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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第4章:魔王軍VS同盟国
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第120.5話∶四大精霊


 ノームの説明により、麗奈は四大精霊とは? と言う質問の解決をしていた。大賢者であるキールからは、基礎的な事しか教わらなかったし、水、風、炎、土に上位の属性があるとは知らされていなかった。




(ラウルさんが水の上位。イーナスさんが風の上位を扱っていたなんて……)




 イーナスの扱う力は無属性だと説明をされていただけに、思わずむっとなる。しかし、ノームはそんな様子でもクスクスと笑っているだけだった。




《まぁ、徐々に教えるつもりだったんでしょ。その時はまだお父様と契約をしてなかったからいきなり詳しくは、ねぇ……?》




 基礎は基礎。

 確かにリーグと話を聞いていた時、麗奈は魔法を扱う事は出来なかった。ノームの言う通り、ウォームと契約してから扱えたのだ。

 召喚士は精霊と契約する事で、精霊の扱う魔法を使える。

 力は下がるが、それでも使い慣れている人よりは幾分か威力も魔力の密度も違う。


 逆に言えば、精霊を封じられれば何も出来ないに等しいと言う弱点はある。




「あの、ノームさん。四大精霊と他の精霊とで何か違う事があるんですか?」

《うーん。他よりは長い生きって事かな》

「長生き……?」

《私達はお父様が生まれた時、初めて作られた存在でね。言わば長い歴史をずっと見てきた存在なんだ。だから他と違ってちょっとした特殊な力はあるんだよ?》




 ノームの話によれば四大精霊とは、アシュプとブルームによって作られた最初の精霊。

 風の大精霊、シルフ。

 水の大精霊、ウンディーネ。

 大地の大精霊、ノーム。

 炎の大精霊、イフリート。


 魔法の基礎となる四つの元素。その力の象徴が自分達であり、他とは一線を違う力を有するのだと言う。




「違う力、ですか」

《良い例はウンディーネの力だね。スライムが居たでしょ? あれ、彼女の眷族だから自由に見聞きできるから情報の収集能力は凄いよ》

「へぇ~~」




 思わず綻んだのはスライムの感触を思い出したからだ。

 プニプニとした感触で、見た目は水だから冷たいと思っていたが体温は意外に人肌位にはあった。なんだか心地よくで枕代わりになりそう……と、そこまで想像していたらノームが面白そうに笑っているのが見えた。




「………。」




 思わず顔に熱が集まる。

 ボッと顔が沸騰したように熱くなるのが分かり青龍が『気にするな』と優しく頭を撫でている。

 そんな行動をされてしまい、ますます麗奈は恥ずかしい気持ちになった。




《私達は眷族を扱える特別な存在。魔力量も多いし、領域を展開するのに苦労はしないよ。加えてお父様達と同じように長い間、展開していても苦にならない》




 だから、私は隠れるのが得意なんだ。

 そう、笑顔で言われてしまいどう答えて良いのかと迷う。今まで、姿を現した事はないと断言してきた。




「人が……嫌いですか?」

《………。》




 ドワーフは人間を守る為に進化して巨人になった。

 その急すぎる変化に今まで交流をしてきた人間達の態度は一変。一気に化け物扱いへと変わってしまった。

 ドワーフが人間に対して長い間、心を許さないでいるのもそこが根源にある。だから、ノームは言った。


 自分がドワーフと人間との懸け橋になってくれるのでは、と。




「ノームさんは私とアルベルトさんが仲良くしているから、だから今まで姿を現さなかったのにこうして……会ってくれたんですよね?」

《うん、そうだよ。………正直に言って、私は人間が嫌いだ》

「っ……」




 感情を読ませない冷たい視線。ゾクリ、と殺気とも取れるものに思わず麗奈は息を飲んだ。

 ツヴァイからある程度話には聞いてた。

 ドーワフと人間との深い溝。そして、ノームは恐らく……それを一番近くで見ていた精霊だ。


 彼等の気持ちに寄り添うのは、同じ属性を操れるから。

 彼等の悲しみ、嘆きを一番近くで見てそして怒りが……ノームを変えた。


 精霊を見る事が出来るのは召喚士だが、領域を展開した精霊までは見れない。アシュプとブルームが今まで、存在としては認知できるのに実際に姿を現さなかったのはこういった経緯がある。




「ごめん、なさい……」

《えっ》

『………』




 驚いたのはノームの方だ。

 青龍は麗奈の答えを分かっていたかのように静かに頷いた。




《なん、で……君が謝るの?》

「だって……アルベルトさん達の事を近くで見ていて、人に対する不信感を抱いたのに……なのに、ノームさんは私の前に姿を現した」




 変わりたいんだよね、と。

 微笑まれている中でそう言っているように感じた。今も、麗奈の膝の上で寝ているアルベルト。

 彼は同じドワーフの中でも特殊だ。

 父親から聞かされた人間との交流。最初に交流をし、人間との絆を深め共に街や国を作り同盟にまでなった、その経緯を。


 そして、それが魔王から攻撃を防ぐのに進化した力によって一気に崩され自分達が絶望したと言う事も話している。

 だと言うのにアルベルトは、彼は他のドワーフと違って人間の可能性を求めた。


 昔、そのように交流しているのなら今だって出来る筈だと。

 人間から隠れるようにしてコソコソしている自分達。それは、怯えだとアルベルトは思った。

 築いた絆を引き裂かれ、信じられるものは同種だけ。

 そう固執し、歩み寄ると言う行為自体に蓋をした自分達。




《彼は……最初に空を見たんだ》

「え……アルベルト、さんが?」




 静かに頷き話し始めた。

 アルベルトは父親から聞いた人間の醜さを聞いても、今も全ての人間がそうであると言う事はないと思っていた。そして、言いつけを破り自ら住んでいた洞穴から出て行き……初めて大地を踏みしめ、広くて青い空を見上げたのだ。


 元々、地下に住んでいるドワーフ。

 大地を踏みしめ、土を踏んでいるのには慣れている。しかし、地上に出て初めて見た広い世界。生い茂る草木、照りつける太陽の光、澄み渡る青い空。




《アルベルトは……そこからよく出かけるようになったんだ。内緒で出かけてよく鳥に攫われてたよ》

「ふふっ。最初に会った時にも言っていました。鳥に攫われて、逃げる為に荷造りの所に潜り込んだって」




 その時の事を思い出したのか麗奈は笑って答えた。

 ノームがアルベルトに付いて行ったのも、物珍しさからもあり他にも理由があるが……それを今、告げるのはダメだなと思った。


 本人であるアルベルト自身、自分と言う存在を感知していない。

 もしくは感じていても、心の何処かでは拒否をしている。だからこそ、こんなに近くに居ても彼は知らぬふりをする。


 存在を感知しない。ノームと言う存在を認めていない。だからノームは気付くまでは共に居ようと思ったのだ。認めた上で、彼に選択をさせるために。




《そうだ。貴方に言っておくことがあるんだ》

「はい。何でしょうか」

《魔王、サスクールは――》




 ズキン、と直接脳に伝うような痛みがノームを襲う。

 物理的な、攻撃だと思った。

 普段ならそれに負けるような自分ではないが、言葉を言わせない為なのか頭に直接響くような痛さに思わず倒れかける。




「ノームさん!?」




 その寸前、麗奈が彼を支える。踏み止まり起き上がろうとするが、未だにズキズキと頭にくる痛みがノームの行動を遮ろとする。全ての行動に遮断させるような、強い支配する攻撃。




「おしゃべりだよ、ノーム」




 直接、頭の中に響く声。

 体を支えている麗奈の方を見れば、彼女には聞こえていない様子なのかずっと自分の方を心配したように見ている。


 思わずそう来たか……と思った。




「麗奈ちゃんに何を伝える気だったの? 彼女に知られるのはマズいんだよね。……あまり勝手な行動をするのなら存在ごと消すよ?」


《つうっ……!!!》

「ノームさん!?」




 痛みが増す。言葉を発せられる度に体中に走るビリビリとした衝撃。意識を持って行かれそうな感覚、存在を消せると言った人物。

 ここまでか……。と諦めた時、フッと痛みが消えた。




《………?》




 今まで自分だけに襲っていた、痛すぎる程の攻撃。

 あっさりしすぎて、自分が攻撃を受けていたとは思えない程に綺麗になくなっている。思わず誰がやったのか、と思い青龍と目が合う。




《(まさか………)》




 実行した人物に目を見張る。彼が自分を助ける理由は思い当たらない。疑問に思っていると、麗奈がずっとノームに声を掛け続けている。


 大丈夫なのか、一体何があったのか……? 体の調子が悪いのか?




《だ、大丈夫……ちょっと、頭痛がしてね》

「考えすぎですか? 無理をしてはダメですよ」

《うん……そうする》




 助けられたのだと思い、感謝しなくてはと思っている所に無粋で入ってくる大精霊が居た。ノームがそこに視線を合わせると物凄く嫌な表情を相手に向ける。




《おうおう。何だよ、久々に会ってその態度かよ》

《急に行くかって言うからよ》

《………すまないな、麗奈》


「フェンリルさん、シルフさん、ウンディーネさん……。皆さん、一体」




 ニチリの守護についているシルフ、ウンディーネ。そして、咲と共に来たダリューセクのフェンリルが姿を現したのだ。ノームを見ると凄く嫌な顔のまま何で居るんだと言わんばかりの視線を彼等に向けられている。




《いやー、お前って殆ど姿も現さないのに、急に力を感じたからな。こりゃあ、挨拶しようかってなってな》

《いや、なってないし。シルフが勝手に乗り込んだんじゃない》

《………俺は止めておけ、と言ったんだがな》




 シュンとなるフェンリルにノームは《押しが弱いんじゃない?》と、低く唸るような声にビクリとなり後ろへと下がっていく。麗奈は「そ、そんなに言わなくても……」と言われてしまう。


 助かったのは彼女側に付く青龍のお陰だ。


 お礼を言いそびれたし、彼女に今の状況を伝えるなと言う圧力があったのだから説明が難しい。そんな意味も込めてノームはフェンリルに謝罪をした。

 脅して悪かった、と。




《お、やっぱり珍しい》




 ニヤニヤするシルフをどうしてやろうか、と本気で思ったノーム。ウンディーネは呆れた様子で《止めなさいってば》と止めに入り、フェンリルはこそっと麗奈の後ろに隠れるようにして移動している。




《よう、心境を報告しながら今後の対策でもしようや》

《語る事などない》




 プイッと背けるノームに、シルフはしつこく《やろうぜ~》と話しかけられあしらわれる。そんな様子を見ていた麗奈は(仲、悪いんだろうか……)と心配になった。


 


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