6.ゴブリン出現!
一体、どこから現れたのか。気が付いたら、武雄の間合いの中に、そいつはいた。
「ジーザス……」
武雄は呻いた。
モンスターだ。武雄は直感的に、そいつが敵であると理解した。
そいつは、異形であった。醜い奴だった。羊皮紙のような肌。耳が尖り、頭にはまばらにしか髪がない。深くて暗い眼窩の中で、赤い瞳がギラギラ燃えている。
唇がひん剥かれて、長さ十センチはある犬歯が剥き出しになる。
『ゴブリンです。一匹残らず、駆逐しましょう』
クラフト・キューブが言った。
ゴブリンの体格は小柄な上に、猫背であった。ゴキブリの表皮のような色の胴鎧を着込んでいた。武器は、両刃の手斧だ。
ゴブリンは斧を振りかざすや、咆吼を放った。
腹の底にまで響く咆吼。経験したこともない濃厚な殺意をぶつけられて、ヘビに睨まれたカエルよろしく、武雄は凍り付く。
敵が突進してくる。燃える眼で武雄を睨んで、あっという間に迫ってくる。どうしようもなく、過去に経験した死を思い出す。もう、何をしても逃げることはできない。トラックの時と、状況は全く一緒だった。
いや、違うものが一つあった。
武雄だ。
武雄が違った。
怒りと恐怖がない交ぜになった感情に大きく身震いすると、武雄は歯を食いしばった。
「二度も殺されてたまるかぁああ!」
天に向かって叫んだ。血を吐くかのような叫びだった。
聖剣グランフォゾムを強く握りしめる。敵を睨みつけた。殺すべき敵を。
いまや、その目には浮かべたことがないような殺意が載っていた。
武雄の足が動く。武雄は駆けだした。向かうべき方向は決まっていた。
敵のいる方へ。