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真紅は赤より秀でて赤より紅し
少し、思い出話をしない?
桜が散ったすぐ後、其れは突然だった。
真紅の夕焼けの中に、人影が2つ。
大きく伸びをした影が、私。
椅子に座っていたのが、貴方。
其れは永遠のように感じた。しかし、一瞬のことだった。
貴方の笑い声が、空に吸い込まれる。
まだ互いに幼く、お互いを知らなかった。
だから、きっと純粋に互いの存在を肯定できた。
「居残りなんてね。」
『何故残ったのだろう。』
どんなことをしていたのかはもう遺っていない。
けれども、あの日見た夕焼けより紅い夕焼けは、未だ見つからない。
「それだけ、其の色は脳に焼きついたんだ。」
今となってはただの思い出話だけれども。
使われることのない古い教室の、一番後ろの端の机。
コンパスでつけた後に、埃が被っていた。
もう語られることはない、何時かの思い出。
もし過去へ戻れるのなら、もう一度逢いたい。
愛してるよ、なんて。