義父母と鬼嫁のドリフな毎日~靴下編~
寒い季節には靴下が欠かせない。だが、脳梗塞で左半身が麻痺し、足元のおぼつかない義父には禁物。フローリングの床を靴下を履いてすり足で歩けば、それだけで滑りやすく、転倒の危険性が高まるのだ。
義母には「お父さまにはいささかかわいそうですが、転ばれると危ないので靴下はなるべく履かず、素足で過ごしていただくようにしましょう。」と再三頼んでいたのだが、やはり「寒かろう」「冷たかろう」の気持ちが上回るらしく、靴下を履いてリビングに現れる日が続いた。時には重ね履きで――「だめだこりゃ。」
ある日、トイレの前で転倒、尻もちをついて動けなくなった。私にすれば「そら見たことか!!」激情をどうにか抑え、「ね、危ないからやめましょう。」と伝える。「わかったよ。」と義母。
その場では理解したように返事をしてくれる。だが次の瞬間頭から抜けてしまうのか、夫をいたわる気持ちが優先するのか、はたまた嫁の忠告など所詮右から左なのか、その後はまた元のもくあみ。こちらはハラハラしながら見守るのみ。
後日、リビングの椅子に座る前に杖を置こうと前かがみになった瞬間、滑って壁に頭をぶつけて倒れ込んだ。私はリビングの見えるキッチンにいたが間に合わず。助け起こすと、額を1cmほど切って流血しているではないか。すぐさま粉末スプレーで消毒し、ばんそうこうを貼る。義母はトイレの後始末の最中だった。
「お母さま、これでは命取りになりかねません。もうこれで靴下はよしましょうね。」「えぇ、もう履いたらダメやちゃ。」
それでも安心できない私は、夫や義姉と作るLINEのグループに報告。実の子である2人からの忠告なら聞き入れてくれるだろうと思い、金輪際靴下を履かせないよう口添えを頼んだ。チクリ魔と思われてもかまわない。
「寒さと安全、どちらを取りますか?」