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夏 向日葵橋にて
姿を亡くしても
声を亡くしても
香りだけは、鼻に残り続ける。
鼻にこびりついて取れない匂い。やけに甘ったるく感じるのは、夏の所為だ。
其れは、恋だと思った。
私は、あなたをよく理解していた。
其れに相反して、無知の鞭が、私を痛めつけた。
きっと、私は何も知らない。
深い沼の奥底の、あなたの悲しみを。
私は、きっと入ることすら赦されてはいない。
其れでいい。
表面上の歓びを分かち合う存在でいい。
其れが、少しでも沼を浅くできたら。
夏暁のような笑顔で、あなたは嗤う。
暁は、やがて雨を降らせる。
そんなことも知らずに。
もうすぐ、炎夏だ。
向日葵の向こう岸で、あなたが手を振っていた。