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聖剣の使いかたっ!  作者: sord
第1章 無銘の『聖剣』 編  
3/65

1-3 白ずくめ  



「ーーーっ!!」



 ハヤトが目を開くと、そこには見慣れぬ石の天井があった。


(・・・?)


 とりあえず体を起こしてからキョロキョロと辺りを見回した後、ハヤトは今までのことを思い出しながら、一人考え込む。


(待てよ、俺は自転車で盛大にひっくり返って見事にK点越えを決めて、そのまま池にダイブしたはず。つまり、状況を考えるならここは病院か、もしくはあの世ってことになるはずだ)



 どこかフワフワとした頭で、とりあえず今の状況を整理してみる。



(とりあえず自転車で暴走はしてたけど、いきなり刑務所に放り込まれるなんて可能性はーーーないと信じたい! あの世のことはわからないけど、とりあえず俺は日本人だから閻魔なる人に会いに行かされるはずだ)


 うんうん、とハヤトは頷く。とりあえず、考えかたとしては間違っていないはずだった。いろいろとツッコミ所はあるかもしれないが、一応は常識の範囲内で考えられているはずなのだ。そこまで考えた後、ハヤトはもう一度辺りを見回して、



「・・・だったら、なんで俺はこんな硬い石の上に寝かされてて、謎の服着た怪しげな人たちに囲まれてるの?」



 思わず声に出して言ってしまう。そう、ハヤトは今、なぜか石造りの広間らしき大きな部屋にいて、周囲を謎の白ずくめたちに取り囲まれていたのだ。


 それは、白い衣服で全身をすっぽりと包み、顔まで白い垂れ布で覆い隠した、まさに白ずくめの人間たち。本当に頭から爪先にいたるまで、全身を隙間なく白い衣服で覆っているのだ。そのゆったりとした衣服では体のラインすらわからないため、ハヤトは白ずくめたちの性別すら判断できなかった。


(なにこの状況!? もはや身の危険しか感じないんですけど! どこをどう見ても、怪しげな儀式か何かの最中にしか見えないんですけど!)


 頭を抱え、焦るハヤト。対して、



「・・・」



 10メートルほど離れた位置で、均等に間隔をあけて立っている白ずくめたちは、誰一人として動かない。まるで人形か何かのように無言のまま、じっと垂れ布越しにこちらを見ている。


(待て待て、威圧感がヤバい! 無言の圧力的なものをひしひしと感じるよ! とりあえず、ここは場の空気を和ませるためにもーーー)


 ハヤトはそこで覚悟を決めると、一度大きく深呼吸をして、



「あの、ここってどこなんですか? 目が覚めたらここにいて、自分がどうしてこんな所にいるのかすらわからないんですよ。てへっ☆」



 困ったように頭をかきながら、小首を(かし)げてみる。



「・・・」



 そして無言のまま、ピクリともしない白ずくめたち。一瞬にして凍りついた場の空気に、ハヤトは思わず頭を抱えてしまう。


(待って、キモいでも死ねでも良いからせめて反応して!? スルーされるのが一番傷つくんだよ!?)


 てへっ☆ なんてそこらのぶりっ子並みに気持ち悪いことをしたという自覚のあるハヤトは、羞恥心に悶え苦しむ。本来ならここで失笑の1つでも起きて、そこから話につなげていけるはずだったのだ。だが、ドン引きどころか完全にスルーされてしまうと、会話へのハードルがさらに上がってしまう。



(待て、落ち着け・・・ここは前向きに考えるべきだ。こいつらは話しかけてもピクリとも動かないんだから、もしかしたら本当に人形だって可能性もーーー)


 そこまで考えたハヤトは大きく息を吐き出した後、もう一度顔を上げる。そして、ちょうど正面に立っていた白ずくめに向かって、



「ええっと、生きてますか?」



 また軽く首を(かし)げながら、そうストレートに質問してみる。



「・・・」



 そして、当然のごとく無言を貫く白ずくめ。本当に人形だったら答えられるはずが無いだろーが! とそれを見たハヤトは自分で自分にツッコミを入れる。それでも、


(・・・まあ、ここまで馬鹿やって、それでも誰も反応しないんだから、たぶん本当に人形か何かなんだろ)


 一人漫才をやっていても始まらないので、とりあえず勝手にそう推測するハヤト。だったら誰か話ができる人を探すべきだな、なんてことを思いながら、ハヤトは寝かされていた石の祭壇のような物から降りようとする。すると、



「・・・」



 ハヤトの正面にいる白ずくめが、無言のままに片手をスッと上げる。生きてたのかよ! と思わずツッコミを入れるハヤト。どうやらこの白ずくめたちは、ただ単にハヤトを無視していただけらしい。それを理解して、ハヤトはすこし落ち込んでしまう。


 まあ、それでもこいつらが生きてる人間だってわかったから問題ないか、なんてハヤトが楽観的に考えた、まさにその瞬間、



「え?」



 ぐるり、といきなり視界が回転する。あまりに突然の出来事に、ただ呆然としていることしかできないハヤト。


 そして、目の前にいた白ずくめたちが見えなくなり、倒れたハヤトの目には石の天井だけが映る。それがどういうことなのか理解しようと、ハヤトはとにかく辺りを見回そうとする。だが、どれだけ体を動かそうとしても、指先すらピクリとも動かせない。それも手だけではなく、全身がまるで自分のものではないかのように力が入らないのだ。


 混乱したまま、とりあえず眼球だけを動かして辺りを見回すハヤト。すると、



「ーーーっ!?」



 手を伸ばせば届くほどすぐ側に立っている、真っ白な人影に気づく。無言のまま、ただハヤトを見下ろす白ずくめ。



「・・・」



 そして、身動きが取れないハヤトを見下ろしながら、いつの間に移動したのかもわからないその白ずくめは、ゆっくりとこちらに手を伸ばしてくる。全く動けないまま、迫ってくるその手をただ見ていることしかできないハヤト。そして、その白い手袋に包まれた指先が頭に触れた瞬間、強烈な衝撃が全身を走り抜ける。



「ぐっ!?」



 それはまるで、全身に電流でも流されたかのような感覚。勝手に手足がビクビクと動き、痺れるような痛みが全身を襲う。しかし、自分の意思では指先すら動かすことができない今のハヤトには、どうすることもできないのだ。


(なに、がーーー)


 薄れゆく意識のなかで、なにが起きているのかを必死に理解しようとするハヤト。だが、そのような余裕など、今のハヤトにあるはずもなく。



 ハヤトは抵抗すらできないままに体を震わせると、またすぐに意識を失った。




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