25.戦勝 ドロップアイテム 村人
村は静まりかえっている。戦いは終わったのだ。
潮が引くように、アドレナリンが引いていく。同時に、感じたこともない疲労感と、全身の痛みが武雄を襲った。
武雄は一瞬気絶しそうになるが、どうにか踏みとどまった。
聖剣グランフォゾムを杖にするようにして体を支える。
周囲を見やると、通りは荒れ果てていた。ガガバルの大技のためである。
自分が斬って捨てた山賊どもの死体を見ると、視野にドロップアイテムが浮かび上がってきた。
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手斧 6ケ
木の棍棒 4ケ
銅のダガー 4ケ
木のシールド 3ケ
穴の空いたブーツ 6ケ
山賊ハチマキ 1ケ
貨幣 250ナール
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武雄はガガバルの死体へ目をやる。
ガガバルは、死んでなお、圧倒的筋肉を誇る凄まじい体躯をしていた。
そのガガバルもアイテムをドロップしていた。
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穴の空いたチュニック 1ケ
スーパーガガバルハンマー 1ケ
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武雄はアイテムを拾う手間をかけなかった。
どうせ、インベントリがないのだ。
スーパーガガバルハンマーなんか、レア・アイテムっぽい響きだが、かといって馬鹿でかいハンマーを担いで歩く気にはならなかった。
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貨幣 300ナール
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貨幣か。
モンスターと違って、人間を倒すと金を落とすらしい。
ナールというのは、この世界の通貨だろう。これだけは回収しておこう。
武雄はふらふらと歩き回って、山賊の死体からコインを拾って集めた。
問題は、武雄の服には、硬貨をしまう場所もないことだ。
やむなく、武雄は履いている皮の靴の中へ硬貨を押し込んだ。
戦利品を集め終え、周囲に目をやると、残っている山賊が浮かび上がってきた。
彼らも村人たち同様、ガガバルと武雄の戦いの激しさに目を奪われ、呆けたように立ち尽くしていた。
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山賊 8ケ
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武雄に見られていることに気づいた山賊どもは、我先にと武器を放り捨てた。
「降伏する!」
「オレたちは、村を襲うことに反対だったんだ! ガガバルの野郎に無理矢理参加させられてたんだ!」
「オレたちは無実だ! どうか御慈悲を!」
山賊どもは涙を流して路面にひれ伏し、口々に命乞いの声を発した。
武雄は疲労のせいか、こいつらが何を言っているのかよく理解できなかった。
斬っちまおうか……。
武雄は思った。
レベルの低いザコ山賊だ。一撃で殺せる。とるに足らない経験値にしてしまおう。
武雄は聖剣を構えて、山賊ににじり寄る。
武雄から立ち上る殺気を察した山賊が蒼くなった。彼らは身をすくませ、乙女のような悲鳴を上げる。
「旅のお方!」
女の声が響きわたる。
それは予想していなかった。武雄はのろのろと盗賊から目を逸らした。何人かの盗賊が安堵のあまり気絶した。
すらりとした体つきの村の女性が、山賊と武雄の間に割って入ったのだ。
「旅のお方、よこしまな山賊を討伐していただき、感謝を表す術もございません」
女は言った。
彼女は、武雄が村に入ったときに山賊に囲まれ、絶体絶命だった女性に違いない。
武雄はその女性を観察しようとした。だが、目の焦点を合わせるのに苦労する。
鮮やかな金髪が視界に眩しかった。
胸はたぶん大きくない。いや、違うかもしれない。大きいかもしれないが、もしかしたら小さいかもしれない。
疲れて、うまく判別できなかった。
女性が手に持つ何かを武雄に突きつけている。
武雄はしばらくそれを見つめ、ようやく、ハンカチを差し出されていることに気づいた。
「ありがとう。欲しかったんだ」
武雄はかすれた声で礼を言い、ハンカチを受け取る。
それを用いて、グランフォゾムの刀身を清めた。ハンカチは瞬時に真っ赤になった。
だが、おかげで聖剣グランフォゾムが本来の輝きを取り戻す。
刀身に、自分の顔が写っているのに気づく。返り血にまみれ、疲れて憔悴した自分の顔だ。イケメンでなかった。
颯爽と現れ、村を無法者から救った勇者にしては、あまりにイケていない見た目だった。
武雄は溜息をついて、作法通りに剣を鞘に戻そうとした。
聖剣は鞘に戻ろうとしなかった。まるで、いまだに何かを斬りたがっているかのように、鞘に入らないのである。
この聖剣には意志があるのだろうか?
くそ、そんなわけがない。武雄は自分に毒づく。
斬り合いで、聖剣グランフォゾムの刀身が歪んだのだ。
一晩ほど放っておけば、歪みはとれて元に戻るはずだ。
だが今は、鞘に入らない以上、抜き身のまま手に持つ他なかった。




