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異世界転生者のダンジョン闘争記(コンバットDT)  作者: ツングー正法
3章 辺境の村での転生者奮闘記!
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29.ショップでアイテムを買おう!

 武雄はティーゲルに睨まれている。彼女は目を逸らさない。

 人を、はなはだ落ち着かなくさせる視線である。

 心の底まで見透かされるような、あるいは、心の底に鉤爪を突き立てられるような、そういう目つきである。


 彼女は薄い唇を剥いて、

「どうして欲しいのか、さっさと決めてほしいね。こっちも忙しいんだ。気まぐれな流れ者に構ってやっているほど、暇があり余っているわけじゃない」

 ティーゲルは冷たく言い放つ。


 またしても、突然の敵意。

 武雄の目が丸くなる。なぜ、ここまでの敵意をぶつけられなければならないのか。


「一応、俺が村を救ってやったんだぞ!」

 思わず、武雄は大声を出した。


「救ってやった?」

 ティーゲルは眉をはね上げ、額に深い皺を刻んだ。

「誰か救ってくれと頼んだか? 村の入り口に看板があって、『この村は山賊に襲われています。旅の冒険者様、どうかお助けください』と書いてあったか?」

「い……いや」

「誰もおまえに助けなど求めていない。恩着せがましい態度はやめろ」

 ティーゲルにはっきり言われて、武雄は思わず小さくなった。


 山賊から救った村人に、こんな態度をとられることは、全く予見していなかった。


「……自力で賊なんて撃退できたような物言いだな」

 武雄は苦々しい声で漏らした。


「まさしく」

 ティーゲルが応じて言う。


 至極あっさりと言ってのけたため、武雄もティーゲルが正しい気がしてくる。

 このバアさん、ひょっとして、筋肉の固まりのガガバルよりも強いんじゃないか。そう思えてくる態度であった。

 それに、このような辺境の村の人間は、魔物だの山賊だのがちょっと騒いだからといって、動じたりしないのかもしれない。





 ティーゲルと言い争ってみても、勝てる気はしなかった。

 武雄のあらゆる反論は、軽くひねられてしまうことだろう。

 どのみち、今の武雄に、他人と争う気力は残っていなかった。


 そこで武雄は態度を軟化させ、頭を下げた。


「改めてお願いしよう。俺は傷つき、難儀している。一晩の宿をご所望願えぬか、ご婦人?」

「ほう」

 ティーゲルは顎を引いて、目を細める。

「最近の若者にしては、礼儀正しいじゃないか。見直した」

 彼女は言った。ものすごい敵意のオーラが弱まった気がした。おかげで、多少楽に呼吸ができる。


 彼女の口調は軟らかくなったが、その目は依然として冷ややかであった。

「おまえのことを、奴隷ハーレムに浸ったボンクラかと思っていたよ。自分が一番偉いと勘違いして、人を人と思わず見下すクソさ」

「いやいや……」

 武雄は首を振る。




 そんな人間じゃない

 自分はニートだった。奴隷でこそないが、見下される側の人間だった。




 ティーゲルは通りを数歩行き、肩越しに武雄に言った。

「おまえに食わせる為に、少し食料を買い足さなきゃならない。店に寄っていきたいが、大丈夫かい? それとも、腰が抜けて腑抜けになっちまったかい?」

「問題ない」

 武雄は言いながら、慌ててティーゲルを追う。


 じわじわと流れる血が、粗末な靴の中でたまって、一歩歩くごとに嫌な音を立てる。

 満身創痍といったていだが、この痩せた中年女性に負ぶわれたり、抱っこされる図というのは、村を救った英雄として受け入れがたいものがあった。

 ティーゲルの方も、武雄がついてきているか、確かめる手間をかけずに、早足で進んだ。


 武雄はティーゲルを懸命に追いながら、声をかけた。

「ティーゲル、食べ物を買うと言ったな? 村にあるショップで食べ物を買えるのか?」

「そりゃ、買えるさ。オニオン・イェーガーでは、何でも扱っているからね」

「オニオン・イェーガー?」


 ショップの名前か。にしては妙な響きの名だ。

 オニオンは英語でタマネギ、イェーガーは独逸語で映画という意味だったと思うが、自信はない。武雄は日本にいた時は、個人単位で鎖国(ひきこもり)していたせいで、外国語には疎かった。


「フロンティカ村には、武器屋とか防具屋もあるのか?」

「ないさ。昔は、武器屋、防具屋、道具屋と揃っていたが皆つぶれちまったよ」


「それは、また、どうして?」

「商売を続けられなくなったのさ。客はみんなオニオン・イェーガーにとられたからね。いまや、店を開いているのはオニオン・イェーガーだけさ」

 ティーゲルは吐き捨てるように言う。

「奴らは遣り手さ。都から、こういう辺境の村にまで国中に店を出して、全ての人間に買わせちまうのさ」


 オニオン・イェーガーという店は、こんなファンタジー世界で、フランチャイズ戦略を投じて業界を席巻して回っているというわけなのだろうか。

 眉唾物だ。





 武雄は、中世ファンタジー世界のショップというものを想像してみる。


 村の広場などに商品を並べる露天のものが頭に浮かんだ。

 いつも開いているわけではなく、市が開催される日が決まっているのが、この時代のショップの特徴だろう。


 不便だろうが、昔はそういうものだったはずだ。

 どだい、産業革命以前の世界には、常に売買できるほどモノに溢れかえってはいなかった。





「ここだよ」

 ティーゲルが店を示す。


 通りに面した岩屋がオニオン・イェーガーであった。

 戸口の上に堂々とした木製の看板がかかり、アルファベットがデカデカと記されていた。


『GOODIES・HANDIES・ONION・JAGERS』


 文字の横に、鱗茎オニオンのイラストが描かれていた。威圧的な画風の鱗茎であった。


 どうやら、定期市ではなく、常設の店らしい。

 武雄の予想は外れたが、店の中身はどうなのだろうか?


 武雄は店に入った。



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