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異世界転生者のダンジョン闘争記(コンバットDT)  作者: ツングー正法
2章 通りすがりの転生者が、よこしまな山賊を成敗して、村を救う話
14/31

14.村に入る上での、転成者としての気構え

 村に入る前に、クラフト・キューブと協議する必要があった。

 クラフト・キューブを腕輪から箱に戻して、機能を回復しなければならない。


「……ええっと、どうするんだったかな?」


 呪文だ。


 何か呪文のようなものが必要だった。

 呪文は何だったか?


「くそ、紙とかあれば書き留められたものを……」


 クラフト・キューブを元に戻せないとなると、厄介なことになる。

 何とかして、思い出さないとならない。


 武雄は眉間に皺を寄せ、ぐるぐると歩き回った。そうして、必死に思い出そうと、頭を絞った。




 呪文……。


 なにか、酷くセンスのない呪文だったはずだ。

 口に出して唱えるのが、はばかられるような……ダサい……中二病要素満載の……。


 武雄は口を開く。そして、記憶の彼方から流れ出てくる言葉を紡いでみた。


「涅に黒き匣の開きてしむる戯れ歌に声聞ゆなれば、オープン!」

 武雄は唱えてみた。


 ……こんな呪文だったか?

 まったく違ったかもしれない。




 と、腕輪が光を発して武雄の腕から落ちた。硬質な音と、緑の光を発して、みるみる質量を増して箱へと戻る。


 呪文は正解だったのだ。自分の記憶力も捨てたものではない。




『村まで来れましたか。道中、大したモンスターはいなかったと思いますが、五体満足ですね?』

 久々に聞く少女の声が尋ねた。


「ああ、問題ない」

『よかった♪』


 武雄は眼下の村を顎で指す。


「クラフト・キューブ、村に入る上で、用心するべきことは何だ? どう振る舞えばいい?」

『好きに振る舞ってくださいよ。自分の自由意志に従ってください』


「そりゃまた、大雑把な助言だな」

『人間なんて、それぞれ勝手に振る舞い、適当なコミュニティを構築しては、潰してしまう短絡的な生き物です。そんな人間の集落一つ一つに注意は払えません』

「……まるで、人間社会には興味がない口振りだぞ」


『はい。私が興味ある人間は貴方だけです。うふふ』


「そうかい」


 武雄は日本ではニートで、半ば引きこもりのような生活をしていた。社会との交流の度合いは自慢できたものではないが、それでも、クラフト・キューブの断言には圧倒された。


 どうも、アテにならない箱である。


 となると、武雄は自分の常識と判断に従って、ナイドラメアの人間と交流する他ないようである。

 とりあえず、チートな転生者であるという事実は隠しておいた方がいいだろう。どういうトラブルを招くか分からない。





 村をもっとよく眺めようと、一歩踏み出した、その時。

 武雄のシックス・センスが反応した。武雄は速やかに伏せると、耳を澄ませた。


 近くに気配を感じる。人間だろう。


 ここしばらくのアウトドア生活のおかげで、武雄のカンは野生動物のように冴えわたっていた。

 そのカンが武雄に用心しろと告げている。


 武雄は頭を地面に押しつけたままの本格的な匍匐前進で、その気配に近づく。


 眼前に冷蔵庫大の岩があったので、その陰に滑り込んだ。武雄は岩から片目を出して、先を覗いた。


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