約束
この世界の人口の約45%は理数系である。
50%は体育会系だ。
そして残り少ない5%は…貴重な文系の方達である。
そして5%の内の0.5%・・・それが日本国内にいる文系の方達だ。
おお・・・、と感嘆詞を放ちながら教室内の少年少女は二つの席を見つめる。
そう、そこにはその0.5%の内の二人が並んで座っていたのだ。
12月5日 社会:日本史
それは社会の時間だった。
「この中に文系の人は・・・おお、並んでるのかー。
仲睦まじいカップルみたいでいいなぁー」
社会科担当:栗原 義人
冷やかされるのは毎度の事だが、
何もカップルまで言わなくてもいいのではないか?と文系二人は思った。
学校内では文系は2人しか居ないとされる。
文系と理数系では見解が違う為、いじめなどの原因に繋がるという事からその二人は席もずっと隣同士、という事はクラス替えしても一緒という事である。
二人の名前は
文系少女:佐々木 優香
文系少年:指原 和紀
といい、二人とも出席番号も近く、そして文系同士、偶然なのか二人とも図書委員に所属している。
そして家も近く、二人とも文芸部に所属しているという、必然か偶然か分からない現象が起きている。
…そんなこんなで一時限目、社会な訳なのだが、栗原先生の無駄に長い妄想話と周囲の冷やかしの目が
相まって全く授業が出来ていないのである。それも毎回。そんな訳で、毎回先生に警告するのは
「先生、授業が進んでいません。それに先生の妄想話は主語が抜けています。その為誰が二人でマフラーを巻くのか分かりません。そして何故に僕らを見るのですか?さっきも言いましたが主語が抜けている為、その二人が僕らと限られている訳ではないでしょう?そういう訳で、早く日本史を進めてください。
まだ太平洋戦争の項目まで達していませんよ?2-5ではもうすでに太平洋戦争まで学習したと聞きましたが。」
…文系少年、指原である。
「そ、そうだな・・・悪い、俺は理数系な者で・・・
「そんなのはただの言い訳です。言い訳など私達は聞きたくないので早く進めてもらえませんか。」
追い討ちをかけるように、文系少女佐々木が語る。
そんな二人に栗原先生はお手上げ状態な様で、1日で明治維新から太平洋戦争の項目までをやった。
―休み時間―
「指原君。さっきは・・・有難う。助かった。」
ぺこぺこと頭を下げる少女に、
「いやいや・・・僕も困ってたからさ。それに・・・2-5のやつは・・・脅し、みたいなやつだし。」
「そっかぁ。あ、ねぇ何かお勧めの小説ないかな?図書室の本、読破しちゃって・・・」
「なにそれすごくない?!えぇ~っと・・・何があったっけ・・・あっ、鐘が鳴っちゃった。
部活動の時話そう!」
「うん!!」
そうして文系者の、文系トークは幕を閉じた。
部活動:たった二人の文芸部
「…でさー、このシリーズどうかな?」
「わぁ~…面白そうだね!二日間ぐらい借りれるかな?」
「勿論!!」
たった二人の文芸部で行なわれる文芸トーク。顧問の先生はいない。見解が違うからだ。
見解が違えば、考え方を否定される可能性は高い。それを配慮し、顧問がいないという、
極めて特例な部活となっている。その為、校則に違反しない範囲であれば何をしても良い。
ただし、必ず小説を書く事が出来るのなら。今の所和紀と優香は小説をちゃんと提出している為、
何をしても良いとなっている。
不意に、和紀が提案を出した。
「―――クリスマスと正月、空いてる?」
「えっ?あぁ、うん。空いてるけど・・・どうして?」
和紀はにやりと笑って堂々と言った。
「僕達と、遊実と、すーちんでクリスマスパーティと、年越ししようよ!!
どうせ親は理数系で、僕らの事分かってくれないし、差別するんだから、この際文系の僕らだけで!!」
和紀は目を輝かせていた。それは優香も同じで、和紀の意見にうんうんと賛成した。
「こうなったら遊実に連絡取らないとですね。」
「じゃあ僕はすーちんに連絡するよ。」
二人は連絡を取り、約束をした。
「文系の聖地で、集合しよう。」
「うん!」
「「これで、文芸部の活動を終わります。お疲れ様でした!!」」
「一緒に帰ろっか。」
「うん。」
他愛も無いやり取りでも、彼らにとっては心の拠り所。
二人は源氏物語について語りながら、家に辿り着き、学校と同じように・・・
本心を隠しながら生きている。
それがどれだけ辛いのか…僕等には分からない。
分からないからこそ、理解してあげるべきなんだろう。
しかし僕等は理解すらしようとしない。
そうしてまた、本心が隠れていくのだろう。
嗚呼、なんて悪循環なのだろう。
どうも、零です。
この度は「文系少女と竹取物語」をご覧頂き(この場合はお読み頂き、なのかな?)
有難うございます。この作品は「浜村渚の計算ノート」という小説から生まれた様なものです。その小説では、理数系の人々が少ないという設定でして、それを読んだ私が、「それなら、文系が少なくなったらどうなるのだろう?」と考え書き起こしたのがこの、「文系少女と竹取物語」なのです。
次回も、ご覧頂けるとありがたいです。
この小説は「浜村渚の計算ノート」から5%、私が95%文系という事から出来ています。




