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一人百物語

ピョーン

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/18


以前、大手企業のシステム開発現場に派遣されていた時の話。

その現場で働きだしてから、私はどうも体調が良くなかった。めったに熱を出したりはしないのにいきなり高熱が出たり、現場についていくらも経たないうちに気分が猛烈に悪くなって早退したりと、何度か病欠していた。

なんだか変だな、とは思いながらも季節が真夏であったため、夏バテなのかな、と思っていた。

工場も併設している派遣現場の敷地は広大で、電車の最寄駅の少し手前から線路に沿って現場企業の敷地が広がっており、いつも作業をしている建物も電車から見える。

その日の朝も通勤電車に揺られながら、いつもの様に作業現場の建物を電車の中からぼんやりと眺めていた。

と、その敷地の隅に

立ち木に囲まれて、赤い鳥居と小さな社が見えた。

それまで気がつかなかったが、広い敷地の端っこに、何かの神社がある様だった。

鳥居と社を見てふと

(これはもしかしたら)

と思った。

電車を下り、現場に向かってしばらく歩くと、向こうの方に神社の小さな鳥居がポツンと見えた。

私は歩きながらそちらの方を見つめ

(すいません、よそ者でお気に召さないのなら申し訳ありません。悪気は無いのです。どうかお許し下さい。後でまた、ちゃんとお参りいたします。お願いいたします)

と思った。

すると。私の背中から、


ピョーンと


黒いものが飛び出して、遠く離れた神社の方に飛んで行った。

ゴワゴワとした黒っぽい毛に覆われた、大きさも形も10センチくらいの大きめのタワシの様な胴体(?)に、細長い手足がついた姿のものだった。

「?!」

自分の中から飛んでいったものに一瞬ぎょっとなった。と、ほぼ同時にストン、と身体が楽になった。重い荷物から急に解放されたかの様に。

(やっぱり)

鳥居の方を見ながら私は思った。

(何かの理由で、ここの神様に気に入られてなかったのかな)

その日の仕事帰り、私は神社にお参りに行き、小さな社の前で手を合わせて挨拶をした。

するとまた、私の背中から同じ姿のものが抜け出て、ピョンと社の中に入っていった。


社には神社の名前が掲げられていたが、何の神様を祀ってあるのかはわからなかった。

しかし以後、体調を崩す事は無くなった。





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