランセを前にしても普通にしていた人。

 術の影響で死んだと聞いていたが、今のサスクールの発言で違う印象を受けた。


 由佳里は勘が鋭い。

 死ぬ直前、もしくは元の現代へと帰る事はないと悟っていた可能性。それを見抜けなかった自身に、腹が立ち「いつか帰れますし、手伝います」と言った自分の言葉がのしかかる。


 いつからその覚悟を持っていたのか。

 何でバカな事を言ったのかと思いながらも、攻撃の手を緩めない。




「ユウナとか言ったあの女。全部、アイツの所為で!!!」




 空間に穴が空き黒い手と人型が現れる。

 当然、ユリウスとヘルスの所にも現れるが、即座に蹴散らしたのはブルームと眷属のドラゴン。


 かわしながらそれを確認し、ランセは再び距離を詰める。

 だが目の前に見覚えのあるものに邪魔をされた。




(麗奈さんの、結界……!!)



 

 大きさがバラバラな半透明な四角い力。

 魔物を閉じ込めその結界を、術者が壊せば消滅。時には魔物や魔族の攻撃を防いできた。


 サスクールの魔力で強化されたのか、麗奈が作り出す数を越えていた。




「忌々しいのは変わらないが、適合させられただけの事はある。どの体よりも動きやすい上に気分が良い。アシュプと契約したからか、魔法も使えるしな!!!」




 視界を埋めつくような杭が現れる。

 避けうとした先で、ランセの足が結界に捕まり動きを封じる。




「ぐうっ……!!!」




 片足をそのまま持っていかれてバランスを崩す。即座に大鎌の柄でどうにかバランスを保ちつつ、視界に捉えていた杭が迫る。1つ2つを回避するのなら簡単だが、全方向に対しては無謀だ。

 舌打ちをしつつ、魔法を駆使して対処する。お互いに闇の魔法を扱うからか、ランセが防御した先から次々と解除されていく。




(同じ属性同士の魔法で防ぐのは無理があるな。だが再生の隙をサスクールが与えてくれる訳もない)



 

 魔族には再生させる力がある。

 それは下級、中級クラスにもあるが上級クラスにもなると部位の破損でも難なく行える。少しの魔力と自身の生命力を扱うもので、心臓の再生すら行える。

 魔族は2度殺さないといけないのは、この再生の力があるからだ。 

 それは、同族同士の殺し合いでも同じ。魔王同士の戦いでも同じ事が言えていた。




「残念な知らせを教えてやる。……ついさっき、アシュプが死んだぞ」

「!?」




 目を見開き、一瞬でも動きが止まりそうになる。

 だがランセは動き続けながらも、大精霊の父と呼ばれていたものの死に驚きを隠せない。その時のランセは丁度、妹のリグルと戦っていた最中だった。


 その時に、いくつかの巨大な魔力を感じアシュプだと思った。

 助けに来たのだと思ったが、その予想は大きく裏切られる。そして、サスクールは告げた。


 殺したのは麗奈と同じ異世界人だと。




(あの魔力が味方と思ったが、敵って事は……相手はアシュプだったのか)




 この世界の精霊達の父親。

 創造主から世界を見るようにと言われ、ブルームは空を守護する方に。アシュプは大地に降り、生まれて来る精霊達を見守り時に導いた。


 その精霊が、サスクールによって敵にされたのなら魔法の類は防がれるのだろうと予想がつく。そうなると、魔法以外での対処が必要。




(倒したのはハルヒ君か)




 攻撃の手を緩めないサスクールに、ランセは考えを巡らせる。止めを刺したのが、麗奈と同じ陰陽術を扱えるハルヒの可能性は高い。

 彼も麗奈と同じ精霊と契約している上に、破軍の力も強力だ。

 アシュプが倒れた今、自分達が魔法を扱えるのがどれ位なのかとふと思った。


 ブルームは自分達が消えれば、この世界から魔法が無くなると言っていた。ブルームとアシュプだけが使える虹の魔法。その片方が無くなったとなれば、ブルームだけでどれだけの時間が稼げるのか。




(こうなったら――)




 向かって来る杭を焼き払う。襲い掛かる全てではなく、1本の道を作る様にして焼いた。

 その意図に気付いたサスクールは、距離を取ろうとしてすぐに立ち止まる。ランセの姿が消えたのだ。

 その直前、濃い霧を生み出し視界を覆い尽くす。

 しかも気配も魔力も感じられない状況となり、即座に自分に周囲に結界を張った。




「何処だ……」



 気配は読めない。

 魔力も探れないとなれば、ランセの性格を考えれば良い。


 奴は必ず殺すと言っていた。

 それが例え自分の知り合いであろうとなかろうと。そう考えた時、サスクールは空へと逃げようとして――自分の足元から伸びる影に止められる。




「ちっ!!」

「これで!!!」

 



 伸びた影が徐々に形を成し、潜んでいたランセが大鎌を投げた。

 サスクールとランセごと貫くようにして放たれた。その行動の異常さにサスクールは叫んだ。




「正気か!? この女もろとも、自分も道ずれに」

「恨まれる覚悟なら最初から持ってる!!!」




 更に動きを封じる為に、手足を拘束し解除されないようにと光の魔法を混ぜ込んだ。

 光の大精霊サンクが、ランセの力を抑えていたようにその魔力をランセはずっと浴びていた。本来なら魔王に対して有効な力だが、契約を結んだことでいくらか緩和されている。


 その緩和で、ごく僅かだがランセにも扱えるのだ光の魔法を。




「な、に……」

「お前、は……!!!」




 しかしその大鎌はいつまで経っても2人を貫かない。

 ピタリと空中で止まり、思っていた攻撃が来ない事にランセは焦る。だが、サスクールは自分の見ている状況が信じられないのか、ずっと「何故だ。何故だ、何故だ」と言い続けている。




「だと思ったよ。……君、このまま死んで楽になろうだなんてさ。君の帰りを待ってる人達が居るの、知っててやるの?」

「サス、ティス……?」




 2人の前に見えるミントグリーンの髪。

 いつでもニコニコとしている顔を張り付ける。パチンと指を鳴らした瞬間、サスクールとランセは闘技場の床に叩きつけられた。




「うあっ……」

「ぐうぅ。何のつもりだ」

「え? お前のバカな行動を止めた私に対して言うセリフがそれなの? 酷い言い草」




 クツクツと笑いながらも、朱色の瞳は麗奈を見つめる。

 途端にビクついたサスクールは悔し気に目を細めた。ストンと着地し、離れているユリウスとヘルスを見て安堵した。

 その2人の近くに居る()()含めて。




「やあ、ようやく会えたね。サスクール」

「お前は殺した……。死んだ筈だ。ま、さか……この女、死神と――」

「そうだよ。そのまさか、だ」



 

 行きついた答えに言葉が出てこないサスクールに対し、サスティスは愉快そうに笑う。サスクールが気付かなかった麗奈の行動。それはそうだろう。だって、彼女がザジとサスティに会っている間は幻覚を見せ続けられていた。


 ユリウスの中に、サスクールの力が入っていたように麗奈にも監視の意味でそれながなされていた。

 ディルバーレル国では、ユリウスの中にあったサスクールの力を排除した時よりも前に、麗奈の中にあったとされる力は既にサスティスの手により排除されている。




「サスクール、君の力を感じ取るのは得意だよ? なんせ、私は君に殺されたからね。恨んでいるし、今も殺したい気持ちで一杯だ」




 でも、とそこでサスティスは言葉を切った。

 自分が来たのは、他に優先することが出来たからだ。




「彼女は返してもらうよ。その上で君を完全に抹殺するんだ。もう1人の相棒にね」




 ニヤリと笑い、十分な隙は作りだせた。

 あとは勢いだけ。そう込めて、サスティスはサスクールに迫っていたザジとユリウスにエールを送る。




「抑えつけるのは得意だから安心して。同じ魔王だから、それなりに対処出来るよ」

「当たり前だ。出来なきゃ、ぶっ倒すからな!!!」




 もう1人の死神に気付かず、しかし気付いた時には既に遅い。



 麗奈を取り戻す為。ザジとユリウスは、彼女の精神へと干渉する為に飛び込んだ。

 


 


 

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