24.流星降るが如く
ガガバルは豪快に大笑した。
「ガッハッハッハ!」
笑いながら口からドバっと血を吐いた。ガガバルは、血にむせ返りながら、なおも笑っている。
「ガッハッハッハ!」
ガガバルの、斬撃を浴びた傷口が開いた。巨漢の臓物がこぼれる。それは、路上で山をなし、猛然と湯気を立てた。
凄惨な光景であった。
武雄はぞっとする。
自分の自慢の剣技で、これほどのダメージを与えた。それなのに、敵は倒れない。それどころか、痛がりもせずに笑っている。
自分の斬撃では、こんな怪物じみた巨漢は倒せないというのか。
勝てないというのか。
「ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
ガガバルは笑い続ける。
このような敵に対抗する手段は持っていない。武雄は愕然として理解した。
ちゃちな剣は効かない。何か、対物ライフルやロケットランチャーみたいなものがないと、ガガバルは倒せない。
自分には倒せない。
ここへ来て、パニックが押し寄せてくる。
武雄は蒼白の顔に汗を滲ませ、じりっと後ずさる。
これまでの戦いで武雄の全身が悲鳴を上げている。とても回転斬りのような大技は出せない。打つ手はなかった。
ガガバルがもの凄い血と臓物をまき散らしながら近寄ってくる。
そして、敵はゆっくりとハンマーを振り上げる。ガガバルの巨大な影が、武雄の身を覆った。
武雄は絶望しながら、敵の姿を見上げた。
時間の動きが遅くなる。
手の中で聖剣グランフォゾムが鳴いている。
その甲高い声が、他の全ての騒音を打ち消し、武雄の聴覚を独占している。
時間が更に遅くなる。
ガガバルのまき散らす血の、一滴一滴までもを見分けることができる。
だが、集中すべきは、それではなかった。
ガガバルがハンマーを振り上げたため、がらあきになった胴が武雄の目に飛び込んでくる。それが強烈に意識に入り込んでくる。
武雄の体は、勝手に意識に従った。四肢は、やるべきことを知っているかのように、自然に動いた。
武雄は、剣を構えてすらいないかった。
ただ、手に剣を持ったまま、一歩、直進しただけだった。
聖剣グランフォゾムの切っ先がゆっくりと進み、ガガバルの胸に触れる。
抵抗もなしに、刃は肉に沈む。
そして、ガガバルの背中側から聖剣グランフォゾムは突き出た。
「ガッハ!?」
ガガバルの笑い声がいきなり途絶えた。
ガガバルは串刺しになったまま、動きを止めた。彫像もかくやという静止だった。
ガガバルは死んだのだ。
武雄は完全に理解した。
戦場は唐突な沈黙に包み込まれる。
武雄はグランフォゾムを引き抜いた。
それを合図に、ガガバルはゆっくりと後方へ傾ぐ。そして、村を震わせる地響きとともに倒れた。
武雄は目を見開いたまま、聖剣を見つめていた。勝利は、流星降るが如く唐突だった。
「流星突き」
武雄は、新たに開眼した必殺技の名を呟いた。
回転斬りが面の敵を一掃するのに対し、流星突きは一点を狙った正確無比な精密攻撃。
聖剣グランフォゾムは、見事に一撃でガガバルの心臓を貫いていた。




