2人が転生した日①
「ミレイ様、起きてください・・・御起床のお時間ですよ」
その侍女の声に、ミレイは目を覚ました。
(アレは夢だったのかしら・・・)
そう思いながら起き上がると、そこに居たのは正娘を追い出す前の自分だった。
よく見ると、このベッドは正娘の使っていたモノだった。
(どういうことだ?)
だが、他の装飾品は置いてあるモノは自分好みの物もある・・・つまり今の自分はこの部屋の主なのだろう・・・
前世の時は、正娘を追い出した後は、気味が悪いからとわざと言い回して、養父が取り壊すまでは誰も入れない様にしていた。
そして、そこに秘密の書類や隠し物をしてやり過ごす事もあった。
(そこに今世は寝ていたのか?何故だ?)
「ミレイ!早く起きて来なさい・・・妹も待ちくたびれてるわよ」
その声は、実母だ・・・ということは、やはり自分は転生したのだろうか。
起き上がり、身支度をしたミレイはリビングに向かった。
そこで驚きの光景を見た。
何と実母が、オシリス大卿の正妻に成っていたのだ。
大卿の婦人としては質素そうに見えるが、前世の様な侍女長の服ではない。
何よりオシリスと隣合わせに座り、彼の世話をやいている。
その様子が幸せそう思えるくらいの感情は、今のミレイにも合った。
(今世は実母が正妻と成ったのか・・・じゃあ、侍女長は誰だ?)
ミレイは、さり気なく周りを見回す。
「残念だったわね・・・私のお母さんよ!」
その声に、ミレイは慌てて振り返った。
そこに立って居たのは・・・アミュだったのだ。
「何で貴女が、この時のココに居るの?」
たしかアミュの出番は、まだ先の筈だったはずなのに・・・
「こちらも文句言いたいわよ!・・・転生したら、アンタん家の侍女の連れ子なんだから!」
アミュは転生出来たんなら、今度こそは大貴族の娘に生まれ変わりたかったらしい。
「・・・どうやらアンタは、オシリス大卿の正娘に転生したみたいね・・・悔しいわ!でも・・・」
そこでアミュは、ミレイに手を差し出して来た。
「今日から、私はココの《養女》になるみたい・・・貴女から、正娘の座を私が奪ってあげるわ!」
そう言ってアミュは不敵な笑みを浮かべ、握手を求め、強く握ってきた。
「・・・そうなの?でも、忘れてないかしら?
私はサラじゃないから、大人しくこの座を譲りはしないわよ!」
そうミレイも握り返した。
(彼女の手の内は前世で良く分かっているわ!この私が負ける事は少ない筈よ)
それはお互い様だが、こうなってしまったからには先手は必要だと考えた。
(まずは現父母の評価を下げない事ね・・・多分、彼女は私の足を引っ張ろうとするだろうけど・・・)
アミュは学力を金で買って乗り切ったタイプなのは、前世で聞いた事がある・・・つまり、実力は大した事がないのだろうと考えられるのだ。
(安心して・・・アレインは彼女に譲ってあげるわ!かわりに私は弟のブラウドを貰う)
ミレイの見立てではブラウドは熱血感で家族思いの男の様だ・・・彼と結ばれた方が安泰かもしれない。
(いざと成ったら、2人して消しちゃえば良いんだし・・・)




