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異世界転生者のダンジョン闘争記(コンバットDT)  作者: ツングー正法
3章 辺境の村での転生者奮闘記!
26/31

26.村長にお礼を言われる


 疲労とダメージは凄まじかった。

 気を抜いたら、へたり込みそうだった。武雄は、どうにか気を奮い立たして、村人たちの方を向いた。

 自分の力で救った村人たちだ。礼を言われる前にぶっ倒れては、格好がつかない。


 村人の群の中から、初老の男が向かってくる。


 武雄は反射的に身構えそうになる。


 自分を叱った。

 落ち着け。無害な村人だ。戦いは終わっている。


「×××××! ×××? ×××××! ×××××××××!!!!!」

 男は身振りを交えて、何かをまくし立てた。


「俺の知っている言葉を話せ」

 武雄は冷たい声で言った。


「これは失礼。ブラヒジェン語の話者でございましたか。わたくし、聖都マオザイオダンでの遊学が長くてございまして、ついつい学術的なマオ語を使ってしまう癖がございまして。このような田舎では、他にマオ語に堪能な人間は幾らもいないというのに、大変失礼いたしました」

 男は言う。


 男の年は五十代後半辺りだろうか。男は武雄がぎょっとするほど面長であった。普通の人間より三倍ぐらい顔が長い。




 彼の言う、ブラヒジェン語というのが、武雄に理解できる言語らしい。


 これは、日本語と全く同じ言語なのだろうか。

 あるいは、転生に際して、武雄の脳のブローカ野だかウェルニッケ野だかのニューロン配置が変化して、この世界の言語を理解できるようになったのだろうか。

 何にせよ、言葉が通じるのはありがたかった。




 なおも、面長の男が何かを言おうとするのを、武雄は遮って尋ねた。


「おまえは何だ?」

「わたくしは、このフロンティカ村の村長ムラオサでございます。ウォナガンとお呼びください」

 男は名乗った。


 村長か。


 確かに、男の服装は、村人たちの中で最も質がよさそうだ。

 紫色の、肩口の広がったダブレットを着ている。下半身にはピンク色のタイツを履いていた。


 もちろん、今の武雄よりも、よほど立派な身なりをしていた。

 頭にはベレー帽を乗っけている。と思いきや、これは鬘であった。やる気のない鬘である。


「フロンティカ村を未曾有の危機よりお救いいただき、まことにありがとうございます」

 村長はペコペコ頭を下げる。


「うむ。苦しうないぞ」

 武雄はぞんざいに言った。


 妙に生意気そうだな、俺。

 武雄は思った。

 だが、丁寧語を使うのは面倒である。そのため、なんとなくこうなってしまうのは仕方がなかった。


 武雄は、日本でニートとして生きていて、人に頭を下げられる経験はほとんどなかった。

 今こうして、村人たちに感謝されている光景というのは、まあ、そんなに悪いものでもなかった。


 村長は、なおもベラベラベラベラベラベラと感謝の言葉を続ける。


 村長というのだから、村一番の権力者のはずなのに、やけに腰が低い。卑屈も卑屈で、いっそ嫌みなくらいに感じた。

 これは、突如として現れて山賊を圧倒し、今なお真剣を手にぶら下げた旅人への用心の表れだろうか。


「降伏した山賊はとりあえず牢へと入れ、然るべき時に裁きを受けさせるべきだと存じますが、いかがしましょう?」

「好きにしてくれ」

 武雄は言った。




 数人の村人たちが進み出て、おずおずと山賊どもを縛り上げると、引っ立てていった。

 村長は、村人に下知を下し終えると、武雄の方を向いた。


「あなた様のお名前を頂きとうございます」

「俺の名前が欲しい?」

 武雄は聞き返した。




 この世界には、戦国時代の日本みたいに、他人の名前の一字を貰って改名する習慣でもあるのだろうか?


 いや、待て。

 武雄は自分をなじった。

 文脈から考えて、自分の名前を尋ねているに違いない。


 疲労とダメージのあまり、まともに頭が動いていなかった。




 ……偽名を名乗ろうか?


 だが、まだガガバルとウォナガンしか、この世界の人間の名を知らないのだ。

 タケボボなんて偽名を思いつくが、それがこの世界に合った名なのかどうかも分からない。


 面倒になって、本名で通すことに決めた。


「俺の名前は武雄。鷲谷武雄。職業は旅人だ」


 武雄は名乗った。




 帰るべき国も持たない旅人。

 それが自分だった。

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