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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第1章:陰陽師と異世界
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第10話:試験開始

ブックマーク登録ありがとうございます。頑張ります!!

 東の森の一件を聞いたイーナスは驚いた。まさか、彼女は2人目の召喚士としての素質がある、と言うだけでも驚きだが精霊からもお礼を貰ったと聞きますます面白くなる。



「報告は分かったよ。……じゃ、意見を聞こうかな。2人はどう見る今回の事」

「……そうですね。私は彼女は敵でないと断言できます」

「へぇ、ベールがそんなことを言うなんてね………」



 宰相の執務室。そこに居る人物は宰相、騎士団長のベール、副団長のラウルの3名のみであり、見張りの兵士達は出払って貰い念の為に結界を張ると言う徹底ぶり。ベールの意見にイーナスは目を細めて、何でそんな意見を?と視線を送れば簡潔に答える。



「精霊が認めた者が敵なら、精霊に見る目がないだけです」

「………酷い言い方。精霊に謝りなよ?」

「事実を言っただけです。精霊の力を行使するしないに限らず、声を聴くだけでも絶大な力と影響力がありますからね」

「ラウルは……いいや報告は。言わなくても分かるしね、だって彼女の味方になるって殺す気で宣言したんだもんね♪」

「……へぇ、貴方そんな事したんですか」

「物珍しそうに見ないで下さい………」

「じゃ、柱に影響を与えたのは陛下以外に居た。それにはどう説明をつけるのかな」

「それは………彼女が陰陽師だからだと思います」

「その根拠は?」

「…精霊自身がそう言ったと聞きました。彼女以外にもこの世界に来た者が居てその人は、精霊と盟約を交わし何かを守っていたと聞きます。自分とユウナと言う人物は見た目も雰囲気も似ていたそうですし」

「……そう。じゃ、陛下に報告はしないね、居るから」

「どうも」

「討伐お疲れ様です」

「ん。ラウル、どうだったんだ?」

「あ、いえ………その」

「成程、陛下の便宜の為に彼が無理矢理付いてきた、と。聞いて下さい陛下。その便宜も空しく何も出来ずに帰ってきましたから」

「ちょっ!!!」

「おいおい………何の為にベールに無理言ったと思ったんだ」

「すみ、ません………」

「いやー慌てふためく彼を見たのは初めてで笑いを堪えるのに必死でしたよ」

「酷い事を考えていたんですね!!!」



 自分がいじられている状況に納得のいかないラウル。陛下はその報告を聞いて納得はした、と言った感じで宰相にどうするのかと問うた。



「……精霊の言葉だけで判断するには大臣達を黙らせられないからね。実力を見せるかも、って言うのは麗奈ちゃんには伝えてあるから準備はしてると思うんだよね」

(今、黙らせるって言ったのか………)

「私達が居るから良いですが、他の兵士達が聞いたら卒倒ものです。発言には気を付けて下さい」

「リーグにも言ってやって。彼、私の事をいつ殺そうかとか考えてるから。陛下が拾ったんだから管理はちゃんとしてくれないと」

「イーナスが変な事言って、アイツを怒らせたんだろ?俺は素直になれーとしか言ってないんだし」

「……………ちっ」



 舌打ちした時点で、思い当たる節があるのだろう。何も言わなくなった宰相に、陛下達は怒らせたのは確実かと納得した。考え込む彼はやっぱり試験は行うと告げる。それに各々の反応は様々だ。ラウルは睨み付け、ベールは考え込み、陛下は何も言わないが目だけで殺しに掛かるような雰囲気を醸し出している。



「約2名は物凄い反対の意見だね。けど、大臣達を黙らせたいならこうでもしないと。私達が好意的に接しても、いずれ問題はくるでしょう。………正体も掴めない人間を信頼するって言うのはそうことでしょ」

「それには賛成です。4騎士の中でヤクルは未だに彼女を警戒し続けていますし、副団長は好意的。こうも真逆だと意見をまとめるのが大変ですね♪」

「嬉しそうに言うな、出て行け」

「嫌ですよ、貴方をイジメるタイミングはそう何度も来ないので。ここぞ、と言う所で言います」



 バチッ!!と火花が散るような音が聞こえるのは気のせいではないな、と睨み合う2人にラウルと陛下はため息を吐く。しかし、麗奈の扱う陰陽師としての力は見た事がないので信頼におけるか、と言われれば難しい。

 実際に使ったのはヤクルとの攻防。それも力がぶつかり合う前にリーグが止めに入ったので見ていないに等しい。



「恐らく魔物に対する力はあると思うよ。魔力を扱う私達とは違ったものだろうけど、精霊に認めてられたなら……そういう力も少なからず感じたんだと思うしね」

「なら予定通りに試験はやる。騎士団長、副団長を含めてだな。あとゆきも来るようにするからな。多分、麗奈からも言われるだろうし。……っと、俺はここで。約束があるから」

「「約束……?」」



 イーナスとベールが同時に疑問を口にした後には陛下の姿はなく。ラウルは何の事を指しているか分かり納得する。と、キンと部屋の温度が下がったような感じに思わず部屋を出ていく。



「待ちなさい」

「っはい!!!」



 ベールが呼び止める。ただ、呼び止めると言うのに何で自分はこんなにも冷や汗をかかないといけないのか……。陛下はこれを察して出て行ったのか、と悔しそうにしていると何があるの?とイーナスに笑顔で聞かれる。



「えっと…………」



 目の前には笑顔のままの年上2人。陛下の秘密と自分の秘密……どちらも知られる訳にはいかない、と思ったラウルの行動は簡単だ。そのまま何も言わずに急いで逃げる、うん、これに限ると思わずにはいられない。



「さて、逃げられたから次は逃がさないようにしないと。じゃ、ベール引き続き彼女達の事お願いね」

「はいはい」



 出ていくベールは今後の事を副団長に知らせ、年下組にも伝える事をするかと思いまずは図書館に足を向けた。何をするにも読書をしてから、と麗奈から教わった本を楽しみにしながら久々に心が躍る気分に不思議な感覚を覚える。




 覚悟を決めたと言え2週間は簡単に経つ。今日が見納めかも知れないと、国の風景を目にしっかりと焼き付ける。その表情は怯えでも恐れでもなく、ただ笑顔。2週間で色々な事が起きた。まさか自分にゆき以外に親友と呼べる者があるとは……と驚いた。不思議な事にあの首飾りの宝石は全て消え代わりに宝石の色と同じ水晶が4ついつの間にか並んでいたのだ。


 おじいちゃん精霊の力。と考えていれば、その水晶は首飾りに吸い込まれるようにしても元の宝石が収まっていた形になった。一緒に来てくれる、と言う事なのか?と思いながらもそれを身に着け気合を入れる。



「おっはよう麗奈ちゃん!!今日だよね、結果分かるの」

「………あ、うん。誰かから聞いた?」

「ごめんね、色々と考えてるのに。……でも、リーナに言われて気付かされたからもう平気。怨霊退治みたいにカッコいい麗奈ちゃんで頑張ってね!!って事で、好きな物を作ったよ」

「わぁ、朝食にはご飯だよね。日本人に生まれたんだから」

「ここでもお米に近いのがあったからサティ達に手伝って貰って昨日、完璧に炊けるようになったんだよ!!!それにリーグ君、ラウルさんの協力もあったんだよ。お兄さんのセクトさんにお姉さんのイールさん!!ホント、皆に手伝って貰ったから出来たよ」

「……うん、ありがとう。泣きそうだね、ゆき」

「っ、だって………今日で別れるかもってなると、そう、思うと………」



 用意してくれた朝食はスクランブルエッグに、紫色の和え物、赤い汁物、黄色いご飯と見た目はあれだが味は自分達の良く知るご飯の味でありほうれん草の和え物であり、みそ汁でもある。色に惑わされてはダメだな。とここに来て学んだことの1つでもあり良い教訓かな、とも思う。



「不思議とね、怖くないんだ。ゆきが頑張ってくれたからだしこの前話した精霊の事もあるかな。今日は調子いいから大丈夫。うん………凄く落ち着いてるんだ」

「うん……うん」



 ゆっくりといつも作ってくれる物を味わう。いつも自分が学校に行く時に食べてきたものだし、異世界に来ても変わらずに作ってきた物。ホント、料理の天才だなと思い本当に料理を習わないと……と心が沈むが今は違うなと思い食事を勧める。

 暫くしてコンコンと部屋をノックする音が聞こえ一拍置いてから「失礼します」と入ってくる人物を見る。副団長のリーナだ。今の彼は、騎士団の正装として白いマントに薄い緑色の上着とズボン。リーグの扱う風の属性の色をイメージして作られているな、と思っているとニコリと笑顔に会釈される。



「お二人を陛下の居る謁見の間へと案内します。最初に2人が来た所であり、団長が助けたあの場所です。……良い思い出ではないでしょうが、そこは我慢をお願いします」

「………はい。リーナ、ゆきに優しくしてくれてありがとう。頑張るね!!」

「はい。……緊張はしますが、仕方のない事。陛下も2人会うのは初めてだと思うので、雰囲気は怖いですが陛下は優しいので安心して下さい」

「ん、リーナが言うならそうだよね!!よし、行こう麗奈ちゃん!!」



 部屋を出ればサティ達が待ってくれていた。ラウルが言ったのか、もしくは初めから聞かされていたのか。ターニャはもう泣いており、サティはそれに溜息を付きウルティエはしっかりしなさい!!とターニャを叩きゆきと麗奈に向き直る。



「セクト様から聞きました。お二人の事。……ムカついたから思い切り殴りました。ラウル様は覚悟してたので殴らずにしておきました」

(酷い……)

「っ、うくっ。嫌だよ、嫌だよ!!2人と別れるなんて!!!」

「わわっ」

「……ターニャ」



 泣きじゃくる彼女は思い切り抱き着く。まだ話してない事がある、まだ2人に案内してない所もある、と何度も思いとどまらせるようにしている。ラウルの言うように同い年と言うのもあり、明るいターニャには本当に助かったな、と麗奈は頭を撫でる。



「秘密にしててごめんね。でも、イーナスさんの言う事はその……ね。ほら、異世界から来たから証明するには、ね。特殊能力があるならそれを確かめたいじゃない。そんな感じだよ」

「命のやり取りするのに、そんな明るく言わないで!!!!」



 シン、と静まり返り息を飲んだのはゆきだ。リーナは申し訳なさそうに頭を下げ、サティとウルティエからは冷たい視線を送られている。ゆきは昨日、イーナスから君はこの国に居ても害はない、と断言されていた。

 では、麗奈は?と聞いた時。彼の言った言葉に驚きもなかった。何故か、自分が良そうしていたからだ。



「想像通り、麗奈ちゃんには試験を受けて貰うよ。以前、彼女から聞いていたしね。怨霊退治に使っている力は魔物にも通用するのかそれを大臣達に証明させないと、ね」

「…………」

「反論しないんだ。君の事だから怒鳴るか殴られる覚悟はしてたのに」

「今更止められません。それに、麗奈ちゃん分かってるから………イーナスさん、酷い事言う割には待遇良すぎるんですもん。普通、見張りの兵士とか置いたり独房とかに入れるのに……2週間、全然そう言うのが無くてホント自由にして貰って。だから、なんとなくイーナスさんが味方って言うのは分かってました」

「……そう。でも、それを乗り越えるのは麗奈ちゃん次第だ」

「絶対に負けませんよ、麗奈ちゃんは」



 昨日、イーナスに言った。親友は負けない、と。ターニャの気持ちも分かる……両親を失って住む家も無い所を助けてくれたのはセクトのお陰だと。優しくしてくれたラウルのお陰でもあると、彼女から聞いていたから自分も話した。自分も両親が怨霊と呼ばれる目に見えない相手によって死んだ事、助けてくれたのが麗奈の両親だと。

 だからゆきはターニャに言った。心配してくれるのは良いけどもう決めた事だと、麗奈ちゃんに応援して欲しいと頼んだのだ。友達の言葉に頷き、麗奈に言った頑張って……と。それを笑顔で行ってくるねと言う麗奈に、ターニャは泣き崩れウルティエとサティは無事を祈るしかなかった。


 余韻に浸る隙も無く辿り着いたのは大きな黒い扉。普段なら見張りの兵士が居るとの事だが、今日は特別にその兵士達は居ない状態だと言う。中に入れば重苦しい空気が辺りを包む、息を飲む麗奈にゆきは緊張している。何とかリーナに付いていき大きな水晶の前に2人は辿り着く。


 そして、陛下を見て思った。麗奈は何処かで見た顔だな、とあれ?とマジマジと見る。自分達と同じ黒い髪、それと紅い瞳に整った顔。あ、と思い出し次には叫んでいた。



「あ―――――!!!」

()()()()()、異世界からの来訪者」


 ビクリ、とゆきとリーナは驚く。指を指し固まる麗奈に陛下は意地悪が成功したかのような顔。それにイーナスはなんとなく思い当たりラウルはマズいと思った。

 キッと思わずラウルを見れば、慌てて顔を逸らし麗奈と視線を合わせないでいる。それに兄セクトと姉のイールは意味が分かっているのか笑いを堪え、その様子を不思議そうに見ているリーグとヤクル、フィン。ベールは楽しそうに見ており大臣達は突然の大声にビクリとなり陛下の機嫌を盗み見るも彼は変わらず笑顔。

 それが、彼等にとっては恐ろしいのだが分かっていない麗奈は慌てて指を引っ込める。


「さて君には進言した通り、試験を行って貰うよ。魔物の行動が夜に制限されて1週間ちょっと。手下と言う意見もあるから違うって証明してね?」

「具体的には……どんな事を?」

「北の森、今日はそこに行ってもらう。以前にも柱に触っただろうけど、触って城に戻る。それだけ」

「北……」



 昨日、森の精霊が急に姿を現した。警告を言いに来た、といつにもなく真剣な声に麗奈は耳を傾ける。彼は北には行くなと言ってきたのだ。以前にも言った時にはそんな事を言わずにおり疑問に思う。

 嫌な流れがある。と警戒するように言ってから再び姿を消した。朝起きた時に感じた嫌な雰囲気。最初は気のせいだと思っていたが急に北の方角の気が嫌な感じに変わっている、と気付きどうしようかと思った。



「意見があるなら良いよ。君には私達には見えない何かがあるようだし、柱の色なんて私達は全員知らないしね」

「いえ、大丈夫です」



 その答えに疑問を感じたのはゆきだ。一瞬、歯切れの悪い感じに思わず静止を掛けるも「転送」と言う言葉に阻まれ麗奈は姿を消す。その流れに疑問を感じたラウル、リーグ、傍に居たリーナは何故か不安に駆られた。



(なんだ、この感じ………)



 同時に感じた不安。水晶には麗奈が森に到着した様子が映し出され、ゆきが声を上げるも向こうからは返事がなく麗奈の声だけが響いていた。



「頑張るしかないね、エイエイオー!!」



 既に式神を5体揃え奮い立たせる。が、式神の身長は50センチ程で水晶には上手く映し出されていない。たまに白いにかが写り込むもすぐに姿を消してしまう為、麗奈だけが変な動きをしているように見えてしまう。



「麗奈ちゃん頑張れ!!!」

「お姉さんファイト!!!」



 映し出される麗奈に声を掛けるゆきとリーグ。ラウルはゆきに言うのを忘れた、と思い出しベールは「向こうには分からないんですけどねぇ」と付け加えるように言い放つ。



「陛下、少しうるさくても良いですよね?」

「リーグは知らないからな。あの水晶を扱うのに魔法師が4人も必要だからな。よく笑わないでいられるな」

「彼等も仕事だしね」

(後で飲み物でも渡すか)



 そんな事を思う陛下は知らない。今から危険な所に自ら飛び込もうとするなど、麗奈は無茶はしないと思いながらも表現しずらい不安が何故か自分にも降りかかる。


 一体、北の森で何が起きるのか。試験開始と同時刻、この世界に呼ばれた者達が他にも居た事を知らずに………。


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― 新着の感想 ―
[良い点] いよいよ試験の始まりですね。 一見簡単そうだけど、裏で何かありそう。 そして他にも異世界転生者が居るのか!? これは先が気になる展開です♪
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