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異世界転生者のダンジョン闘争記(コンバットDT)  作者: ツングー正法
2章 通りすがりの転生者が、よこしまな山賊を成敗して、村を救う話
24/31

24.流星降るが如く

 ガガバルは豪快に大笑した。


「ガッハッハッハ!」


 笑いながら口からドバっと血を吐いた。ガガバルは、血にむせ返りながら、なおも笑っている。


「ガッハッハッハ!」


 ガガバルの、斬撃を浴びた傷口が開いた。巨漢の臓物がこぼれる。それは、路上で山をなし、猛然と湯気を立てた。

 凄惨な光景であった。





 武雄はぞっとする。

 自分の自慢の剣技で、これほどのダメージを与えた。それなのに、敵は倒れない。それどころか、痛がりもせずに笑っている。


 自分の斬撃では、こんな怪物じみた巨漢は倒せないというのか。

 勝てないというのか。


「ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」

 ガガバルは笑い続ける。


 このような敵に対抗する手段は持っていない。武雄は愕然として理解した。

 ちゃちな剣は効かない。何か、対物ライフルやロケットランチャーみたいなものがないと、ガガバルは倒せない。


 自分には倒せない。


 ここへ来て、パニックが押し寄せてくる。


 武雄は蒼白の顔に汗を滲ませ、じりっと後ずさる。

 これまでの戦いで武雄の全身が悲鳴を上げている。とても回転斬りのような大技は出せない。打つ手はなかった。


 ガガバルがもの凄い血と臓物をまき散らしながら近寄ってくる。

 そして、敵はゆっくりとハンマーを振り上げる。ガガバルの巨大な影が、武雄の身を覆った。


 武雄は絶望しながら、敵の姿を見上げた。





 時間の動きが遅くなる。


 手の中で聖剣グランフォゾムが鳴いている。

 その甲高い声が、他の全ての騒音を打ち消し、武雄の聴覚を独占している。


 時間が更に遅くなる。


 ガガバルのまき散らす血の、一滴一滴までもを見分けることができる。

 だが、集中すべきは、それではなかった。

 ガガバルがハンマーを振り上げたため、がらあきになった胴が武雄の目に飛び込んでくる。それが強烈に意識に入り込んでくる。


 武雄の体は、勝手に意識に従った。四肢は、やるべきことを知っているかのように、自然に動いた。


 武雄は、剣を構えてすらいないかった。


 ただ、手に剣を持ったまま、一歩、直進しただけだった。


 聖剣グランフォゾムの切っ先がゆっくりと進み、ガガバルの胸に触れる。


 抵抗もなしに、刃は肉に沈む。

 そして、ガガバルの背中側から聖剣グランフォゾムは突き出た。




「ガッハ!?」


 ガガバルの笑い声がいきなり途絶えた。


 ガガバルは串刺しになったまま、動きを止めた。彫像もかくやという静止だった。




 ガガバルは死んだのだ。


 武雄は完全に理解した。

 戦場は唐突な沈黙に包み込まれる。




 武雄はグランフォゾムを引き抜いた。

 それを合図に、ガガバルはゆっくりと後方へ傾ぐ。そして、村を震わせる地響きとともに倒れた。




 武雄は目を見開いたまま、聖剣を見つめていた。勝利は、流星降るが如く唐突だった。


「流星突き」


 武雄は、新たに開眼した必殺技エクセキューションの名を呟いた。





 回転斬りが面の敵を一掃するのに対し、流星突きは一点を狙った正確無比な精密攻撃。




 聖剣グランフォゾムは、見事に一撃でガガバルの心臓を貫いていた。

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