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入学式 2

 ━━。


 扉を開けたスゥを待ち受けていたのは、静寂であった。教室にいる誰もが話をやめ、スゥを見つめて目を見開いている。その目には、「何故お前がここにいるのだ」、「何故お前と同じクラスで勉強しないといけないのか」と書かれているかのように見えた。そんな、白く冷たい視線である。

 スゥはその視線を受け少し頬を強ばらせたが、その後は何事もなかったかのように、自分の席につき教室を見回した。

 このような視線に、元々スゥは慣れていた。小さい頃から自らが異例であるから、皆がそういう目をするのは分かりきってもいたのである。異例と言うのは、やはり髪色と魔法使いとしての素質だ。今までの魔法使いは、その魔法使いとしての素質と髪色の濃さが一致していたのだから、一致していないのがおかしいのである。そういう点で、スゥはかなりの有名人でもあった。

 よく見ると、壁は魔法を使っても大丈夫なように魔法耐性のあるものであり、机や椅子などの備品も全てそうなっていた。恐らく、どこかの大魔法使いによる制御魔法だろう。


「……ねぇ、あんた。どんなつもりか知らないけど、魔法、使えるなら使いなさいよ。そういうの、才能ない人への侮辱にも繋がるのよ!? いい加減、魔法使ったらどうなの!?」


 気が付くと真っ赤な髪と瞳をした少女が、椅子に座っているスゥを見下ろして、睨んでいた。その目に隠されているのは、怒りと憎しみ、そして差別だ。


「……あ、あの……、本当に私、使えないの……」


 スゥはしどろもどろになりながらも、どうにかその少女を見て答えた。すると少女は片目を細め、ますますスゥを睨む。


「……あっそ。あんたみたいな奴が魔法使えないとかあり得ないと思うけどね!」


 少女はスゥにそういうと、また他の子とお喋りに戻っていった。戻った少女が他の子に何かを耳打ちしたと思うと、他の子はスゥの方を見て、クスクスと笑い始める。実に嫌な感じのする子達だった。

 スゥはそんな光景を見て小さく溜め息を吐くと、鞄の中から魔法書を取り出す。書いてあるのは高等魔法についてであり、魔力を扱うことすら出来ないスゥにとっては、まさに夢のような魔法である。


「なぁに読んでるの~? あんたがそんなの出来るわけないでしょ? 出来るんならやってみなさいよ、出来ない振りしてるズゥさん?」

 

 しばらくしてズゥさんをやたら強調して声をかけてきたのは、やはりさっきの少女だ。明らかにスゥを馬鹿にした口調であり、流石のスゥも眉間に皺を寄せる。しかし、ここで少女の言うとおりに出来るのならば格好いいが、スゥは本当に魔法を使えないのでできない。スゥは困って周りを見渡してみる。が、スゥに助け船を出してくれる人など誰もいなかった。ここにマリレナがいたなら話は別だが、彼女は別のクラスである。


「……ふぅん、出来ないんだ。じゃーあ、今日の帰りまでに練習しときなよ。もしかしたら出来るようになってるかもよ~? ね、後で見てやっからさ。じゃあね、ズゥさん」


 少女は、悪意ある台詞を吐き出し、今度は自分の席へと戻っていった。スゥは座った席と座席表を素早く見比べ、彼女の名前を確認する。彼女の名前は、「アタナ」。

 時計を見ると、ホームルームの時間であり、あと少して鐘がなるところであった。ホームルームが終わったあと入学式となる。




 入学式が終わると、スゥはあたふたとし始めた。アタナとの接触を恐れたのだ。恐らくアタナは本気であろう。スゥは出来るだけ早く帰ってしまおうと、帰りの時間になるとすぐに教室から逃げ出した。


「マ、マリレナ……!」


 向かったのはマレリナの教室だ。マリレナは、下校の時間になってすぐにやって来たスゥに驚く。

 

「え、どうしたの、スゥ」

「え、えっと……、マリレナと早く帰りたいなって……」

「本当!? それは嬉しいね。早く帰っちゃおっか!」


 マリレナはスゥの言葉に笑顔になり、箒と鞄を片手に持つ。

 そうしてスゥとマリレナは誰よりも早く学園から出て、それぞれの家へと帰ったのだった。

 恐らく無邪気なマリレナは、スゥの状況には気づいていなかっただろう。








初めから鬱っぽくてすみません。

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