第100話:ダリューセク防衛戦線⑦~復活の王~
「出して下さい!!!」
一方、同じ銀世界の中。麗奈は目の前に佇む子供の狼にお願いを申し出る。しかし、相手は困った様子なのか≪ウゥ……ガフッ≫と申し訳なさそうにして頭を下げている。
何度も頭を下げてくるが、解く気配が微塵も感じられない。それを見てラウルの言う事を聞いているだけであるのは明白だった。
「ラウルさんは攻撃にしか魔力を回せないとセクトさんから聞いています!!! 怪我をしたら自分で治せないんです。お願いですから、ラウルさんの所に連れて行ってください」
麗奈は氷で作り出された水晶の中に閉じ込められていた。
ラウルと子供の狼が作り出した銀世界を見て、一目で精霊が作り出す領域だと認識できた。その途端、傍に居たはずのラウルの姿はなく気付いたらこの水晶に閉じ込められていたのだ。
寒さもなく丁度いい気温。快適すら覚えるが、麗奈は離れたラウルの事が心配で仕方が無かった。ラウルは麗奈を気遣い、戦闘になるのを分かった上で離れる様に恐らくはあの狼にお願いをしたのだろう。
「悪いが麗奈の事、守ってくれ」
フェンリルの力の一部であり、彼とは契約も結んでいない状態だ。しかし、あの夢でラウルと会ったこの狼は、彼の記憶、魔族を倒すと言う意思が強い理由を知っている。彼もラウルの記憶を見聞きし、その上でフェンリルに確認されたのだ。
彼と、ラウルに付いていくか?
そう聞かれ、静かに頷いた。
だから、例え主である麗奈のお願いでも聞けない。自分は既に彼を主として定めており力を尽くすと決めたのだから。
しかし、それでも心配なのは変わらない。今も、ラウルが居ると思われる方向へと視線を彷徨わせながら麗奈の事も見守り続ける姿勢を貫いている。しかし、ここに閉じ込められて既に30分は経っており、最初は我慢していたが麗奈はその我慢が限界に達していた。
「お願いです!!! 怪我をしていたら、意識を失ったらこの空間に閉じ込められるですよね!? ラウルさんが心配でないんですか!!!」
≪ワ、ワフッ!!!≫
ビクリと体を震わす。麗奈に言われた言葉が自身の心配している事であり、そのまま突き刺さるようにしてダメージを喰らう。フラフラと起き上がり、ヨロヨロとなるのはラウルに危機に反応したからではなく、単に自分の心のダメージを表わしての事。
『主!!!』
そこに白虎が駆け寄る。彼も巻き込まれた1人であり、麗奈の傍に居たはずなのだがラウルとはまた違った方向へと飛ばされた。広がる銀世界、木々も無く地平線に伸びるのは同じ風景であり、方向感覚が失ってしまう程に広い空間。
だから、彼が頼りに出来るのは主の霊力を辿る事のみ。
感覚を研ぎ澄ませ、耳を澄まし目を閉じ、体全体で主の霊力を掴もうと落ち着かせる。すると、ある一点の方角に主の霊力を感じる事が出来る。そう思った白虎は走り出し、風景が変わらないこの場所を走り続えてようやく見つけた主の姿。
喜びを我慢するのが苦手な白虎。既に主と離れてそんなに時間は経っていない。しかし、呪いから解放されてからの白虎達は黄龍と青龍を除き、ラーグルング国の防衛に回っていた。だから、凄く寂しかったし主と触れ合えないのは嫌だと思った。
だから、水晶を力一杯に殴り付けるようにして、叩き付ける。風が強く吹き荒れ、水晶が壊される。
「!!」
麗奈は驚いた。さっきまで自分が札を用いた攻撃をしようと、魔法で攻撃してもヒビすら入らなかった水晶。それが白虎の渾身とも取れる一撃によりガラスのように簡単に割れていく。
『あーるーじー!!!』
そのまま主である麗奈を押し倒したとしても仕方のない事。寂しさを埋める様に、頭をグリグリとし感じる匂いに思わず『ふぅ……』と溜め息にも似たうっとりとした声が漏れるのは仕方がないのだ。
「くすっ、くすったいよ、白虎。ちょっ、あははは、ダメッ、くすぐったいの!!! だ、ダメ、あはははっ」
『寂しい思いさせた罰!!!』
そう言えば人の姿を取る。黒い髪は麗奈と黄龍と同じ位の肩まで伸ばし、耳と尻尾の色は白虎の印とも言える縞模様。風魔と同じような白い着物を羽織りながらも、嬉しそうに抱き付く少年はそのまま麗奈をくすぐりに刑を与えていた。
≪ガ、ガウ!!!≫
『君もやる? 面白いよ』
≪アウ?≫
キョトンと狼が動きを止める。止めようとする狼は、白虎の発言に思わず迷いが出たように前足を出したまま引っ込める事もない。やがて、おずおずと静かに近寄ると――ペロリと麗奈の頬を舐める。
「ひゃう!!!」
≪ガウガウ≫
『ねー、主がいけないんだよ。僕等をこーんなに寂しがらせて』
うぅ、と睨むが白虎は気にした様子もない。スリスリと頬を寄せて来る狼はそのままであり、嬉しそうに尻尾を振っているのが見える。
『……寂しい思いさせたじゃん』
うるうると目を涙目にしてくる白虎に思わず「うっ」と言葉を濁す。頬を膨らませ、尻尾が不機嫌そうに垂れ下がる。ディルバーレル国では黄龍と青龍が援軍として駆け付けており、交代する間もなくあのまま2人に任せてしまっていた。
ラーグルング国から戻って来ても、少しの間だけ国に居ただけでまたも別の国へと足を運んでいく。だから、今度こそは逃がすまいと主に念じて自分が参加すると意見を出したのだ。黄龍と青龍から文句が出るかとも思ったが、意外にもそうした文句も無くむしろ勧めてきた。
『私等は主の一面を色々と見れたし満足満足♪』
『お前は面白がっただけだろ』
『そうとも言うね♪ 主の可愛い一面も見れたし嬉しい事ばかりだもん』
ムカつくと言う理由で無言で2人を殴ったのは正当性を主張したい、と思った。悪くないのだからほっといて欲しいのだ。
「相変わらずだな、麗奈は」
そこに声がかけられる。はっとしたように、麗奈は振り向く。ザッ、ザッ、ザッ、と足音がなり麗奈の方を見て微笑むのはこの空間を作り出した張本人であるラウルだ。
「ラウルさん!!!」
≪ガウガウ!!!≫
ラウルの姿を見て安心したのか麗奈も狼も嬉しそうに向かって来る。微笑みながら歩くラウルは頭の中で魔族が言っていた言葉を思い出していた。
「……ラーク、リート、ユウト、バルディル………だ」
そう言ってボロボロと頭が崩れ跡形も無かった。息を吐き、今、言われた名前を自身の中で繰り返す。麗奈の前では怖い表情をせず、いつも通りの少しだけ柔らかい笑みをし、いつものように騎士として歩み寄る。
その態度を崩す訳にはいかない。
「ラウル、さん?」
心配そうに見る麗奈の声にニコリと笑顔を見せやり過ごす。足元で≪バウバウ≫と狼が自分に対してじゃれくるので、同じ視線になるようにとしゃがみ込んだ。
撫でて欲しそうに目を輝かせている。それを撫でて上げれば嬉しそうに尻尾を振り、さらに頬にすり寄る。麗奈もその姿を見て微笑ましく見ており白虎は『どうかしたの?』と聞いてくる。
「……いや、なんでもない。麗奈、怪我はないな?」
「はい。私は全然……ラウルさん、肩や顔に切り傷があるじゃないですか」
「あぁ、これは――」
「座って下さい!!! 怪我を治しますから」
「……はい」
圧倒されて思わず返事をしてしまった。
正座をさせられ、少し頬を膨らませ不機嫌ながらも治癒を開始された。麗奈の手の平から七色の光が小さく灯り傷口に当てられる。
(虹の光か……)
属性の集合体であり始まりの魔法。大精霊のアシュプとブルームのみが扱える特別性の力。麗奈が使って確認出来るのが、魔力の上昇、身体能力の向上、闇の魔法の無効化、魔力付与。
思わず贈り物のピアスに軽く触れる。自身の魔力を剣に纏わせた時、ピアスも呼応するよにして輝きが増したのを感じた。今まで自分の力で完全にコントロールをしたと言う記憶がなかった。
ラーグルング国では北の柱がコントロール下に置けるようにしていたように思う。陛下の呪いを解放する為に北の柱と対峙した時、そこに現れたのは巨大な亀、尾が蛇と言う見た事も聞いたことも無かった存在。
北の守護神、名を玄武。
朝霧の家の人間。それが、開祖であり初代朝霧家当主の願いで自らの命と体を捧げた事による術の力。守護地と言う特別な場所、アシュプが精霊に昇華しても良いと言う異例さで作り出した四方に建てられた柱。
四神と呼ばれた彼等にとっては家に近いかも知れないが、ラウル達にとっては国を守る要と言う意味合いが強い。
「ラウルさん。まだ何処か痛い所はありますか?」
治療中、ずっと黙っていたからなのだろう。終わったと言うのに考え込むようなラウルに麗奈が声をかける。麗奈に怪我は無いのに凄く痛そうにこちらを伺うのを見て「平気」と答える。
起き上がろうとして、足が痺れていた事を忘れてしまった。だから、支えようとした麗奈に誤って押し倒してしまうような真似になり思わず息を呑んだ。
「っ、わる、い……」
「い、いえ……」
『治療終わったようだね。戻れる?』
《アウ♪》
「「ちょっ!!!」」
制止する間もなく2人は元の場所へと移動させられた。
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それはラウルが魔族と対峙している時に起きた。
西門側に集中しているギルド、魔法協会支部がある所での戦闘が一通り終わりを告げていた。
こちらに向かっていた魔物の一部は、城内の方へと移動され残されたキメラは建物の破壊、殺戮に集中していた。魔法師の連携と凄腕の冒険者達のお陰で被害はギルド、支部の半壊に留まる事が出来た。
「皆さん、立ち上がるのです」
そこに凜とした声が響き、駆け付けてきた騎士団がその姿に声に涙を流す。
腰に下げスラリと抜いた剣はショートソードであり、その鞘は水色。柄の先端には同じ色の直径3センチ程の水晶が埋め込まれ輝きを放っている。白い法衣に身を包み、淡い水色のズボンを覗かせながら新手と思われるキメラを一刀両断にした――
「これ以上、魔物の横行を許す訳にはいきません。……立てる者がいるなら応えなさい。力を振るいなさい、道を示しなさい」
そこに立っていたのは蒼い髪に緑色の瞳を宿し、強い意志を持って宣言する姿。騎士の者なら知っている。この声にくじけそうになった心を奮い立たせ、勇気をくれた存在……それは彼女はセレーネ・ウィル・ダリューセクであり聖騎士の1人だ。
「国に蔓延る魔物を蹴散らし、平穏を掴む為にその力をお貸し下さい!!!」
「おおおおおっ!!!」
ここに本物のセレーネが戦場に降り立つ。
西門だけでなく東門、北門、南門に湧き出てきた魔物を一掃する為に行動を起こす。その姿を、その声を聞いたフェンリルはほくそ笑む。
≪……人の力とは凄いものだな≫
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「はああああっ!!!」
ズドン、と巨体なゴブリンを斬り倒し消滅していく。風魔が新手の魔物を前足で押し付けレーグがそこに狙いを定める。
「シュット・ポワン」
その場を離れた風魔と同時に広がる黒い球体。魔物に触れた瞬間、ボロボロと崩れ去り朽ちていく。続けてとばかりにレーグの足元に黒い魔方陣が一瞬だけ浮かび上がり手の平に魔力が集めて唱える。
「インフィニティ・バースト」
ユリウスの背後、風魔の頭上、護衛をしている騎士達のあらゆるところから小さな黒い球体が現れ魔物を引き寄せて飲み込まれるようにして消滅する。
今ので最後か、とレーグは警戒を解きつつ気配を探る。魔族の気配は未だラウルが作ったと、思われる空間に移動してから全く感じられない。チラリとユリウスを見て、平気だと言う意味で頷けばほっとした表情になる。
「………ふぅ、終わったな」
「えぇ、ありがとうごさいます」
『レーグ、レーグ。僕も頑張った。褒めて褒めて』
「はい、助かりましたよ風魔」
既に撫でられる態勢でレーグの前に来ていた風魔。頭を撫でれば『ん~、やっぱり褒められるの嬉しい♪』とブンブンと尻尾を振っている。バキバキ、と岩の壁が崩れ去り「クポーー!!!」とアルベルトがユリウスの顔に突撃してくる。
「ぐはっ……」
「クポ、クポポポ。クポーーー」
「ちょっ、まっ」
「クポーーー!!!」
バシバシと叩かれ顔を引っ張られるユリウスは、思わずアルベルトをぶら下げる様にして持ち上げる。ヒリヒリとするのか、片手は自分の頬を擦りながらもアルベルトを掴む手は緩めない。
風魔が感じた麗奈の霊力を追って城の中に入り、最短で突き進むようにして壁を伝い壁を壊さないように気を使いながら入った部屋。天井が高く壁はシンプルに白に統一され、天窓から差し込む日の光が印象的な部屋でありこの国のシンボルとも言えるフェンリルの壁画があった。
精霊をシンボルとしている所は、毎朝行う祈りにより精霊に感謝の気持ちを伝える祈りの場があるとイーナスから聞いた事があり、この部屋がフェンリルの祈りの場であり神聖な場所だと言うのが分かる。
「クポポ、クポポポ」
その部屋には魔物が多くいた。部屋の中央には大きな岩で守られた何かがあり、中からアルベルトの声が聞こえたので彼の力によるものだと判断した。次に目を向けたのは部屋の端々に居る人々だ。彼等を守る様にして騎士が複数で組んでおり、魔物に向かってはいるが背後の人間を気にしてかあまり手を出していない。
岩の守り、盾のような役割をしていたその付近。そこではレーグが1人で魔物を次々と倒していた。イーナスからラウルと組んでいると聞いてたが、実際に居るのはレーグのみでありユリウスは思わず首を傾げた。
しかし、すぐに魔物の退治に頭を切り替えて出て来る魔物達を倒しに掛かった。突然の事に周りは驚いたが、レーグが「味方なので平気です」と言いさらなる混乱を生まなくて良い方向へと向いた。
未だにアルベルトに絡まれるユリウスは困ったように、しかし抗議している様子の彼をどうしようか……と、考えていたら足元から水色の魔法陣が浮かび瞬く間に光に満たされる。
『やったー、戻れたぁ!!』
《バウ、バウ》
『ごめん、ちょっと疑ってた。わ、悪いって……アハハハ、や、やめ、くすぐったいよー』
白い着物を着た少年と子供の狼が飛び出しはゃいでいる。それと同時にラウルと麗奈の魔力を感知し、合流出来た事に喜びを表すも──鞘に収めた筈の双剣に再び手を伸ばす。
「わ、るい。すぐ、退きたいんだけど……」
「ゆ、ゆっくりで平気です。大丈夫ですから……」
麗奈がラウルに押し倒されている、と誰の目から見ても明らか。互いに顔を赤くしなければ、とユリウスは思う。しかし、目映り覚えてしまった感情を押し止めると言うのをしない。何故なら、嫉妬に駆られていると気付いてしまったからだ。
「手伝うぞ、ラウル」
「っ!!」
咄嗟に少しだけ剣を抜き、ユリウスの一撃を受けきる。しかし、態勢が悪かったのか少し体を浮かせられ、次に来たのはアルベルトからの平手打ちだ。
「フポーーー!!!」
小さな体から繰り出された平手打ちは見事、ラウルの頬にクリーンヒットし体格差から踏みとどまれる筈の一撃に、ゴロゴロと転がり落ちる。
「うっ、ぐぅ……」
「ユ、ユリィ……? アルベルト、さん?」
一矢報いたとばかりに2人でハイタッチ。麗奈が慌ててラウルの方へ向かおうとすればレーグからやんわりと断られる。
「で、でも、誤解で」
「良いんじゃ無いですか? たまに一発、二発殴られても」
「………」
目が笑っていないレーグに寒気を覚え、思わず頷いてしまった。ズルズルとラウルを引きずり奥へと行ってしまうレーグを追う事も、声を掛ける事すら戸惑わせてしまった。
「ふふっ、楽しい人達ですね。そう思いませんか?」
「っ……!!!」
その優しい声に思わず皆が黙り思わず息を飲んだ。麗奈が驚いたのは、アルベルトと入った地下室とも言える場所。そこで眠っていた人物が目を覚ましたのだと理解し、向こうも麗奈を見てニコリと微笑みかけた。
「貴方のお陰で私は目を覚ます事が出来ました。感謝致します」
「い、いえ……」
その言葉を出すのが精一杯。それ程、姿を現した彼女は周りを圧倒させ場を支配して見せた。咲と呼ばれた側の方へと視線を合わせれば、髪は黒髪の長髪に茶色の瞳をした自分と同じ──異世界の人間だと分かる容姿をしていた。
(あ、もしかしてワクナリさんと同じ……?)
ハーフエルフと言うのを隠す為、見た目を変えたワクナリと同じように彼女も何かの理由で変えたのだと理解した。
「咲、ごめんなさい。私が守らないといけないのに、貴方に負担を……背負わなくて良い事も背負わせてしまった」
「い、いえ!!! そんな、私は……私が言った事なんです。セレーネ、様……本当にセレーネ様……なんですよね?」
戸惑いと不安が入り交じった瞳に、セレーネはクスリと笑い静かに頭を撫でた。その撫で方は、最初に来た時に「可愛い」と言っていた撫で方。それが分かり、ポロポロと大粒の涙が咲の頬を濡らす。
「はい。……寂しい思いをさせてすみませんでした」
悲しげに伏せられる瞳。そんなセレーネに咲は顔がぐちゃぐちゃになる位に大きく泣いた。
「っ、う、うわあああああん」
その場に座り込む。その大きな声にピクリと反応を示すナタール。上半身を上げ、焦点が定まらない。しかし、咲が泣いているのが分かったからか、自然と自分の方へと引き寄せていた。
「あら、見ない間に随分と仲が良いのね」
「セレーネ……様……?」
信じられないと言った表情でセレーネを見つめる。しかし、腰に差している剣と体を纏うように現れている白い光。聖騎士になった者は皆、あのような光の出方をし見えるのは魔法を扱う者のみに限定している。
「では皆さん。状況を詳しく知りたいので報告書をお願いしますね」
ピシリ、と何かの亀裂が入ったような音がダリューセクの面々に聞こえたような気がし中にはガクリとなる者も見える。
呆気にとられたユリウス達にセレーネは改めて「お話、伺いますね」と笑顔を向け麗奈とアルベルトが同じく笑顔で返す中、自然と従う形にさせられたユリウスは──
(逆らう気はないのに、逆らってはダメだと思わされた)
と、セレーネの恐ろしさを見たような気がした。




