表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/31

10.箱に見捨てられた武雄

 モテるモテないは別にして、自分の身なりが酷いのは否定しようがない。

 これは、どうにかしなければ。人里に近づいた際に物乞いや無宿人と思われて、トラブルを招きたくはなかった。

 早くショップを見つけて、装備を整えたかった。


 武雄は、何気なくクラフト・キューブの方に目をやる。

 こちらも、戦闘中にゴブリンの血をぶちまけられて、酷く汚れていた。


 クラフト・キューブも武雄の視線から、言わんとしていることに気づいたようだ。

 アラート音をかき鳴らした。

『警告。ルックス40%低下。至急、クラフト・キューブを清掃してください。今すぐ!』

「信じてくれ。箱のルックスなんて、誰も興味ない」


 武雄が言うと、箱はあからさまに不機嫌になった。

『ぐぬぬ……。毒舌転生者様ですね。レディ相手にデリバリーのない言葉しか吐けないと、死ぬまで童貞ですよ』

「余計なお世話だ。あと、デリバリーって何だ。それを言うならデリカッセンだろう」

 武雄が誤りを指摘すると、箱は忌々しげに口を閉ざした。


 だが、すぐに別の方向から文句を言ってくる。

『それから、話変わりますけど、チュートリアルにない動きをされても困ります。ちゃんと習った動きだけしてください』

「知ったことか」

 武雄は吐き捨てるように言った。





 実戦でカタは役に立たない。これは、剣道の試合ではない。明らかに異なっている。真の闘争だ。


 生存を継続するため、あらゆる手をつくさねばならない。

 僅かな軽挙妄動で、草の上に頃上がる死体は、武雄となるだろう。





『何が回転斬りですか。センスの欠片もないネーミング、信じられない』

 クラフト・キューブは、なおもブツブツ言っている。

「おい、この世界の詳しい仕組みを教えてくれ。政体は? 宗教は? 大まかな歴史も知りたい」

 武雄の問いに対して、クラフト・キューブはふてくされたようなブザー音で応じた。

『エラー401。……塩。味噌。醤油。豚骨』


「教えてくれないのか? サポートしてくれる箱なんだろ?」

『私、はっきり言って貴方のことムカついたんで、サポートやめます。勝手に野たれ死んでください。ふんっ!』

 ぷんすかしながら箱は言った。


 武雄は見捨てられてしまったのである。


 困った。


 口は災いの元とはよく言ったものだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ