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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第4章:魔王軍VS同盟国
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第106話:ニチリの変化③~対面~

 一方のラーグルング国では、ヤクルがニチリへと向かったゆき。ダリューセクに向かった麗奈とユリウスの事が、心配で何度か廊下を行き来する。




「団長……」

「あ、あぁ……すまない」




 部下の騎士がヤクルの事を心配して声を掛ける。はっとなり平常を保とうとしてやはりダメだと思い……いきなりしゃがみ込む。




「俺は……いつだって置いてぼりだ」

「いえ、そのような事は──」

「麗奈はよく巻き込まれ、ユリウスが迎えに行くのが当たり前になってきた。ゆきも麗奈に影響されてか、行動を移すのが早すぎる」

「それは……」




 思わず周りに居た騎士達に視線を向けるも、全員が頷きヤクルの言葉が間違っていない、と示す。思わず声を掛けた彼も困ったように視線を泳がせて「……そ、そうですね」と肯定せざるを得ない。




「ヤクル、宰相から召集……どうした」




 声を掛けてきたのはセクト騎士団長。その後ろでは姉のイールがどうしたのかと、小声で聞いている。事の顛末を聞いた2人はヤクルに視線を向け肩を叩く。




「安心しろ、俺も置いてけぼりだ」


──そんなフォロー要らない。




 思わずジト目になるヤクルにセクトは「だってそうだろ?」と気にした様子ではない。イールとヤクルの部下達は溜息を吐き、ここ3ケ月程でこの雰囲気に慣れた自分達が怖いとさえ思わせた。




「んな顔してたらラウルにがっかりされるぞ」

「それは……嫌です」




 今は居ない副団長のラウル。

 彼は氷の魔法を扱う事から、レーグと共にダリューセクへと向かった。ダリューセクは水の都と言われる程に水に恵まれ、水の魔法を扱う者達が多い。本来ならセクトが行く予定だったが、イーナスから待機を命じられた。

 



「ダリューセクのフェンリルと相性が良いんだって。同じ氷だし、ラウルと仲が良いらしいのも聞いた」




 いつの間に、とセクトは思った。

 ディルバーレル国に飛ばされた麗奈は、そこでダリューセクの精剣である大精霊のフェンリルと知り合った事は報告で聞いていた。

 その影響を受けたラウルは何かしらの契約を交わしたのかとも思った。




「………嬢ちゃん怖いわ」

「そうだね。色々と状況を変えまくるし、なかなか一か所に留まらないし……キールが2人増えた気分だ」




 でも、素直に言う事は聞くからまだマシか……と、遠い目をするイーナスに思わず「ご苦労様」と言えばギロリと睨まれた。




「……え」

「君みたいに仕事をサボる団長もいるしね」

「あー………悪い」




 睨みに圧倒され思わず謝罪をした。それにふぅ、と溜め息をつかれて思わず体を強張らせた。ヤクルと共に召集が掛かり執務室に行けば待ってたとばかりに説教をされ、自分も怒らるのかとぼんやりと考えていた。




「……悪いけど、2人もニチリに向かって。被害が深刻で、国民を守る事しか出来そうにないんだ」

「そんなに……?」




 ヤクルと顔を見合わせ信じられないと、いった感じでイーナスをみた。しかし、彼は真剣な表情であり魔物が四方から襲い掛かれば撃退は出来ないとハッキリ言った。




「ニチリのベルスナント王からの直々の救援だ。既にユリウス達は対処しているから合流して」

「ゆきと誠一さん、ハルヒは無事なんですね」




 ヤクルがその質問をし、イーナスは顔を伏せた。それだけで嫌な予感がした。




「ゆきちゃんとハルヒ君は……海に引きずり込まれたままだ。既にあれから数時間は経ってる……恐らくは」

「っ……!!!」




 目を見開き、自分の息がヒュとなるのを確かに聞いた。セクトは宰相からワザワザ召集が掛かりその時から不安はあった。呆然としたヤクルを連れ「分かった」とイーナスに言い、そのままニチリへと行く為に魔道隊の元へと合流する。




「……ゆきちゃん、ハルヒ君……」




 2人が出て行った後でイーナスは目を閉じた。自分で言ったのにヤクルの呆然とした表情が忘れられない。



──ショックを、隠しきれなかった。



 彼は真面目であり、リーグと同じ豪快さはあるものの、炎の属性ならば納得いく。激情に駆られるように、激しい力を振るうがラウル同様に彼も自身の力は抑えられていない。



 魔力量はリーグが一番、破壊力はヤクルと言うのがイーナスの認識だ。しかし、ベールとフィルがエルフである事を隠していたのでこの認識は間違いになるなとも思った。




「……麗奈ちゃん、ショックを受けるだろうな」




 思い出されるのは陛下と同じ黒い髪の少女。

 魔法とは違う力を持ち陛下の呪いを解き、今もニチリへ着き奮闘している麗奈を思い出してイーナスは静かに息を吐いた。ヤクルと同じくショックを受けるているのか、受けてもなお表には出さないか。

 



(それに、気になる所もある……)




 ダリューセクで麗奈を狙った魔族の不可解な行動。魔族自体は彼女を狙っていたが、魔物は逆に殺そうと飛び掛かったと言う報告をラウルから聞いた。魔族と魔物での行動の違いから、イーナスは他にも狙いがあるのかと考え――はっとなる。




「魔道伝令隊、すぐにダリューセクに連絡の準備を。内容は――」




 予想でしかないから当たらないで欲しい、と言うのがイーナスの心情だ。連絡がつくまで、彼はあらゆる手を使い考え麗奈達の帰りを信じて待つのだった。





======



「……ヒ、ハ……ル……!!!」




 誰かの声が聞こえる。

 よく知る声であり、守るべき対象の1人。うっすらと目を開け何処かボーッとした様子で、ずっと呼び掛け続けているゆきと視線が交わされる。




「っ、良かった……!!! ハルヒ、ハルヒ!!!」

「……ゆ……き?」




 反応を返せばゆきは嬉しそうに頷き「無事で……良かった」としみじみと言っていた。その隣では水のように透き通ったような体を持つ女性が微笑んでいた。確か、彼女の名前は──




「……ルネシー? だっけ」

《良かった。覚えていてくれたのね》





 忘れる筈もない。ユリウスの呪いを解く課程で、朱雀を封じた時に力を貸してくれた人だ。ルネシーは嬉しそうにしたいとで、ハルヒの頭に手を置く。

 少しした後で、青い光が灯されゆっくりと回復しているのを感じ取れた。




《気分が悪いなら言ってね。水の属性は治癒力にも精通しているから》




 それでも光属性と聖属性には勝てないけど、と説明を受けるがハルヒ自身未だに魔法を扱えるのかが謎な上、反応に困りつつも相づちを打った。


 はっきりしてきた頭で考える。

 自分とゆきは、いきなり現れた魔物にそのまま海へと引きずり込まれた。そこまで思い出し思わず「あっ!!!」と大声を上げた。




「ディルベルトさん……それに、ゆきの仲間達……皆は!? と、言うかここは何処!? 僕達、海の中に引きずり込まれたのなら息できないよね!?」

「お、落ち着いて!!!」




 肩を何度か叩き、ゆきと視線を交わす。

 真剣に自分を見つめ返した事で落ち着きを少しずつでも取り戻し、目を閉じて間を入れる。


 ゆっくりと目を開け、周りを見れば自分達を中心とした3メートル程の薄い膜の様なもの。しかし、それ等をウネウネとイカの足の様なものが侵入を試みるもそれらが叶う事はない。




≪私の領域をこっちに引っ張り出したから平気だよ。あの魔物は2人を狙って引きずり込んだ様子だったし、主が咄嗟に私を呼んだから事態は把握していたの≫

「……なら、貴方が消えない限りは僕達は安全って事?」

≪そう言う解釈で良いわ。主からの魔力供給が切れても、自前で暫くは保って見せるから≫

「なら良かった。そう言えば、あの後一体どうなったのかな」

《それなら平気よ。大賢者がある程度の被害を抑えたから》

「え……」




 ルネシーの話しを聞けば、自分達が引きずり込まれたと同時にあの場所は大津波の餌食にされたのだと。 

 津波に飲み込まれる寸前に、キールはその場にいた全員を上空へと避難させ、波と同等の魔法をぶつけ相殺させたと言う事らしい。




「……そんな事、出来るの……?」

《無理ね。その場にいる者を全員、空へと移動させ留める空間魔法。波と同じ力をぶつけ相殺させる為の風と水の魔法。自分への衝撃緩和の防御魔法を同時に展開させたのよ》




 ルネシーからの説明があり、ゆきはある事に気付く。魔法を同時に扱えるが故にキールが死にかけた事を。ランセから聞かされたから、その事を彼女に話せば《多分、平気よ》とあっさりと返された。




《前なら危ないけど、今は違うでしょ? 彼も貴方も、主も彼女からプレゼントされた物があるのに心配症ね》

 



 ニコリと笑みを浮かべたルネシーに、ゆきとハルヒは思わず麗奈から渡された物を思い出しすぐに取り出した。ハルヒが持ち出したのは銀色で飾りが無くシンプルな腕輪であり、その中心に埋め込まれた虹色の石。


 ゆきが取り出したのは星とひし形が交互に並んだ腕輪であり、星の部分が全て透明の魔石で埋め込まれている。




「……そっか。麗奈ちゃんが私達にって作ってくれた魔道具」

≪彼女が作った魔道具には共通として魔力の増幅効果が見込まれているの。大賢者は元々魔力量が高いけど、同時に発動できる魔法には限りがある。魔力が多ければ多い程、展開できる魔法の数は多くなるから心配いらないわ≫

「………化け物だな」

「こらっ!!」




 思った感想を言ったらゆきに怒られると言う理不尽を受けるハルヒ。思わず何でだと表情で語れば「キールさんは凄い人なの!!!」とまるでファンであるかのようにゆきが語り出す。




「あのね、普段は麗奈ちゃんばっかり追いかけている人だけどすっごくスパルタなんだよ!!! そんな事言ったら、課題を渡してくる量が半端なくなるの。でもね、もっと凄いのは魔法の発動スピード。一瞬で5つ6つも繰り出すし、違う属性を合わせて繰り出される魔法も凄いんだから」

「……そう、なんだ」




 熱く語るゆきにハルヒはうんざりしたような表情をするも、彼女がそれを受け取る筈もなくそのまま語り尽くされてしまう。ハルヒのキールに対する印象としては、年下を追い掛け回すストーカーと言う事で収まっている。


 しかし、キールも何処でそれを嗅ぎつけて来るのかディルバーレル国に滞在した時には会う度に――




「文句があるなら受け付けるよ。だからそんなに主ちゃんの近くに待機しないでよね」




 と、ハルヒに対して挑発しながらも同時に魔法師として主の傍に居るのが当たり前だと言わんばかりの発言に思わず「は?」と言い返した。

 どうも麗奈の周りには変人ばかりが身を固めているような気がしてならないと、思ったハルヒは思わずヤクルに相談した。


 ラウルと違い何故かヤクルとは最初から気が合った。

 ユリウスの呪いを解いた時にも、最初からハルヒには親切で紳士的であった。何でなのかと思わず聞いた。




「麗奈とゆきには言ったんだがな……同い年の友達ってなかなか居ないからさ」

「居ない?」




 不思議な事を聞くなと思った。

 ヤクル以外で同い年なのは、リーナとユリウス。あとは城で働いている騎士達位だと思った。

 そしてその時に言ったヤクルの少し寂し気な表情がハルヒにとっては何だな意外だなとも思った瞬間でもあった。




「麗奈とゆきは俺の友達になってくれたから……良ければ、でいいんだ。その――」

「友達になってくれ、とか?」

「っ……!!!」




 目を見開かれ驚いた様子のヤクルにハルヒはおかしくて笑った。

 その反応に思い切り顔を赤くし「わ、笑うな!!!」と反論されても、ハルヒにとってはそれがまたツボに入る。


 注意を受ければ、その行動が全てハルヒにとっての笑いのツボに入りどんどん悪化する。そこから男同士、仲良くなるのは早く副団長のラウルよりもヤクルの方が親しみやすいな、と思いながらも心の中では感謝していた。




(僕も素で話せるのは楽だし、ね)




 元の世界でのハルヒは見た目の為か何をするにも女子からの黄色い声に囲まれたような生活を続けていた。金髪に蒼い瞳、ハーフと言うのが女子からの受けが良いのかすぐに目にハートを浮かべ告白してくる。


 それを中学時代に嫌と言う程に味わい、好きな人がいるから無理だと言い何とか逃げ続けてきた。しかし、麗奈と同じ高校に行くのなら今以上に息苦しくなるなと思い彼女に最初に告白するも覚えていないのと2回目に告白したタイミングで、見事に見向きもされないままとなり隣に居たゆきが咄嗟にとばかりに話に合せてくれた。


 ゆきには悪い事をしたなと思いつつも、その場は流れに任せた。が、問題はここからであり次のに学校に行けば美男美女カップルの誕生などと、余計な事が1学年中に広まるのも早く今更違うなどとはとてもではないが言えない。ゆきが快くこのままでも良いよと、そのまま合わせて貰いズルズルと3年も偽装した。


 これには自分も含めゆきも褒めても良いだろうと思う程に。

 実際、ゆきの隣は心地いいし何より料理も上手い。聞き上手なのもあり、ハルヒもゆきも共通の話題は必ずと言って良い程に麗奈の事ばかりだ。自然と好感度もうなぎ上りであり、ハルヒにとっても守る対象にゆきが入るのは必然だった。



 そんな中、気付いた。ゆきはファンタジー小説が好きであり、自分にも魔法についての素晴らしさとか、もし自分にも使えたら良いなとうっとりとした表情で語っていたなと思い出す。




(あぁ、うっかりゆきのスイッチに触れたのか……僕は)




 遠い目をするハルヒを他所にゆきは気にしないまま語り続ける。ルネシーは楽しそうに頷くからまたタチが悪い。止める気など一切ない態度に思わず(止めろよ……)と睨むも彼女はふふっと笑われる。




≪楽しそうな主の邪魔はしないわ≫

「そう。……聞かされる僕の身にもなってよ」

≪あら。恋人同士を偽装した仲なのに?≫

「………え、契約したら全部見えるの?」

≪そうね。生まれた時から今までのも全部ね。……だから知ってるわよ、彼女の視点から見てるんだもの≫




 この声色からゆきが怨霊に操られた両親に殺されかけたのも知っているのだと察した。

 契約した時、主となる者の記憶を全て見えてしまうのは精霊にとっても辛い事らしい。しかし、精霊と契約するとはそういうことだとか。主の傍に仕えるのだから、全てを知る必要がありそれらを含めて支えると言う事を了承したから契約を果たすのだと。




≪それにここはお父様達が来ているからすぐに感知するわ。それに契約者の麗奈はすぐに行動に移すでしょう?≫

「「……そう、だね」」

≪嬉しくないの?≫




 ゆきとハルヒの反応から来て欲しくないのか、と思わず聞いた。

 海の中におり、既に時間がかなり経っているはず。視界は全て白で覆われ、太陽が出ていても光が零れていないし月の光も分からないのであれば何時間経ったのかさえ確認することは出来ない。


 一刻も早く来てくれるのであれば嬉しいはずだ。

 それも親友の為に心を砕く麗奈の行動を知っているのは、ルネシーだけでなくゆきと契約をしている精霊全ての共通認識だ。その理由として麗奈と契約しているアシュプが、事あるごとに自慢してくるのだ。


 可愛いのも含め、お菓子作りが得意、優しい性格で真剣である。と、孫のような溺愛ぶりのアシュプに嬉しそうに聞き文句は言わない子供達に当たるルネシー達。



 だから、2人の反応が自分の予想とは違いおかしいな、とも思った。




「……いや、れいちゃん絶対に無茶するし」

「一直線だもん。助けると決めたらそれにしか目に入らないし、自分よりも他人優先だし」




 はぁ……、と重たいとても重たい溜め息を吐く。

 ルネシーからすれば≪友達思いじゃない≫と言うも2人は納得しない様子だ。




≪……大変ね、親友と言うのも友達と言うのも≫




 自分には分からないが、2人は何かしら分かるのだろうなと思いそれ以上の追及はしない。しかし、とルネシーは思っていた。2人を狙ったのには何か訳があるのだと思い警戒を緩める事はしない。




≪(……絶対に守るわよ)≫




======



 一方の麗奈はディルベルトの案内でニチリの姫であるアウラのいる場所へと案内されていた。キールが防いだのと、同時に風の大精霊であるシルフとの契約を果たした事で難を逃れた事も聞いた。

 それを聞いて真っ先に向かったのはアウラの居る場所だ。ハルヒと共にラーグルング国に赴き、言葉を交わす事のないままだったがゆきからとても優しい人だと聞いていたし、ハルヒの事を一途に思っているのも聞いた。


 だから、アウラの事が心配になった。


 無理をしていないのか、不安に押し潰されていないであろうか、と。



 彼に案内されたのはニチリの城とは別に離れた建物。

 神社の様な広さと造りに思わず足が止まり掛けるも、慌ててディルベルトの後に付いていく。


 鳥居のような造りを幾つも潜り抜け、一際大きい鳥居があった。その鳥居の両サイドには見張りの為に、蒼い上着と灰色のズボンを着ており腰には剣を携え、片手に槍を持ち見慣れない麗奈をギロリと睨み付ける。




「ディルベルト様、そちらの方は」

「彼女は同盟国の関係者であり、ハルヒの友人だ」

「……そちらの……小人も、ですか?」

「クポ?」




 麗奈の肩に乗っているアルベルトの事を言われ、思わず彼は反応を示す。すると、彼女の両サイドに風魔と白虎が現れれば途端に槍を構える警備の人。




「寄せ。私は許さないぞ」

「しっ、しかし……」

「アルベルトさん、風魔と白虎とここに残ってくれる?」

「クポ!?」

『えぇ~~~~~』

『僕等も居るの、ダメなの~~~』




 麗奈の両足を抑え潤める瞳を向ける子犬と子猫。アルベルトは待てをされたのがショックだったのか、肩から落ちるも九尾がキャッチし『諦めろ、お前等』と風魔と白虎をたしなめる。




『うぅ、主は僕の事嫌いなの?』

『待った。僕達だろ!? 白虎だからって、猫かぶりするな!!!』

『うっさい』

『なっ……んだとっ!!!』




 激昂する風魔とプイッと顔を逸らす白虎。埒が明かないと思った九尾は、自身の尾を器用に使い縛り上げたついでに口を軽く塞いだ。




『『んーーーーっ!!!』』




 抗議の声が上がっているが、九尾は無視して『これで良いだろ。俺が見張ってるから早く嬢ちゃんと行けよ』と先へと促す。




「これで文句はないはずだ」

「そ、そうですね……」

「ありがとう、九尾。少しだけ待っててね?」

『おう、心配するな。大人しく待ってるからよ』




 ディルべルトと鳥居をくぐれば、下へと通じる為の階段を降りる。足元にしか照られされいないが、何とか転ばずに降りきる。すると、その途端に太陽の様な明るさに思わず目を瞑る。




「アウラ。麗奈様を連れて来ました……何かあれば私に言って下さい」




 目が慣れた頃には風景が変わっていた。

 目の前には襖があり、キョロキョロと周りを見渡す。ディルベルトは既に麗奈から数歩下がった状態で座って頭を下げた状態だ。




「……初めまして、麗奈様。私はアウラ。ニチリの神子をしています」




 自動ドアのように襖が自然と開き、慌てて靴を抜き中へと入る。そこには長髪の黒い髪に、自分と纏う雰囲気を醸し出した同い年の子が居た。きめ細かなそうな白い肌と淡いピンク色に染まった唇。


 そして、白と青の巫女服の様なデザインを着て正座で麗奈を向かい入れた彼女こそ現王ベルスナントの娘であるアウラだ。


 彼女の首元にはキラリと光る青い水晶が見えた。首飾りの様な加工された物ではなく、削られたような水晶には見覚えのあるものだった。




(精霊との契約に必要な水晶だ……でも……)





 その水晶よりも麗奈はもっと気にする所があった。

 アウラの目は赤く、頬には泣いた跡がある事に気付く。自分が来るまでに1人で泣き続けたのだろうと思い、なるべく笑顔で安心させるようにと言葉を交わす。




「初めまして、アウラ様。私は同盟国のラーグルング国から来ました麗奈です。ハルちゃんとゆきを助ける為に来ました」


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