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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第3章:平穏のその裏で……
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第85話:ドーネルとデート!?

 あわあわ、と心の中で慌てるもこの状況を変えられないでいる。と、言うよりも逃げられないのだドーネルにより抱き抱えられて首都を回る為に馬車の中で待機させられているからだ。




「あ、あの、あの………」

「ん?」




 ニコニコとイケメンオーラ全開でいるのは、ディルバーレル国の王であるドーネル。今はラフな格好をしている。茶色のズボンに派手にならないような色彩の上着、首元には水色のペンダントをし髪も一まとめにしており雰囲気を変えている。




「し、仕事は」

「ギルに置いて来た」

「え、でも」

「良いの良いの。それとも………俺と居るのいや?」



 

 最近知った事。ドーネルは公式や公の場では「私」と言い、本来は「俺」と言って来る事と本心を言っている時くらい。しかも、この「俺」呼びはごくごく一部、幼い時から共にいるギルティス、グルム、スティの3人だけだったのだ。そこにプラスして麗奈が入っている、と言うのが分かりドキドキするなと言う方が無理だ。


 小首を傾げられ、少しだけ潤めるような目。捨てられた子犬の様な感じに、麗奈はぐぐぐっと顔を逸らしながら「い、嫌ではないです」と答えればいつの間にか手を握られており驚いた。




「良かったぁ」

「っ」




 安心したその表情が凄くドキリとて心臓に悪い。そして、ドーネルの不意の真剣な表情にもドキドキとし(早く終われ!)と心の中で祈っている内に馬車は止まる。




「さ、行くよ麗奈ちゃん♪今日は、君を独占して良いってユリウスから許可出たしね」

「え!?」




 ユリウスとはっきりと名前を言い、普通にエスコートしてくるドーネル。戸惑いながらも馬車に降りればぎゅーと抱きしめられる。




「んーやっぱり抱き心地いい~癒しだ癒し♪」

「は、恥ずかしい、です………」

「顔は見られないようにしてるからセーフセーフ」

「う、でも」





 抵抗むなしく、歩き始めてしまいそれにつられる。思わず二股?と思うもユリウスから許可を貰っていると言われ………(良い、のかな)と思いながらも首都の中を歩く。


 笑顔のドーネルが、ずっと麗奈の手を握りしめているとあとから気付くのに相当時間が掛かった。



 そう言えば。

 ユリウスをここ2日ばかり見ていないと思った。自分も、やることがあるが今までは隣同士の部屋の窓際で話をしていたからか、それがなかった事が寂しく思う。




(怪我……してないよね。あ、ゆきがいるから平気か)




 キールが残っている事で、回復を出来るのは自分を含めて4人。セクトは今日も、ラウルとグルムによる訓練をしている事から、ゆきがユリウスと行動を共にしている。



 徐々にはあるが、ゆきも1人で魔物を退治出来る所まで訓練されている。ランセが影ながら見守りヤクルが援護に入るのが通例なので、ヤクルが居ない=ゆきも。と言うのが周知されている。


 キールが居ない=麗奈絡みと言うのも、既にラーグルング国だけでなく、ディルバーレル国でも分かっている事。キールに用があるときは麗奈を探す方が早いとまで言われている。それを知らないのは……麗奈だけだった。




========


 一方、ユリウスは魔物退治をしていた。自分の魔力をコントロールし、周辺に居る魔物を倒していく中でブルームに言われた事が頭に中で引っかかっていた。




≪お前、まだ中に魔王の魔力があるのに気付いていたか?≫




 まだ継続されているそれは、お前を監視する為の物かも知れないが今までの事は全部向こうに筒抜けだと発してきた。その内容に目を見開き、愕然となりそしてベールがエルフである事、麗奈の霊装の事を相手側に知られたと言う事実にショックを隠し切れないでいた。




(くそっ!!!)




 怒りを覚え、どうしても付きまとう変な感じ。この言い表せない感覚が、サスクールによるものなのかと思うもさらにブルームは続けた。自分との契約を望むのなら、自分の魔力を空にしておけと。




(魔力を、空に……)




 行き過ぎればキールの様な魔力欠乏症を起こし、特殊な実での治療になる。薬草の豊富さはこのディルバーレル国が群を抜いている。それをしている間に、魔王がいつ襲い掛かるかも分からないような状況。


 焦り、1人悩む中でドーネルが言った。




「気晴らしに魔物狩りすれば?」




 ついで、とばかりに魔物の巣がある所に印がつけられた地図を渡され思わずジト目でドーネルを見る。




「もしかして」

「うん、お願い♪」

「……分かり、ました」




 頼まれれば断れない自分。イーナスに仕事を振り続けられてきた所為もあり、それらをこなしてしまった。そう考えると自分も仕事人間になっているなと思ってしまう。




「この頃は魔物の強さが上がって来ているって話だから気を付けてね」

「分かりました。良い訓練になります」

「………麗奈ちゃん借りてもいい?」

「えっ」

「あ、やっぱりダメ?」

「………………」




 沈黙は肯定、なのだろうか?と考えてしまうユリウス。その様子をクスクスと笑うドーネルは「麗奈ちゃんにお礼をしたくてね」と理由を話す。

 思わず夜会がそのお礼では?と顔に出ていたのだろう、きっぱりと違うと言われてしまう。




「あれは君等、全員に対するお礼」

「………麗奈個人にするお礼、ですか」

「そうそう♪」




 上機嫌で頷く。人懐っこい感じなのに、自分と同じ王族であり立場も同じだ。だけど、ユリウスにとっては兄の親友に対しての感じが強く、こうして自分にも色々と優しくしてくれている。


 もう1人の兄が出来た様なむず痒い感じ。思わず顔をそむければ「どうしたの?」と深くは聞かないのに考えが分かるのかニヤニヤとされた。




「………別に、麗奈が嫌がらないのなら平気です」

「余裕だね。取られたり、とか考えないの?」

「それを言う時点で考えてないですよね?」

「うん♪君も麗奈ちゃんも、ゆきちゃん達も俺にとっては可愛い子達だよ」

「それは、どうも…………」

「じゃ、お願いね~」




 そう言って廊下を歩けばすぐにギルティスの「ドーネル!!!!!」と怒声を上げながらこちらに走ってくるのは見えた。  

 チラッと見れば既に駆け足で逃げているのが分かりユリウスとすれ違う時「こんにちは、ユリウス陛下」と律儀に挨拶をしそのまま通り過ぎる。




「……………」




 器用だな、と思ったのは内緒。

 渡された地図を頼りに、キールとランセに相談しようと考え準備を始めた。


 そして、現在。


 魔物退治をして2日程経った。いつものようにゆきには、広範囲の回復魔法を掛けて貰う。体力と疲労が少しだけ、軽くなったような感覚うにほっとなる。ベールが「もう平気ですね」とユリウスに確認を取ると「そうだな」短く答え、木の根に座り込む。




「へい………ユリウス、大丈夫?」



 

 いつもの癖で陛下と呼びそうなのをなんとか踏みとどまり、名前のユリウス呼びになるゆき。麗奈は愛称で呼んで貰っているが、彼女も仕事でユリウスを呼ぶ時に今の同じような感じになる。


 思わずクスッと笑えば、ゆきがそれに反応して「も、もう!!!!」と怒ったようにそっぽを向かれた。そのままぷくっと、頬を膨らませている様子に笑いが込み上げて来る。




「あぁ、平気だ。ちょっとだけ、考え事していただけだ」

「「…………」」




 ジト目で見るベールとヤクルをほっときながらユリスはゆきに言う。ほっとした表情のゆきは「いたっ」と首筋を抑えた。すぐにヤクルが様子を見に来て「どうした、ゆき」と心配そうに見た。




「あ、ごめん。ちょっとチクってして」

「首、だよな」




 悪い、と謝りつつゆきの首筋を見るが刺されたような跡が無い。不思議そうに思いながらも、肌が赤くなったような痕跡が無い。その事を言えばゆきは「うーん」と唸る。




「でも、何かに刺された感じは……したんだけど」

「ならすぐに戻るぞ。一応、リーファーさんに診て貰う」

「えっ、で、でも」




 慌て出すゆきを無視して、ユリウスはヤクルに転送魔法を付与させた魔石を投げる。それを受け取り、さっとゆきを抱き抱えて「異常が無ければ俺だけでも戻る」と言って、魔石に魔力を込める。


 すぐにヤクルの扱う炎の魔力、赤い魔方陣が浮かび上がる。ゆきが未だに抗議するも、聞く耳持たないと言うようにすぐに魔法が発動。ベールがそれをニコニコとしたまま「ゆきさんにだけ、過保護ですねぇ~」と言っているが無視だ。




「何かあったの?」




 そこに大鎌を振りながら来たのはランセ。ユリウスがゆきに起きた事を報告すれば「そう」と軽く返事をしてベールを見る。




「……なにか?」

「ユリウス、ドーネルから渡された地図での地点。あとは何処を潰すのかな」

「えっーと……」




 頼まれた事を実行中。報告が上がった魔物の数の多さ、その周辺に魔物を 産む巣があるとみてランセは潰し回っていた。ここ最近の魔物行動には不気味さを覚えていたからだ。




「この近辺の魔物はこれで平気ですね。やっぱり巣は洞穴とか人が近付きにくかったり、視界が狭まった場所に作るんですか?」

「まぁね。巣があるだけで魔物の数が違うから。ギルドがある所は、冒険者達に任せればいいけれど、ギルドが無い所はどうしたって自分達で行わないといけないしね」




 ふと思った疑問。魔物は妖精の心が穢れた事で闇に取り込まれて生まれる方法と、怨念、未練が残った強すぎる思いが具現化された存在、と言うのが魔法師達の見解。


 だからこそ、魔物は無作為に人を襲い略奪を行う。破壊衝動を、本能のようにして力を振るう怪物。それらの対処に普通の力の持たない人間が立ち向かうど自殺行為にも等しい。


 そこで生まれた奇跡の力が、魔法。

 

 2大精霊のアシュプとブルーム。彼等の扱う虹の力を、人にも扱い易くしたのが属性として様々な形で今も生まれ進化している。魔物もそれらに対抗するように進化をし、下級から中級、中級から上級へと上がっていく。


 上級クラスの魔物の中で、一際大きな力を得て生まれたのが魔族。その下級も、人を殺し闇の力を振るう事で進化を遂げ魔物と同じように階級を上げていく。



 だから、魔族が現れたら国は滅ぶと言うのもあながち嘘でもない。

 実際、魔物よりも力が強く生き残っているのも不思議な程の実力差。ランセから言わせれば経験がないだけだと言われ、何も誰も返せないでいる。




「ここ一帯の淀んだ感じはないから平気。巣を潰せば、魔物を生まれるのが遅れるからね。今後はこれらを潰しながら、色々と用意するから大変だよ」

「ディルバーレル国も早めに対策を取る為に、ニチリや私達の居るラーグルング国からも何名か派遣されてくると言う話でしたし」

「イーナス来るのか?」

「来ないでしょ。彼、アリサちゃんの世話もしてるのに」

「あ」




 自分と麗奈をパパ、ママと呼んでくれる10歳の女の子。

 両親も村に住んでいた人達も全員亡くなって自分だけが生き残ったと言う過去があり、ダリューセクで預かるよりは自分達がと言う事で預かった。


 驚くなと言う方が無理であり、ユリウスも麗奈も年下からのお願いは断れないし、断りずらい。それを知っているのか、アリサは涙目で「一緒に居たい」と訴えてくる。


 ………耐えられない、心が。と2人して同じ事を思いそのままアリサの面倒を見ている。誠一とイーナス達が来た時にアリサも、と思ったが既に聞いていたのか「本人が言うにはラーグルング国が家だから、おかえりなさい言いたい」ってと伝言を残したのだ。




(………別に可愛いって思うのは普通だよな?)

「ユリウス、顔が緩んでますよ」

「っ」

「嘘です」

「お前な!!」




 ベールのからかいに思わず怒りが爆発。そのまま追い掛け回す2人を見て、ランセは思考を切り替える。




(まだ闇は感じられる。………あっちか)




 すぐに黒騎士が現れ≪行くのか≫と聞けば頷く。ユリウスとベールの事を頼み、ランセはすぐに姿を消した。魔族の気配がある方へと体は自然に向かっていた。




=======


 一方、ドーネルはぎゅっと、手を握りニコニコとしたまま歩いていた。麗奈がその度にビクッと驚き、唸るのが聞こえるが聞こえないフリをしている。




「あ、の………ドーネルさん」

「…………」

「あの」




 うぐっ、と無視をされても麗奈はどうしようと思うも答えが出ない。出ているが恥ずかしすぎて顔が未だに沸騰したように熱いのに、さらに真っ赤になるのは御免だったからだ。


 しかし、これでは会話も続かないし、ここに寄りたいと仮にあったとしても止まってくれない。時々、ドーネルが店に止まり「ここ、見る?」と聞いてくれるがまだ、手を繋いで歩くことに慣れていない麗奈には首を振るのが精一杯。


 やっと慣れてきた所で、ドーネルからは「今日はずっと呼び捨てね?」と、追い打ちをかけてきた。だから、ずっとさん付けでも振り返らないしチラッと麗奈を見ては呼んで欲しい様に目で訴えて来る。




(む、無理、無理だーーーーーー!!!!!)




 手を振りほどき頭を抱えたい。でも、それが出来ないしさらに人にぶつかるのを防ぐ為なのか、さりげなく肩を抱き引き寄せられる。パクパクと口を動かすも言葉にならない。


 この地獄のループ、どうやって抜ければ良いの!!!!!



 今の麗奈の心情はこうである。方法は1つ、彼の要望通りに呼び捨てをする事。しかもユリウスが呼び捨てなのにズルくない?と言って来るが、愛称だと言っても「ズルい」の一点張りで、麗奈が折れるのを待っている。




「はい。どうぞ」

「あ、ありがとう、ございます」




 公園で一休み中の麗奈にドーネルが持ってきたのは、紙コップに入った飲み物だ。甘い香りが疲れた体に癒しをくれるので、そのままゆっくり飲む。出店で買って来たらしく、おごった形になるので思わずその分も払おうとして気付いた。




(財布…………忘れた!!!!!)




 ガーン、となり無駄な動きが多いのと「あわ、あぅ、えっと!!!」と慌て出す。ドーネルにそれを言うには呼び捨てでなければいけない。でも、麗奈はそれを言うには抵抗があり躊躇する。

 何度も顔を見て呼ぼうとするも、ピタリと止まり再び「えっと、えぅ……うぅ」と挑戦しようとして挫折を繰り返す始末。




「ふっ、あははははっ!!!!ごめんごめん、ここまで耐えてたけどダメだ。麗奈ちゃん面白すぎ」




 物凄く大笑いをしたドーネル。お腹を抱えて笑う彼に麗奈は涙ながらに「うぅ、うぅ~~~!!!」と訴えるもそれがさらに笑いを誘う事など知る由も無かった。




「ドーネルの………バカッ」




 ボソッ、と本音を言えば彼は「言えたじゃん」と頭を撫でてきた。そこからバカを連発してたらウンウン、と頷かれて「偉い偉い」とずっと撫でられてしまう。




「じゃ、次。何処行く?」




 まだ開放する気のないドーネルとのデートは続く。上機嫌の彼は当然のように麗奈の手を握り引き寄せ「今日は甘やかすよ」と、耳元で低温ボイスに言われ一気に顔が赤くなる。




「さぁどんどん行こう!!!」

「わかっ、分かりましたから手は離して下さい」

「嫌だ!!!」

「即答!?」




 そんなこんなで、ドーネルとの第二ラウンドが始まった。



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