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異世界転生者のダンジョン闘争記(コンバットDT)  作者: ツングー正法
2章 通りすがりの転生者が、よこしまな山賊を成敗して、村を救う話
22/31

22.必殺技 メガ・クラッシャー

 耳が完全に麻痺していた。

 全てが、異常にくぐもった低音に支配されている。


 嵐のように轟く低音は自分の心臓の音だろうか。


 武雄は首を巡らす。俺は……どこで……何をしているんだったっけな……。


 自分が、息をしていないことを思い出した。意識して口を開いて空気を吸い込んだ。途端に、全身で痛みが爆発する。


 俺は戦っている……誰と?


 視界は真っ白であった。空気が粉塵で煙っている。

 目の前に壁があった。手を伸ばす。


 それは壁ではなかった。路面だ。


 身を起こそうと四つん這いになる。滴り落ちる血が路面に花開いた。

 武雄は全身に力を込める。どうにかして起き上がろうとする。


 俺は……生きている。


 まだ……戦えるのか?


 全身が痛んでいた。目を動かすと、自分の体が目に入ってくる。

 長い敷石の破片が、ふくらはぎに深々と突き刺さっているのが見えた。


 今、分かる深手はこれだけだ。細かい傷は数え切れないだろう。


 出し抜けに、聴覚が戻った。

 粉砕された路面の石が落下する、パラパラという音が聞こえる。それは雨音そっくりだった。


 粉塵も晴れようとしていた。

 周囲の家屋のガラスは全て割れ、敵の必殺技が着弾した地面にはクレーターができている。


 敵は……どこへ行った?


 武雄は敵の姿を探す。

 恐ろしいほどの巨漢が、どこかへ消えてしまっていた。


 そのとき、路面に空いたクレーターの中で立ち上がる影があった。


 影はクレーターの中から、のっしのっしと身を揺らして登ってくる。


 敵が来る……戦わねば。


 武器は?

 剣は? 聖剣グランフォゾムは?


 必死になって探そうとするが、体はのろのろとしか動かない。


 ガガバルがクレーターを登り切る。必殺技を放ったことで、敵の姿は変貌していた。

 髪は逆立ち、全身の筋肉が発赤して、隆起している。ハンマーは、もうもうと白い煙を立てていた。

 およそ人間には見えなかった。悪夢から出てきた何かに見える。


 くそ、聖剣グランフォゾムはどこだ?


 武雄は必死に眼を巡らせる。


 聖剣は、力なく路面に転がっていた。

 それは、ガガバルと武雄の中間の地点にあった。


 聖剣を取り戻さねば……!


「ふっ!」

 武雄は気炎を上げて立ち上がろうとする。


 だが、武雄は立つのに四苦八苦している間に、ガガバルは聖剣に歩み寄ると、それを蹴飛ばした。


 聖剣は路面をスピンして、道の側溝の中へと消えた。


 グランフォゾムは武雄の手の届かない所へとやられてしまった。


 武雄の武器はなくなった。

 武雄は側溝へダッシュしようとする。だが、直後にガガバルの太い脚が武雄を蹴り倒した。


 武雄はなすすべもなく路面を転がる。

「くそ」

 武雄はしわがれた声で毒づいた。


「ここまでだな」

 地面に這いつくばる武雄を見下ろしながらガガバルが言った。

 武雄は血走った眼で敵を睨み付ける。

 ガガバルは途轍もなく巨大で、力に溢れ、勝ち誇っていた。


 直ちに止めを刺してこないということは、なぶり殺そうというわけだろうか。ガガバルとしては腕一本壊された敵だ。あっさり殺しては収まらないということだろう。


 武器を失った武雄は、どうすることもできない。勝負はあった。


 だが、何もできずに殺されるわけにはいかない。


 闘争をやめてたまるか。闘争をやめてたまるか。闘争をやめてたまるか。


 自分にそう言い聞かせながら、どうにかチャンスを探そうとする。


「いい武器のおかげで、少しはこのガガバル様を楽しませてくれた。だが、貴様自体はクズだ。武器がなければ、このザマよ。ガッハッハッハ!」

 ガガバルは高笑いしながら、節くれだった指を武雄に伸ばしてくる。





 ……武器は本当にないのか?



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