表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第5章:虹の契約者
185/433

第150話:合流する力

  

 リッケルはこのままニチリに留まると言う選択をし、アウラとディルベルトはラーグルング国へと援軍として向かうように説明される。




「あの、リッケル……。辛くはないのですか?」

「辛いですね。恐らく、そこまで意識を保っていられないですね」




 正直に告げるリッケルにディルベルトは驚きのあまり、彼を凝視してしまう。その視線に気付いたリッケルは咳ばらいをし、自分でも素直に告げると本心を言う。

 それでますます驚き、口を開けてポカンとしてしまった。




「……人の事を何だと思っている。大体、私はな――」




 珍しい反応をした為に彼から小言を言われる。


 リッケルは元から王に仕える家の者だ。

 そして、王の傍で仕え支えるのを信条にしている事から、自然と宰相と言う地位に納まる形となった。リッケルのベルスナントに対する忠誠は、ニチリで住んでいる者なら誰でも知っている。


 王に無礼を働く者を許さない。

 その娘であるアウラにも、同じく無礼を働く者がいれば容赦しない。


 睨まれればピリピリとした雰囲気で、場内を占める為に警備をしている者達からすれば心がすり減る。何度、彼の前で静かに息を吐いたか数えきれない。

 だからこそ。

 幼いアウラを、王を殺そうとしていたディルベルトに対しては最初から良い印象を持っていない。だが、その王が彼を養子にすると言い娘のアウラが、彼から離れない事で納得せざる負えなかった。




(本来なら頼むべきではない……)




 アウラと話すディルベルトをチラリと見る。

 自分でも反応が珍しいと思うのは、やはりと言うべきか娘のアウラが変わっていくのを目の当たりにしているからだ。


 異世界人、ハルヒと出会いそのハルヒと知り合いでもある麗奈達と触れ合った事で今まで、閉じこもっていたアウラが自ら行動するにまでいたった。自身の運命に諦めていたアウラが、変わろうとするのを見て感化されたのだろう。


 父親のベルスナントも、リッケルも含んでいるのだと自覚するしかなかった。




「素直な貴方は……ちょっと怖いです」

「悪かったな。元から私はこうだ」




 やはりと言うべきかディルベルトはそう言い放ち、分かっていた答えにリッケルは不機嫌そうに答える。それでもふっと笑う自分の変化に、少なからず楽しいとも思えるのだから不思議だ。


 


「えと、鮮血の月と呼ばれるこの現象は私達には凄く効くのに、ティーラさん達には効かないんですか?」




 ゆきの質問にティーラは頷き、ドワーフである2人も頷く。

 疑似的に行ったからか、本来ならドワーフでも効果が及ぶのだが全くと言って良い程になんともない。


 ティーラ自身は僅かに魔力が上がった感覚はある。それ以外の変化はないなと答えゆきは疑問に思って首を傾げる。




「俺達に影響がないならエルフにも、影響は少ないのだろうな。元を止めれば、人間達にも反撃の余地はある」

「すみません。準備、整いましたぁ」




 慌てて来るのはアウラだ。

 彼女は長い髪を1つにまとめ、動きやすいようにと着物ではなくディルベルト達が着ているズボンをはいている。水色の長袖の上にはフードを被り、普段の彼女と違い活発そうに見える。




「アウラ様、本当に一緒に来るんですか?」

「はい。ウンディーネの契約者は私ですよ? それにここはシルフ様の魔法で守られていますし、ドワーフ様にもお願いしています。だから、大丈夫です」




 ねっ、とネストとバットルに同意を求めるように見られる。

 好意的な視線に即答出来ないでいると、ゆきも何でか安心しておりアウラと同じく期待を寄せられている。


 普段からそのような好意に慣れていないから戸惑っているだけ、と言いたいが勝手に話が進んでいる。完全にタイミングがズレたと思いながらも、仕方ないとばかりに頷いた。




(あのドワーフを言いくるめるとは……。くくくっ、やっぱりゆき達は面白い連中だな)




 ティーラは密かにそう思い、自分の勘も捨てたもんじゃないなと納得した様子で見ている。

 アウラの準備も整った所でラーグルング国へと転送の準備も整えていると、サラマンダーが告げヤクルが全員に確認を取る。




「もう1度確認するぞ。ラーグルング国に着いたら、魔物達を倒すのに優先。ユリウスかイーナスさんと合流する」

《……すまない、ヤクル》




 そこでサラマンダーが申し訳なさそうに声をかけて来る。

 思わずなんだと聞けば『既に魔物はいない』と告げられ、暫し無言の空気が流れる。




《兄が……先攻した》




 イフリートが既に向かっていると言われ、やるせないとばかりにヤクルは遠い目をする。

 精霊をコントロールするなんて、絶対に無理だ。

 そう読み取れる雰囲気にティーラは肩に手を置き「まっ、頑張れ」と一応の声援を送った。



=======



「ギカント・ソンブル」




 瞬時に魔力を練り上げ、地面に手を置き魔法を発動させる。

 ランセを中心に作り出された巨人は、人型を模し長い手が特徴な半身しか出ていない。

 1つ目は、空から迫りくる魔物達を見て敵と認識しその長い手で握り潰す。ドクン、と鼓動が鳴るような音が聞こえたかと思えば吸収され姿を失くす。


 それがこれから迫ろうとする魔物に、躊躇させ動きが止まる。

 そこを叩き込むようにしてランセの斬撃が飛んでくる。大鎌を振り抜き、剣のように扱う様は初めて持ったと言われても疑問に思う程に馴染んでいた。




「そのまま上空の魔物を消せ」




 命令を下せば巨人は頷き、リーチを生かして腕を振り抜く。

 その腕に攻撃し、体にも集中的に攻撃を浴びるが巨人は怯む事はない。無言のまま、ただ腕だけが迫ってくる。


 魔法を無効化する筈のキメラを飲み込み、魔法で攻撃が出来る魔物も無意味。

 体は貫かれるも、すぐに再生し意味をなさない。

 どんなに攻撃を加えようとも、定められた敵を飲み込む巨人に魔物達は段々と恐怖を覚えてきた。


 当たった所から消えていく魔物は、そのまま巨人の活動エネルギーとなり今まで1つ目であったのが3つ目に増える。




「待て、攻撃はするな!!」




 ピタリと巨人の動きが止まる。

 ラーグルング国に迫る魔力を探知したランセは、空を睨むようにして見ていると変化がすぐに表れる。

 国全体に赤い魔方陣が現れ、そこから巨大な魔力が流れ込んでくる。


 瞬時に火柱が国の周りを囲むように生まれ、敵の攻撃かと思ったランセが防ぎに掛かる。




《フラム・ファイント》




 その魔法陣から声が聞こえ、それを合図に火柱が激しく取り囲む。

 それはランセやユリウス達を目標にせず、国に迫る魔物、魔族を狙い瞬時に灰燼(かいじん)となった。


 この高火力は精霊によるものかと、ランセが思っていると黒騎士が控えて防御姿勢になる。




《衝撃に備えろ》

「っ」




 短く現れた理由をいい、直後に炎がランセに迫っている事に気付く。

 黒騎士の前に巨人を移動させれば、さっきまで魔物を喰らっていたとは思えない程に簡単に貫かれた。


 さっきまで微動だにせず、再生してきたにも関わらず炎は巨人を飲み込む。

 再生するスピードよりも、燃え続ける炎の方が焼き尽くすのが早い。




(魔力純度が高すぎる……!!!)




 黒騎士は炎を防いでいると、別の影がそれらを覆う。

 



《待ってくれ、兄さん。その人は敵ではない!!!》




 バクン、とその炎を飲み込んだのはヤクルが契約したサラマンダー。それに驚いていると、頭上から馴染みのある声がかけられる。




「お、良かった。お互いに生きてますね~」

「ティーラ……」




 警戒を解き、脱力したように返事をする。

 続けてヤクルだけでなく、ゆき、アウラ、ディルベルトがそれぞれ精霊に乗って降りて来る。 




《なんだ、敵側の魔族かと思ったぞ》

《彼は違うます。あのですね――》




 危うく焼かれる所だったとランセが思っていると、ティーラが近付き何で彼等と行動するのかが分かったと告げて来る。




「アイツ等といると面白いから、だろ?」

「……」




 違うと即答できない自分が悔しくて、ランセは「そうだね」とどこか諦めた様に答えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ